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針山 真実 text by MAMI HARIYAMA 
[2013.07.10]

ポリーナのキトリとスターンズのバジルが活躍したABT『ドン・キホーテ』

AMERICAN BALLET THEATRE(ABT) アメリカン・バレエ・シアター
"Don Quixote" Staged by Kevin McKenzie and Susan Jones after Marius Petipa and Alexander Gorsky
『ドン・キホーテ』ケヴィン・マッケンジー演出 プティパ、イワノフ、アレキサンダー・ゴールスキーによる

主役のキトリがポリーナ・セミオノワ、そしてバジルがコリー・スターンズ。
ポリーナは最近、ニューヨークのテレビニュースに登場したり、モデルとしても起用され彼女の広告が街中で見られたり、とバレエファン以外からも注目を集めている。コリーも近年ダンサーそしてアーティストとして急成長を見せており、今シーズンは私も注目する存在。またモデルとしても活躍しているとてもハンサムな青年だ。
会場は大いに賑わっており、舞台が始まる前から会場では主役の二人への期待の声が聞かれた。

dqsemionova1gs.jpg Photo by Gene Schiavone

1幕のバルセロナの街中に満面の笑顔で華やかに登場したキトリ役のポリーナ、そしてその甘いマスクのバジル役のコリーが登場、彼の仕草や笑顔には彼の優しさが垣間見える。二人とも長身で手足が長くて立っているだけでも絵になる。そしてドン・キホーテとサンチョ・パンサやキトリの父親が登場すると舞台上は一気に楽しくなる。特にアメリカン・バレエ・シアターのガマーシュ(キトリの父がキトリとの結婚を願っているお金持ち)の演技はいつも面白くコミカルで会場から笑いを誘う。
これまでアメリカン・バレエ・シアターで見てきた『ドン・キホーテ』のキトリやバジルは茶目っ気たっぷりで、少々悪戯っ子っぽい印象があったのだが、今夜の二人は上品なキトリとバジルだった。
洗練された美しいロシアン・メソッドのポリーナの踊りと演技。1幕の幕が閉じたときに私の近くに居たアメリカ人女性は少し物足りない様子で、もっともっと遊んだ演技をしたら良いのに、と話していた。
今年ボストン・バレエからソリストとして移籍してきたジェームズ・アップルホワイトが闘牛士のエスパーダ役。彼は完全にエスパーダニなりきっており、決めポーズを観客に見せつけながらスピードとキレのある踊りを見せ会場を沸かせた。

ny1307a03.jpg Photo by Gene Schiavone

2幕のドン・キホーテが夢を見ている夢のシーンはたいへん印象的だった。
まずキューピッド役の加治屋百合子、愛らしくて動きは細かく軽く、まるで本物の妖精のようだった。そして森の女王を踊ったヒー・セオの美しい体のライン、特にこのヴァリエーションの始めに、繰り返し出てくる横に足を高く上げるアラセゴンが目に焼きついた。
そしてポリーナが踊ったドルシネア姫はこれまで見た中で最も素晴らしく、安定感、バランスは完璧、そしてとても丁寧で上品な踊りに思わずため息が漏れた。

3幕はとても有名なキトリとバジルの結婚式シーン、キトリの白いチュチュとバジルの白いジャケットが舞台上で映える。二人は生き生きと幸せそうにパ・ド・ドゥを踊り、余裕があり一つ一つをしっかりと見せ、バランスも崩れず最後まで安定した軸のぶれない踊り。ポリーナは32カウントの最後の大技の連続回転でもスピードのある2回転を入れたターンを見せ、会場は大いに盛り上がった。
(2013年5月27日 メトロポリタン・オペラ・ハウス)

ny1307a02.jpg Photo by Gene Schiavone ny1307a04.jpg Photo by Hidemi Seto