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アメリカン・バレエ・シアター、クデルカ振付『シンデレラ』ほか

5月22日から7月15日までは、リンカーン・センターのメトロポリタン・オペラ・ハウスで、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)の公演シーズンが行われています。今期でフリオ・ボッカはABTを退団します。1986年にABTに入り、20年にわたって活躍してきました。彼のラストの公演は6月22日でした。彼は自分のダンス・カンパニーとスクールを故郷のアルゼンチンに持っているので、今後はそちらで活躍することになるのでしょう。今月号のレポートは3つです。

まず、5月30日の「オール・スター・ストラヴィンスキー」です。すべてストラヴィンスキーの音楽を使った作品集です。たくさんのプリンシパル・ダンサーたちの踊りが一晩で観られる、貴重なプログラムでした。

『アポロ』は、ジョージ・バランシンの振付で、1928年初演です。1943年からABTのレパートリーになりました。ホセ・マヌエル・カレーニョ、ジュリー・ケント、ジリアン・マーフィーらが踊りました。ギリシャ神話に基づいた作品で、手紙を持った人、小さな竪琴を持った人、マスクを持った人などのソロが続きました。手や腕の表情が豊かな、個性的なおもしろい振付作品でした。

『カルタ遊び』は、ポーカーゲームを表現した作品です。ハートのクイーンはイリーナ・ドゥボロベンコが踊りました。ジョン・クランコ振付で、シュトゥットガルト・バレエで1965年初演のものです。それぞれのダンサーたちは、トランプのカードになっていて、全身タイツのような衣装もトランプの柄が描かれていました。作品を通じて、3つのゲーム展開が表現されています。とてもかわいらしくておもしろい作品です。ジョーカーは一人だけピンクの全身タイツで茶色いアフロヘアーでしたが、途中、頭にティアラをつけて小さなチュチュを着て登場して、女装してオカマっぽくおかしな踊りをしました。観客は大笑いでした。コミカルで楽しい作品です。

『アポロ』

『ペトローシュカ』は、ミハイル・フォーキン振付で、1911年パリ初演の作品です。シオマラ・レイエス、フリオ・ボッカらが踊りました。舞台の背景が、ロシア独特の建物の風景画でした。全体でひとつの物語になっている作品です。この公演が、私にとってフリオ・ボッカの見納めになりましたが、彼の役はコミカルなもので、観客は何度も大笑いしていました。加治屋百合子も出演していました。


『カルタ遊び』

『シンデレラ』
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6月9日は、『シンデレラ』を観に行きました。ジェームス・クデルカ振付の作品です。シンデレラはジリアン・マーフィー、プリンスはデヴィッド・ホールバーグでした。皆がよく知っているストーリーを、どのように演出しているのか、観るのがとても楽しみでした。舞台セットがとても現代的で、背景は額縁かカーテンのように天井から同じ模様の枠を数枚重ねて吊っていました。模様は黒とオレンジと白で和風のような花柄のデザインでカッコよかったです。

2人のいじわるなお姉さんはめがねをかけていたり不細工な設定で、この2人がコメディアンのような役割で演じていました。いばっている感じをだすために、トウシューズでずっとルルベで歩いていました。彼らが一挙手一投足をするたびに、観客から大笑いのうずが起りました。義母は、アル中の設定で、いつも手に小さなボトルを持ち歩いてこっそりお酒を飲んで、酔っ払ってフラフラして、お尻をフリフリ歩いていました。この義母が何か動くたびに、これまた観客が大笑いしていました。

かぼちゃの馬車のシーンでは、かぼちゃ畑の中にいる様子で、舞台セットは大きなかぼちゃの葉っぱやツルで囲まれていて、とてもかわいらしかったです。フェアリーもたくさん出てきました。シンデレラが亡くなったお母さんとフェアリーの力によってかぼちゃの馬車で登場するシーンは、なんと、大きなかぼちゃが宙吊りになっていて、空中のかぼちゃからシンデレラがでてきました。コメディーみたいでしたが、もちろん踊りの振付もクラシック・バレエの難度の高い大技があり、素晴らしいものでした。最後はシンデレラとプリンスの結婚式で終わりました。

6月17日は『ジゼル』を観ました。ディアナ・ヴィシニョーワ、アンヘル・コレーラが主役でした。これは以前にも観てレポートしたことがある作品なので詳細は省きます。とてもロマンティックな作品です。アンヘルは今、ノリに乗っている旬のダンサーです。彼の踊りを観るのを楽しみにしていたので嬉しかったです。ジゼルは途中で心臓発作で亡くなってしまいますが、その後は亡霊となってでてきます。アンヘルがジゼルのお墓に花を持って尋ねると、彼の周りに彼女の亡霊が出てきて踊ります。このシーンはとても長い山場です。