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フロア一面に敷き詰めたマットレスの上で踊る『ヘイズ(薄暮)』

Beijing Dance Theater 北京ダンスシアター(北京当代芭蕾舞踏団)
Wang Yuanyuan“Haze”ワン・ユアンアン『ヘイズ』
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10月19日から22日まで、BAMにて、北京ダンスシアター(北京当代芭蕾舞踏団)の『ヘイズ』の公演がありました。
北京ダンスシアターは、2008年に女性振付家Wang Yuanyuanが率いるカンパニーとして設立されました。彼女は、世界の数々のバレエ・コンペティションで受賞した経歴があります。2000年から2002年にかけてロスのCal Artsに留学し、MFA(マスター)を修了しました。

『ヘイズ』(薄霧)は、現代の経済と環境危機に対する答えを表現したものだそうです。
ヘイズ(薄霧)は、工業の過程で放出されるものが原因の大気汚染の一つです。
中国に住む中国人が、現在の中国について世界で問題になっている、その工業汚染と公害についての批判を表現した作品を作りました。
おそらく、共産圏の中国当局について、中に住んでいる中国人が批判することは、命がけの行為だと想像できるからです。彼女は身の危険を感じないだろうか、心配になりました。
芸術家は、時には社会で問題になっていることや批判や疑問を作品に表現するものなのです。彼女はアメリカ・ロスに留学経験があるので、海外から祖国の中国について見つめる視点が育ったのでしょう。

舞台セットと振付はとても斬新で、他では見たことが無いもので、個性的でした。床一面に、分厚いめのマットレスのようなものが敷き詰められていて、ダンサーたちはその上で踊りました。鍛え上げられていて身体能力も高く、レベルが高かったです。この分厚いマットレスの上でバランスを取って静止したり回転したり、踊るのは、とても難易度が高いと思います。普通なら、足元がふわふわしているため、バランスをとるのが難しいでしょう。ダンサーたち
の筋力でバランスを取っているのだと感じました。
ダンスを見ていて分かってきましたが、床のマットレスが無ければ出来ないような動きをたくさんしていました。例えば、とても高い位置で身体の重心をキープしているところから、身体を硬直させたままで、急に一直線に身体を急降下して、“バタン!”と大きな音をさせて床に倒れ込んでいました。これは、マットレスが無くて硬い床だったら、とてもできない動きだと気がつきました。これはバタバタと床に倒れこむ振付を実現させるためだったのです
床に倒れこむ動きは終始続いて、ときにはジャンプして床に頭や背中から倒れて沈み込むところもありました。もっと激しくなると、走ってきて飛びかかって、バタンと肩から落ちて転がることもありました。また飛び上がって、バタンと床に肩から倒れこんで、起き上がって、倒れこんで、という繰り返しが多かったです。
無表情ですごい速さと勢いで床に倒れこむことは、公害による薄霧に対するショックとか、嫌な気持ち、抗議とかを表現しているのだろうなと思います。

最後は、みんな寝転がって照明がまっ暗になり、立ち上がって、薄暗い照明になり、そのままずっとダンサーたちが立ち尽くしてじっとしているところに、上から紙吹雪のようなものがたくさん降り続けていました。しばらくそのままみんなじっと立ち続けていました。そのままだんだんライトが消えて、終わりました。この最後に、みんなが立ちつくしてじっとしている間の長さが、長いようでいて、短くもなく、ちょうど良い長さだったので、感心しました。立っている情景の長さが絶妙で最後に感動しました。
(20011年10月19日 BAM Harvey Theater)

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