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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2014.07.10]

表情豊かな表現力と見事な演技でを魅せた、ヒー・セオの素晴らしいジゼル

American Ballet Theatre アメリカン・バレエ・シアター
“Giselle” Choreography after Jean Coralli, Jules Perrot, and Marius Petipa. Staged by Kevin Mckenzie
『ジゼル』コラーリ、ペロー、プティパ:原振付、ケヴィン・マッケンジー:演出

5月12日から7月5日まで、ABTのニューヨーク公演期間中でした。
6月21日に、ABTの『ジゼル』の昼の公演を観劇しました。音楽はアドルフ・アダン。プティパ版で、2幕で構成されています。
主演のジゼル役はプリンシパルのヒー・セオ、韓国人です。アルブレヒト役はソリストのアレクサンドル・ハムーディ、ウィリ(精霊)の女王ミルタ役はコール・ド・バレエのデヴォン・トイシャーでした。

第一幕は村のジゼル、昼間のシーンです。ジゼルは、心臓が弱いけれど踊りが好きな少女。アルブレヒトは貴族の身分と婚約者がいることを隠してジゼルに近づいて、2人は親しくなります。しかしそれがヒラリオンによってあばかれて、ジゼルはショックで半狂乱になってしまい、母親ベルタに抱かれて亡くなってしまいます。
ヒー・セオは、足の甲がとても反っていて特別な形をしているので、足の表情がじつに豊かです。また、半狂乱になったジゼル、死んでいくジゼルを演じているヒー・セオの表現は鬼気迫るものがあり、完全に感情移入して演じきっていました。今までに見たジゼルの中で一番、苦しみ、悲しみ、狂気、狂乱を強く表現されていて見事でした。瀕死で幻覚が見えている狂気の状態を表現しているヒー・セオは、すごい迫力でした。踊りのテクニックだけではなく、演技力も抜群で抜きん出ていることが、この作品では際立っていました。

ny1407a01.jpg ヒー・セオ Photo: Gene Schiavone.

第二幕は森の中。夜の墓場のシーンで、薄暗い月明かりの中、白いチュチュのたくさんのウィリ(精霊)たちがで出てくる群舞は、幻想的で美しかったです。
ミルタのトイシャーは背が高く、周りのウィリたちよりも大柄です。とても上手く、パ・ド・ブーレがとても細かくなめらかで、軸も安定していて、軽やかでした。ウィリたちもミルタも亡霊のジゼルも、無表情で生気が通っていない様子を上手く表現していました。
ジゼルのお墓参りにやってきたヒラリオンは、ミルタたちに死ぬまで踊らされ、踊り続けてヘトヘトになり倒れました。同じようにジゼルのお墓に来たアルブレヒトもミルタたちに捉えられて、踊らされ続けました。パ・ド・ドゥもあり、ジゼルはミルタにアルブレヒトを助けるように何度もお願いしますが、許されません。
やがて朝日が差しはじめると、ウィリたちもミルタも去っていきました。アルブレヒトは踊りつかれて倒れましたが、ジゼルはそっと彼の手の中に白い花をにぎらせて、お墓の中へ消えていきました。やがてアルブレヒトは目を覚まし、手ににぎっている白い花を見て呆然とし、前へ2歩3歩と進んでいるところで、幕が閉じました。この終わり方はなんともはかなくて美しい。音楽と照明と相まって、感動しました。
(2014年6月21日午後 メトロポリタン・オペラ・ハウス)