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ブルーシャ西村 text by BRUIXA NISHIMURA 
[2013.07.10]

若手プリンシパル、スターンズとマーフィーが熱演した『ロメオとジュリエット』

AMERICAN BALLET THEATRE(ABT) アメリカン・バレエ・シアター
“Romeo and Juliet”  by Sir Kenneth MacMillan
『ロメオとジュリエット』ケネス・マクミラン振付

6月15日に、ABTの『ロメオとジュリエット』の公演を見ました。
主なダンサーは、ロメオはコリー・スターンズ、ジュリエットはジリアン・マーフィー、マキューシオはアーロン・スコット、ティボルトはロマン・ズルビンなど。3幕で構成されています。

ny1307b01.jpg Photo: Rosalie O'Connor

コリー・スターンズは2011年にプリンシパルになった若手です。主演のスターンズとジリアン・マーフィーはともにアメリカ人です。彼らは感情をのびのびと素直に表現していて、アメリカ人らしい印象でした。ダンサーの出身地のお国柄などにより、演技や表現の印象は様々です。スターンズとマーフィーが演じるロメオとジュリエットは、オープンで現代的な感じでした。
スターンズは若々しく、繊細な印象のロメオでした。悲しみ、嘆きを表現するときには、胸を波打たせて苦しそうに息をしているかのようで、感極まっている様子を激しく表していました。他のダンサーたちに混じって数名で踊るシーンでよく見ると、足先も含めて振付をとても細かい動きまで、一番丁寧に踊っていました。テクニックは安定しているので、やはりプリンシパルの実力、風格があります。これからの活躍がますます楽しみです。
マーフィーは2002年からプリンシパルをつとめています。とても可憐にジュリエットを演じました。まだ乳母に頼っていたりお人形が手放せなかったりする子供らしさを残している年頃で、同時に恋をして大人になろうとする微妙な時期の少女の様子が、よく表現されていました。揺れ動く感情、恋心、悲しみなどを、顔の表情で表現していました。踊りだけでなく、切ない演技も巧みでした。

第二幕の最後の、ジュリエット宅のバルコニーのシーンは、何度見ても、素晴らしく美しいです。ここが一番盛り上がるシーンです。スターンズとマーフィーのパ・ド・ドゥも情熱的で、月夜に照らされてとてもロマンティックでした。彼らは表情の表現もとても上手なので、自然に引き込まれました。ジュリエットが名残惜しそうに、またもとのバルコニーに駆け上がって下へ手を伸ばし、ロメオが下から手を伸ばして、お互いに見つめあい、さっと幕を閉じるところは、やはり感動的ですごい拍手でした。

ny1307b02.jpg Photo: Rosalie O'Connor

第三幕の最後、2人が自決するシーンはクライマックスです。仮死状態のジュリエットが安置されている墓地にロミオが行って、亡くなっていると思い込んで毒薬を飲み息絶えました。スターンズが動かないマーフィーを持ち上げて、ひきずりながら踊るところは、仮死状態の様子がよく表れています。嘆き悲しみ、切なさが最高潮に感情を込めて表現されていました。目を覚ましたジュリエットはその動かないロミオを見てナイフで自決します。 
そこでバサッと幕が閉じた後、すごい歓声と拍手でした。素晴らしい音楽と照明、演技が合わさって、この最後のシーンはとても感動します。
終わったと思っていたところ、直後にまた幕が上がって、そこにはまだ幕が閉じる前の状態で、スターンズとマーフィーが、2人が自決して倒れている演技をしたままでいました。照明は明るくされていました。またすごい拍手です。余韻を引っ張ってくれていて、さらに感動的でした。
そして、再び幕が閉じて、またすぐに上がると、そこには演技が終え立ちあがったスターンズとマーフィーが、客席に向けてお辞儀をしていました。
何回見ても素晴らしい舞台です。
(2013年6月15日夜 メトロポリタン・オペラ・ハウス)