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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.11.11]

マシュー・ボーンによってゴシック・ロマンに生まれ変わったの『眠れる森の美女』

Matthew Bourne’s “ SLEEPING BEAUTY “ ( A Gothic Romance )
マシュー・ボーン版『眠れる森の美女』(ゴシック・ロマンス)
Directed, Choreographed and New Scenario by Matthew Bourne
マシュー・ボーン 芸術監督、振付、新シナリオ

10月23日から11月3日まで、ニューヨーク・シティ・センターにて、イギリスのマシュー・ボーンが率いる創立25年を迎えたカンパニー、ニュー・アドベンチャーズのマシュー・ボーン版『眠れる森の美女』(ゴシック・ロマンス)の公演がありました。
マシュー・ボーンの新しい解釈で生まれ変わった『眠れる森の美女』は、独特な世界が広がっていて、とても興味深かったです。
私が鑑賞した10月25日夜公演のキャストは、オーロラ姫にアシュレイ・ショウ、リラ伯爵(ライラック伯爵:キング・オブ・フェアリーズ)はライアム・モーワー、カラボスとカラドック(カラボスの息子)は1人2役でトム・ジャクソン・グレーヴス、レオ(オーロラ姫の運命の人。王国の狩猟番で、王子様ではない)はドミニク・ノースなどです。日本人も2名出演していました。一人は情熱の精( The fairy of passion )の鎌田真梨、そしてオーロラ姫のナニーは「私の踊りある記」を連載されている友谷真実でした。

ny1311c_02.jpg photo/Simon Annand

作品は休憩をはさんで2部で構成され、4幕(4つのシーン)でした。第1幕( Act 1 )は1890年の設定で「オーロラ姫の誕生」、第2幕( Act 2 )は1911年の「オーロラ姫の誕生パーティー」、第3幕( Act 3 )は2011年の「オーロラ姫の目覚め」、第4幕( Act 4 )は昨日の「オーロラ姫の結婚式」です。
この作品は、古典バレエをご存知の方なら、ボーンの新解釈と比較して、よりいっそう楽しめます。古典バレエでは、本来は作品の中で善悪の役割を表現しているリラの精、カラボスをここでは男性が演じています。カラボスはドレスを着て女装していて、彼女が滅びた後にその息子のカラドックという役柄が登場し、カラボスとカラドックを同じ男性が演じます。
古典バレエではオーロラ姫の運命の男性はデジレ王子ですが、ボーン版では身分の低い男性のレオになっています。場面設定の時代背景を、オーロラ姫たちや王国の人々が目覚める100年後を2011年の現代としているところが面白いです。2011年にシーンが変わるときは、現代の服装をした若者達が数名、眠れる王国の門の外を、通り過ぎていきました。

第1幕では、子供に恵まれなかった王様とお后様が、赤ちゃんのオーロラ姫をひきとって育てるところから始まります。最初は、オーロラ姫は等身大くらいの赤ちゃん人形のパペットを使っていて、黒子がそのパペットをあやつり表現していました。この面白いアイデアに、観客はクスクス笑っていました。
舞台後方がベルトコンベアーのように動く床になっていて、カラボスやリラ伯爵、他の妖精たちが登場するシーンなどでは、ダンサーたちの動きと合って相乗効果で舞台に面白い迫力が出ていました。全体に、衣装、舞台セット、照明は、ゴシック系でカッコよく素晴らしかったです。
リラ伯爵などの妖精たちに男性も何名かおり、その踊りが本来の古典で女性が踊る振付と比べたら、おもしろおかしくて笑いました。パロディーになっています。古典のリラの精の振付を一部分は取り入れられていますが、優雅に踊るところをバサッバサッ、ブンブン、と荒々しかったり、バタッと倒れたり、とかなり男性向けに変えてありました。
踊りだけではなく、演劇の要素も強い印象でした。もちろん、踊りのシーンも多くありました。王国の庭で誕生パーティーをしているときの群舞や、妖精たちが踊るところも美しかったです。コンテンポラリーの振付けで、裸足で踊るところが多かったです。
悪役のカラドックを演じているトム・ジャクソン・グレーヴスは、一番存在感が強くあり、とても目立っていました。体も顔も大きく、無表情な演技が周りの空気から浮いていて、異質な感じがよく表現されていました。また、トム役のドミニク・ノースも、とても身長が高く大きな人で舞台で目立っていました。

ny1311c_03.jpg photo/Simon Annand ny1311c_06.jpg photo/Simon Annand
ny1311c_07.jpg photo/Simon Annand ny1311c_13.jpg photo/Simon Annand

カラドックは何度も、眠っているオーロラ姫の寝ているベッドに寄り添って、目を覚まそうといろいろ試み、無理やりオーロラ姫をひきずって踊ったりしていましたが、いっこうに目を覚まそうとしませんでした。そこへ100年後に、現代の服装のトムがやってきて、オーロラ姫にキスをするとすぐに彼女は目を覚まし、その瞬間にトムはカラドックの一味にさらわれてしまいました。愛がなければオーロラ姫は目を覚まさないという設定です。そして何食わぬ顔でカラドックは目覚めたばかりのオーロラ姫をのぞきこんで、だまして結婚しようと試みますが、何も知らないはずの彼女は本能的に拒否し続けます。そしてカラドックは刺されて倒れました。
最後は、トムとオーロラ姫が無事に出会って結ばれ、ハッピーエンド。古典では、結婚式の場面で終わりますが、ボーン版は現実的で、トムとオーロラ姫に赤ちゃんが生まれたところまで物語が続いていました。みんなに祝福されて幕が閉じる、とても楽しくて、面白い演出の作品でした。
(2013年10月25日 ニューヨーク・シティ・センター)

ny1311c_15.jpg photo/Simon Annand ny1311c_22.jpg photo/Simon Annand
ny1311c_24.jpg photo/Simon Annand ny1311c_37.jpg photo/Mikah Smillie
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