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9人の男性ダンサーが観客の感覚にアピールしたカンパニー・トールのダンス

Compagnie Thor カンパニー・トール
Thierry Smits “To the Ones I Love”
ティエリー・スミッツ振付『トゥー・ザ・ワンズ・アイ・ラブ』
ny1111b01.jpg Photo : Julieta Cervantes

9月29日から10月1日まで、BAMでベルギーのダンスカンパニー、トールの『トゥー・ザ・ワンズ・アイ・ラブ』の公演がありました。休憩なしで1時間のコンテンポラリー・ダンスです。トールは20年続くティエリー・スミッツが率いるカンパニーで、世界中で公演してきました。振付はティエリー・スミッツ、音楽はバッハです。ダンサーは全員男性で9名でした。
テーマは、肉体の動き、踊る喜び、そしてこのエネルギーを観客と分かち合うこと。作品のメッセージは直接心に向けたものではなく、感覚に向けたもの。メッセージ性などを考えて解釈するのではなく、感覚で観て感じてもらうために創られた作品で、初演は2010年1月です。

衣装もとても簡素なもので、上半身裸かTシャツと、ボトムはベージュ色のパンツでした。舞台上にはいくつかの白い直方体の箱が置かれていて、この箱をそれぞれシーンが変わるごとにダンサーたちが動かして踊りました。
最初は、箱をベンチに見立てて、その上に全員客席に背を向けて座っていて、上半身だけを使って動いていました。肩や腕、肩甲骨などの筋肉を微妙に動かして表現し、それだけの少ない筋肉の動きなのにもかかわらず、ダンサーたちのたたずまいが彫刻のようで、かなりダンス・トレーニングを積み上げた見事な肉体美でした。
次第にベンチの上に立ったり座ったり、ベンチから離れて地面に直接座ったり、ベンチに少し手先や体の一部だけをついたりして、それぞれが踊りました。音楽はバッハの間に、時々、エレクトロニックの現代音楽が交互にはさみこまれていました。
男性ダンサーだけですが、途中、2〜3名や5名くらいの小さなグループに分かれて踊り、中には2人組でリフトも多用していてまるで男女のパ・ド・ドゥのように踊るシーンもありました。もちろん、ソロもたくさんありました。3名ずつ踊るところでは、互いに手を引っ張ったり、リフトをしていたところの動きが面白かったです。

ny1111b02.jpg Photo : Julieta Cervantes

後半は白い箱(ベンチ)が端に片付けられて、男性らしくジャンプが多いダイナミックな踊りになっていきました。やがて音楽も踊りも静かになっていき、全員が床の上に横たわり、そのままゆっくり動いていました。そして一人が立ち上がって、床の男性たち一人ずつにからみつきながら踊りました。
最後、踊り終わって、ダンサーたちがいっせいに平行にフロアに並んで寝ころぶと、さっと照明が消えて終わりました。このとき、舞台上で何か、空気に摩訶不思議な毛羽立ちのようなものが起こって、客席は感動につつまれました。不思議な感覚で、これがこの作品のクライマックスでした。
そしてすごい拍手があったので、作品が終わったのだなと思っていたら、しばらくして照明がつき、また踊りが続きました。これにも意表をつかれた驚きました。数人ずつ、それぞれが座りながら踊ったり、立って踊ったりして、全員によるフィナーレになりました。
(2011年10月1日 BAM Harvey Theater)

ny1111b03.jpg Photo : Julieta Cervantes ny1111b04.jpg Photo : Julieta Cervantes