ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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 皆様、こんにちは。ニューヨークは、秋になってきました。涼しくて過ごしやすい日が続いています。しかし、季節の変わり目なので、風邪が流行っているようです。私も、風邪をひいて40度近い熱が出て、寝込んでしまいました。皆様も、お体にはくれぐれもお気をつけ下さい。  ニューヨークでは9月はほとんどの劇場が休暇を取ってクローズドする時期にあたるため、ダンス公演は目ぼしいものがなく、今月はインタビュー特集にしました。 3年くらい前に知り合った、プロデューサーのフラン・キルムサーです。彼女は、もとプロのバレリーナ、ダンサーでしたが、今では敏腕のプロデューサーとして大掛かりなダンス公演やミュージカルをプロデュースして大活躍しています。 今までのこのコラムで紹介した、シェン・ウェイ・ダンスアーツを、リンカーンセンター・フェスティバルに持っていって上演させたのは、実は彼女です。私はとても驚いて、「まだ若いのに、しかも、もとプロのバレリーナなのに、あれだけの規模の公演のプロデュースをする能力も兼ね備えているなんて、すごい人だなあ」と感心して、常に彼女に注目してきました。私は、すごい人に出会うと感動するくせがあるのです(笑)。彼女に出会って以来常に「今、どうしているの?何をやっているの?」と、お互いに連絡を取り合ってきました。 彼女は、舞台で踊る側から、舞台そのものをプロデュースする側に転向した、珍しい人です。企画、時には脚本や振付も、企画書執筆から資金集めもすべて彼女自身でやり遂げています。今後も、ますます、彼女は大掛かりなプロデュースを実現させ続けることでしょう。とても期待しています。 10月からまた始まる、ダンスのシーズンの予定とご案内も少し書きます。BAMは再び10月11日からダンス公演が開演されますし、アメリカン・バレエ・シアターの、毎年恒例の秋のシティーセンターでの公演も始まります。長期間休暇をとっていたジョイスシアターも、9月末から上演を再開しています。

●「特別インタビュー」:フラン・キルムサー

ダンス公演・ミュージカルのプロデューサー、マンハッタン・シアター・ソースの創立者(芸術監督のプロデュースを行う)。振付家、脚本家。1971年5月20日生まれ。
10年以上にわたり、ダンスとシアターのプロデュース、プロモーション、ファンドレイジング(資金調達)を行っている。
彼女が今までに手がけた主な仕事は、
*シェン・ウェイ・ダンス・アーツのリンカーンセンター・フェスティバル公演2003年と2004年
*ダンスブラジルのジョイスシアター公演
*ルシンダ・チルズ・ダンス・カンパニーのBAM公演
*「イン・サーチ・オブ・ア・ゴッデス」2004年、「イサドラノノー・アポロジーズ」(オフ・ブロードウェイ作品、タイムズスクエアのザ・デュークという劇場での公演) 
*「ザ・ジャズ・ナット」2004年 など。
現在準備中の作品は、2006年春公演予定の、ブロードウェー・ミュージカル、『SIDD』



 ディベロップメント、スペシャル・イベント・プランニング、マネージメント、ブッキング、レプレゼンテーション、アーティスティック・ディレクションも行う。幼少時からダンスと振り付けを学んだ。プロの振付家としては、サークル(ザ・スクエア・レパートリー・シアター公演)、ウィリアムズタウン・シアター・フェスティバル、ミュージカル・シアター・ワークスなど。16歳からプロのダンサーとしても活動を続けた。
コロンビア大学心理学部卒。スキッドモア・カレッジ(NYU Tisch ダンス・レジデンシー・プログラム)ダンス学科卒。レーバン・インスティテュート・オブ・ムーブメント卒。アメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツ卒。

---あなたは、もとダンサーですよね? 普通のダンサーが、あなたの手がけたような大掛かりな公演をプロデュースすることはとても難しいと察します。あなたは、普通のダンサー、つまり、ただ単なるダンサーであるだけではないでしょう?

はい、私はただ単に普通のダンサーではありません。知識人だと言えます。実は、大学は2つ卒業しています。ダンスと心理学の2つの学位を持っています。

---ダンス以外に、心理学を勉強したのですか? なぜですか?

 人間が好きだからです。私は、人間に興味があるのです。ダンスも人間そのものですし、心理学も人間についての学問だからです。だから、私は常に、ダンスと心理学と、この2つのことをやり続けてきました。

---ダンスは、何歳から始めましたか?

 4歳からです。実は、父親が内科医なので、私に幼少時からバレエ教育をつけさせてくれて、私の勉強をすっとサポートし続けてくれたお陰なのです。父にはとても感謝しています。クラシック・バレエを中心に学んで、他のジャンルのダンスも色々勉強しましたよ。9歳くらいから、さらに本格的にバレエを学び始めました。

---クラシック・バレエ以外に、他のジャンルのダンスも学んだのですか? いつ頃のことですか?

