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ナチョ・ドゥアトのスペイン国立ダンスカンパニーの3作品

10月16日から20日まで、BAMで、スペインのコンパニーア・ナシオナル・デ・ダンサの公演がありました。3つの作品の、小品集でした。芸術監督と振付は、すべてナチョ・ドゥアトです。

この振付家の作品は以前からぜひ観てみたいと思っていたので、今回の公演を楽しみにしていました。ヨーロッパでは評価が高いですが、アメリカには滅多にやってこないダンスカンパニーです。BAMはとても良いダンスカンパニーをたくさん招聘しているので、ブルックリンは遠いのですができるだけ観劇しています。

ナチョの振付はあまりにも素晴らしくて感動しました。鳥肌ものです。今までに観たコンテンポラリー・ダンスの振付の中でも特に素晴らしいと思います。天才的です。こんな振付家がスペインにいたなんて、と、とても驚きました。
この日は感動と興奮でいっぱいで、夜もなかなか眠れませんでした。


彼の振付は、驚くほど音楽にピッタリ合っていて、音の一音一音を細かく拾って、振りを入れていました。繰り返しの振付はほとんど皆無で、次から次へと流れるように違う振りが続いて、難しいテクニックを要するものが多いので、踊るダンサーは大変だと思いました。なめらかに、流れるように振付が変化し続け、リフトも多用されていました。

「プレイビル」誌の経歴によると、ヴァレンシア生まれ、18歳でロンドンに渡りダンスを学び始め、その後ブリュッセル、ニューヨークでも学んでいます。イリ・キリアンに抜擢されてそこで踊っていたそうです。リフトなどは特に、キリアンの影響を受けているのでしょうか。それでも、彼の振付には独特の個性がでていて、他の振付家にはないものがあると思います。

ダンサーのレベルもすごく高くて、いつも見ているコンテンポラリー・ダンスのプロのダンサーが及びもつかないくらい、ハイレベルでした。クラシック・バレエのトレーニングをすさまじく積んできているダンサーたちなのだと思います。プリンシパルには、日本人女性ダンサーの、秋山珠子さんもいました。彼女もすばらしいダンサーでした。

上演した3つの作品は、『ポル・ボス・ムエロ』、『カストラティ』、『ホワイト・ダークネス』です。『ポル・ボス・ムエロ』は、15世紀と16世紀の古い音楽にのって、古い詩がナレーションのように朗読されていました。手の平、手先の使い方が面白い振付でした。セットデザインと衣装も、ナチョによるもので、美術的にも美しい作品でした。

『カストラティ』もナチョによるセットデザインでした。自由で、伸び伸びした振付でした。途中、速い曲の時は、すごくスピード感があって迫力があり、めまぐるしく振付が変わっていき、楽しめました。1シーンも見逃せなくて、観ているこちらも真剣に注意して見つめていました。明暗のとてもはっきりした照明も美しかったです。

『ホワイト・ダークネス』は、天井から時々、砂のようなものが降ってきていました。ダンサーたちは、そこにできた砂の小山をすくって、手で握りこぶしからサーッと下に落としたりもしていました。メリハリのある振付で、リフトが多用されており、キリアンの振付を思い起こさせます。最後は、一人の女性ダンサーの上に、大量に砂が落ち続けて、そのまま幕が降りました。印象に残るシーンで、とても美しかったです。