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「ホット!サマー・ダンス・フェスティバル@ブリッジ・フォー・ダンス」

 ローカルな話題ですが、夏は、ニューヨークのあちこちで小さなものから大きなものまで、ダンスフェスティバルがさかんに行われています。その中のひとつ、ブリッジ・フォー・ダンスというダンススタジオも兼ねているところのフェスティバルに取材に行ってみました。私が注目しているニューヨーク出身の素晴らしいダンサー、スザーナ・スタンコビックが出演するからです。
http://www.iamsuzana.com/

フェスティバルの主催者については、こちらのウェブサイトをご覧下さい。
http://www.bridgefordance.com

 このフェスティバルは、8月1日から9日まで開催されました。私が観たものは、8月8日のものです。2幕で構成されていて、全部で13の小品集です。様々な地元のダンサーたちが、それぞれオリジナルの振付で出演しました。会場は、普段、ダンススタジオとして使われている、小さなところにパイプイスをたくさん並べたものでした。至近距離でダンサーたちを拝見することが出来て、迫力満点でした。

 その中で面白かったダンスがいくつかありました。
プログラム2のミルヴィア・パチェコの『KM』は、3拍子のヴォーカル曲に乗って、1拍目と3拍目に全てアクセントをもってきた振付でした。独特な黒人女性ダンサーで、とても個性的で、他のどんなダンスにも似ていないところがよかったです。寝転がったり立ち上がったりをくりかえしていました。

 フラメンコもありました。3名の女性ダンサーたちと、ギターとカンタオーラ、パーカッションの生演奏付きでした。これは、会場がとても盛り上がりました。

 さて、私が注目しているスザーナ・スタンコビックは、2つの作品を披露しました。振付はすべてスザーナによるものです。彼女は、ダンスだけでなく女優でもあって、顔の表情などの演技力が秀でている、珍しいダンサーです。天才的なダンサーです。とても本能的な踊りをし、他の誰にも似ていません。その上、彼女は幼少時からクラシック・バレエの基礎を積み上げてきているので、ダンスの実力も抜きん出ています。いつか分からないですが、きっと彼女はニューヨークでブレイクするのではないかなと期待しています。

『デザイア&サクリファイス』は、以前拝見した作品をさらに練ったものです。マドンナの「パラダイス」という曲にのって、ソロで踊りました。ミュージシャンのご主人が端役で友情出演していました。
スザーナは、グレーのタンクトップレオタードと白いチュチュで、本来はトウシューズで踊る予定だったそうですが、スタジオの床が木で足場が悪かったため、ダンスシューズに変更していました。
バーが置かれていて、そこに、彼女は左手首を黒い分厚いガムテープで、男性にグルグル巻きにつけられて、つながれてしまいます。顔は苦しみと悲しみの表情です。その固定された左手を中心にして、バーにつり下がったり巻きついたり、エビゾリになったりしていました。そしてテープを自力で外して舞台真ん中に出てきて、クラシック・バレエの振付を苦しい顔で踊りました。先ほどの男性に彼女は身体をからみつけて、一方の上に登り、上に座って、簡単なリフトで「支配」を表現しました。そして、彼は彼女に愛想をつかして去っていってしまいました。再び、彼女は、今度は自らバーのところにいって、まだ端がくっついてぶら下がっている、さきほどの黒いガムテープで、もう一度、自分で左手首をグルグル巻きにバーに巻きつけてしまいました。そして、落ち込んで、下に沈んで悲しい顔をして終わりました。

 スザーナが上演したもう1つの作品は、『パープル・スパークル』という作品です。こちらは先ほどの作品とはとても対照的で、自分を捨ててやったギャグ、受けに徹したものでした。傑作で、みんな大笑いをしていました。こちらも友情出演でご主人が出ていました。会場がこの日で一番盛り上がった瞬間です。ブーツと紫のラメスパッツ、短い紫のタンクトップ、ロッテンマイヤーさんのような端がつりあがってとがっている黒ブチめがねをつけて出てきて、舞台には、やしの木が置かれていました。ビーチでのシーンです。クラブのダンスミュージック(ハウス)にのって踊りました。
 まず彼女がビーチでパンをかじっているところに、目の前を、高身長のイケメンがカッコつけて彼女を見つめて通り過ぎたので、それを目で追って見とれていた彼女は、パンを置いて立ち上がり、黒ブチめがねの横を押さえて、後ろをついて行きました。これだけでも、彼女の顔の表情の演技力は抜群で、客席は大笑いをしていました。すると、そのイケメンは、ハウスミュージックのリズムに合わせて、腰だけを前後にフリフリと振り始め、スザーナも一緒に腰を振っていました。ここで最高潮に盛り上がって、会場は笑いの渦に巻き込まれました。向きを変わったりしながら、ずっと腰を振り続けて、2人でそのまま消えて終わりました。
 終演後にスザーナに聞きましたが、こちらの作品は、人を笑わせ、楽しませるために作ったそうです。