ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.07.10]

空中高く飛んで湖に消えた、シムキンのジークフリート王子

AMERICAN BALLET THEATRE(ABT) アメリカン・バレエ・シアター
“Swan Lake” by Kevin McKenzie after Marius Petipa and Lev Ivanov
『白鳥の湖』ケヴィン・マッケンジー振付、マリウス・プティパ、レフ・イワノフ原振付

6月19日にABTの『白鳥の湖』を見ました。
主な出演ダンサーは、オデット/オディールはイザベラ・ボイルストン、ジークフリート王子はダニール・シムキン、ロットバルトはロマン・ズルビンとジャレッド・マシューズでした。
昨年プリンシパルに昇格したシムキンは稀に見る身体能力の高さで、そのテクニックには目を見張ります。ABTの近年の男性ダンサーでは、元プリンシパルのアンヘル・コレーラ以来の逸材ではないでしょうか。シムキンは、他のバレエダンサーでも出来ない技をいくつか持っています。演目、役柄によって、その彼の技を全て生かして使うわけではありませんが、芸術監督は彼の実力をよく分かっていて、良さを引き出しています。
彼はまだ若いので、これからの成長がとても楽しみなダンサーの一人です。節制して鍛錬を積み続けて、実力を持続してほしいと思います。 
シムキンが演じるジークフリード王子は、若々しくて元気いっぱいでした。一挙手一投足が軽やかで、まるで背中に羽がついて宙を飛んでいるかのようにフワッと踊ります。一瞬、空中でピタッと時が止まっている静止画面のように見えるのです。着地音や重い動きが一つもなく、全て軽やかで余裕があります。軸はもちろんしっかりしていて、ピルエットは軽く6回転をしていました。調子の良いときはもっと回ることが出来るのでは、という雰囲気です。シムキンは、本当に身軽でジャンプも高いです。
ソリストのボイルストンはオデットもオディールも、とても上手く演じ分けました。テクニックも演技力も優れています。黒鳥のグランフェッテ32回転も無事に、見事に踊りました。
ソリストの加治屋百合子も出演しており、白鳥のコール・ド、四羽の白鳥、ポーリッシュ・プリンセスを踊りました。加治屋は手や肩、首の使い方がとても優雅で丁寧で、品の良さが漂っています。彼女が舞台に上がってくるとその雰囲気ですぐ分かります。

第四場の湖のほとりのシーンは、結ばれないジークフリードとオデットは悲しみに暮れて踊り、悲しく、ドラマティックでした。
ジークフリードがロットバルトと戦いますが、オデットが悲嘆にくれ、湖に跳び込んでしまいます。その後を追って、ジークフリードも同じところから湖に飛び込みました。そのシムキンの湖(舞台後方)への飛び込み方が、思い切り空中高く舞ったので、客席は「おお〜!」と、どよめきが起こりました。まるでトランポリンが下に置いてあるのかと思ったくらいの、すごく高いジャンプだったので、驚きました。これまでに見たジークフリードのなかで、一番空中高く飛んで跳び込みました。
(2013年6月19日夜 メトロポリタン・オペラ・ハウス)

ny1307c01.jpg 『白鳥の湖』イザベル・ボイルストン、ダニエル・シムキン Photo: Gene Schiavone.