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曲も作った天才 "ミュージシャン" のグローヴァー振付『ソール・パワー』

Savion Glover “SoLE PoWER”
セヴィオン・グローヴァー振付『ソール・パワー』
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6月21日から7月10日まで、ジョイスシアターにて、世界的タップダンサーのセヴィオン・グローヴァーの公演がありました。今回はソロ公演ではなくて、タップダンサーたちを従えてのカンパニーとしての公演でした。日本人ダンサーも3名出演していました。ケイタロウ・ホソカワ、ユミ・コシガイ、マサト・ニシタニです。出演ダンサーは9名プラス、グローヴァーです。
驚くべきことに、今回の公演で使われた曲、12曲すべてがグローヴァー自身が構築したもの(作ったもの)だそうです。タップの振付ももちろんグローヴァーによるものです。タップダンスだけではなくて、ミュージシャンとしての才能も兼ね備えているとは、素晴らしいです。ダンサー自らが作曲するなんて、グローヴァーのようなタップダンサーは唯一無二ですね。

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彼のタップダンス・スタイルは、シアターダンスとしてのタップではなくて、楽器のパーカッションのようにリズムを刻むのに集中するタップです。手足のダンスの振付はありません。グローヴァーはここ数年間、ずっとこのパーカッションとしてのタップダンスをやり続けていて、時々、ジャズバンドを従えて自分のタップをパーカッションとして加えて、ニューヨークでもブルーノートでライヴをしています。今年4月にも日本のコットンクラブでジャズバンドとともにタップのライヴをしました。
グローヴァーが「何年もやり続けているパーカッシヴな<音楽としての>タップダンスは、観客にしばしば誤解されている。タップダンスの音はドラミング、音楽、楽器のようなものだ。私は出来るだけこれを強調してみている」「複雑なリズムパターンだけれども、観客に(ダンスを観るのではなくて)ただダンスを聴いて欲しい。」と、この公演のプレイビルで語っています。
グローヴァーによると、タップダンスはもともと、<音楽として><楽器として><感情などをその場の人々とコミュニケーションするために>発生してきたものであって、ダンスというより<音楽、楽器>なのだそうです。しばしば人々の間でタップダンスのイメージが“ダンス寄りに”誤解されているので、「音楽的、打楽器的な」タップダンスの伝統を思い出して欲しいし、それを表現し続けたいとのことです。

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今回の公演は、他の大勢のメンバーたちもタップの出番が多かったので、グローヴァー自身はソロ公演の時よりも出番が少なかったです。彼は珍しく、半ズボンの衣装でした。
みんなでタップを刻んでいる時に分かりますが、同じ振付でもグローヴァーはほんとに軽々と何でもないかのように踊ります。他のメンバーのタップダンサーたちもオーディションを勝ち抜いてきた水準の人々ばかりなのに、グローヴァーほどは軽々とはいかないようで、一生懸命やっている感じが出ていました。同じ土俵で大勢で同時に踊っているところを観たときに、いかにグローヴァーのタップが強烈に抜きん出ていて天才なのかということを目の当たりにしました。
どこが他のダンサーと違うのかじっと観察していましたが、一挙手、一挙動が、彼がやると身体のほかの部分(例えば手とか頭とか)までほとんど動かさずに、身体にも特に力が入っていなくて、身体の重心もほとんどビクとも動かないし、余分な動きが全くないのです。有無を言わさない圧倒的なものです。

グローヴァーのような天才タップダンサーは歴史上に滅多に出てこないものでしょう。
彼と同じ時代に生きている間に、来日公演がある場合は、ぜひ日本の皆様にも1度グローヴァーのタップダンスを観ていただきたいと思います。特にタップダンスをやっている方は必見です。

今回の振付は、ソロの部分ではここ数年のいつもどおりのグローヴァーのスタイルで、リズムが一定ではないフリージャズのような感じで複雑で難解なリズムを刻み続けていました。大勢が出演して踊るところは、ファンク・タップも入れてソウルフルな感じが多かったです。
ニューヨークの地元でもグローヴァーは大人気で、客席はいつも満員です。タップダンスを習っている子供たちも大勢連れられて観に来ていました。
(2010年7月2日夜 ジョイスシアター)

Photos(C)Elijah Paul
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