 クラシック・バレエは、子どもの頃からずっと続けて、ハイスクール時代に、16歳の時から、プロとしてコネティカット・バレエに所属して踊っていました。その後、だんだん体型が変わってきて、太り始めたりして、クラシック・バレエだけを続けるのは苦しくなってきたので、モダン・ダンスに転向しました。ミュージカル、シアターダンス、ジャズダンスもやりました。

---今はプロデューサーをなさっていますが、ダンスを止められたのですか?

 いいえ、ダンスは今でも続けています。レッスンは常に取っていますよ。ダンスは辞められません!ダンスは、大好きなことなのです。ダンスとは、驚くべき言語だと言えます。私にとっては、特別な文化なのです。

---あなたは、どういう経緯で、雇われて舞台上で踊るダンサーから、舞台そのものを企画するプロデューサーへと転向していったのですか?

 私が、色々なダンスカンパニーでダンサーとして踊っていた時に、最初は、踊るだけではなく何か私に出来ることはないかと、ダンス公演を実現させるためのカンパニーの運営を手伝い始めました。手伝っているうちに、ダンス公演というものは、それを上演させるためにしなければならないことがたくさんあることが分かったのです。お金をどのようにどこから集めてきて、どのようにプロモートしていくか、などです。そうしたら、そのプロデュースをすること自体にとても興味が出てきて、好きになっていったのです。すごく好きになったので、自分でもやり始めました。

---そうなのですか!面白いですね。あなたは、今では評価が高くなった、シェン・ウェイを、リンカーンセンター・フェスティバルに、最初に持って行って、上演を実現させたのでしょう? 私は、このシェン・ウェイの公演を取材した時に、ダンス・カンパニー自体よりも、これをあんなに大きなフェスティバルに持ち込んで実現させてしまったプロデューサーの、あなたのほうにびっくりしてしまいました。それで、私は2年前からあなたに興味があったのです。このときのお話を聞かせてください。

 シェン・ウェイの公演をリンカーンセンター・フェスティバルで実現させるのは、大変でしたよ。彼の作品は、とても違う(普通じゃない)ので、好きな人もいれば嫌いな人もいるからです。彼の作品は、私にとっては大事ですが、人々にとっては大事ではないことだったから。シェン・ウェイは38歳なのですが、この世界、ダンスの世界では若造なのです。若いのでさほど際立ったキャリアがなくて、人々に知られていないために、リンカーンセンター・フェスティバルのような大きなところで上演させるのは至難の業でした。とにかく、色々なところに頼んで、自力でお金を集めまくりました。それで、やっと実現できたのです。

---資金を集めるのって、大変でしょう?

 資金調達は、とても大変で難しいです。お金を集めるために、様々な企業や団体に足を運んで回るのは、とても混乱することです。どこかはお金を出してくれて、どこかはお金を断られる、という繰り返しです。次々に回ります。でもね、いつも、最後には自然に集まってくるのですよ。必要な金額が、自然に用意できるので不思議です。今、プロデュースしている、来年春開演予定の、ブロードウェー・ミュージカルは、何億円も集めましたよ。

---ええ? 何億円も?それはすごいですね。

 あなたは、カール・ユングを知っていますか?

---はい、ユングね? 心理学の。

 そう、心理学のユング! あなたがユングを知っていて良かったわ。彼の論じていた、シンクロニシティー(共時性)について、知っていますか?

---はい。もちろん。ユングのシンクロニシティーは、私も興味がありましたから。

 よかった。そうと分かれば、あなたに話すことが出来るわ。私は、心理学を学んだ時、ユングのシンクロニシティーについて、詳しく掘り下げて勉強しました。私はユングが大好きなんです。大ファンなの! 実は、ユングの「シンクロニシティー」が、私のポリシーなのです! 何事においてもそう。仕事でもね。資金調達の時も、莫大なお金が必要で、最初は無理そうに思うのですが、実現を信じて、冷静になって周りを観るのです。そうして注意深く周りを見ていると、同時にあちこちで、実現に向けて何かが動き出して走り始めているのが分かってくるの。シンクロニシティー(共時性)よ! 実現に向かって何か動き始めた兆しが来ると、それは、だんだんと速度を増して、バタバタバタッと、シンクロニシティーを起こして実現しちゃうのです。お金も、どこかが出し始めると、また別のところが出してくれ始めて、そしてまた別のところが出してくれて、と続いてきて、なんかシンクロニシティーが起こって、自然に必要なお金が集まります。

---さすが、すごいですねえ、あなたは! 勉強になりました。私もがんばろう!今後も、私にも時々教えてほしいなあ。

 こうやって、あなたとお話しているのも、私にとっては、あるシンクロニシティーだと思うのよ。ニューヨークは、メルティング・ポット(人種のるつぼ)でしょう? ダンスも同じで、ニューヨークのダンスシーンにも、世界中の様々なところからダンサーたちが来るので、ダンスのるつぼで、ニューヨークのダンスはとっても面白いですよ。インドのダンサーとかね。私はコネチカット生まれですが、父の仕事の関係でニューヨークに引っ越してきて途中からニューヨークで育って、そのようなことを学びました。私はニューヨークに住んで、ダンスに関わっていることを、とっても楽しんでいます。