ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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 みなさま、こんにちは。ニューヨークは、暑い真夏日が終わりかけていて、秋の兆しが近づいています。ずいぶん涼しくなり、過ごしやすくなりました。  私の近況は、8月に私の音楽のアルバムの、レコーディングが無事に終了しました。ファーストアルバムです。 私は作曲をしていて、ジャズのジャムセッションで私を入れて8人のジャズミュージシャンと録音しました。思っていた以上の出来栄えで感激しています。 詳しくは、私のウェブサイトや無料週間メルマガでお伝えしています。  ニューヨークは、夏には各地で、有名なダンスカンパニーの無料のダンス公演がたくさん開かれているので、7月から9月にかけては、旅行に来るのにおすすめの時期です。 今月号ではその中から、リンカーンセンター・アウト・オブ・ドアーズの無料ダンス公演のご紹介をします。

●リンカーンセンター・フェスティバルから、シェン・ウェイ・ダンス・アーツ

 7月12日から31日までニューヨークで、リンカーンセンター・フェスティバルが開かれ、7月19日から24日までニューヨーク・ステート・シアターではシェン・ウェイ・ダンス・アーツの公演がありました。最近は毎年彼らの公演がリンカーンセンター・フェスティバルで上演されています。私は彼らの公演を、3年連続で観に行きましたが、今年は今までよりも大きな舞台でより多くの観客を動員していました。

 シェン・ウェイのプロフィールは、今までのレポートに書きましたので詳しいことは省略いたします。彼は中国出身で、9歳から京劇を学び、ニューヨークに引っ越してきて、2000年にシェン・ウェイ・ダンス・アーツを創立しました。プログラムには、彼は、振付家、ダンサー、画家、デザイナーと書いてあります。彼の作品は振付も、舞台背景や衣装もすべて、本人が創作したものです。踊りだけではなく、舞台全体を一つのアート作品として統合させて表現しているのでしょう。

 今年の上演作品は、2000年の作品『ニアー・ザ・テラス、パートI』と、初演の『マップ』です。ダンサーに日本人のメンバーが2人いました。佐藤カナさん、宮川愛一郎さんです。

『ニアー・ザ・テラス、パートI』は、とても面白い作品でした。舞台上は、木の枝が敷き詰められていて、後方にタカラヅカのような大きな幅の広い階段がありました。女性も男性も上半身は何も着ておらず、腰から下に灰色の長いぼろ布を巻きつけたような衣装で、ゆっくりとしずしず歩き、無表情で、スローモーションのような動きが続きました。人が色々な方向から、様々な振りと形で出てきて、色々な位置に違うポーズで立っていたり、転がっていったりしていました。左右対称のデザインではなかったので、東洋的で、絵画的だと思いました。

一人だけ、アフロヘアーの黒人の女性ダンサーが混じっていたので、上半身は何も着ていないダンサー達の肌の中で、全体のアクセントになっていました。途中、雨だれのようなピアノ曲の時、大勢が同じ振付の後、いっせいに立ち上がったり歩いたり、寝転がったりしました。

そして、全員が後ろを向いて、階段のほうに向かって行き、やがて階段を上って、階段の後ろに消えていき、照明もゆっくりと落ちていきました。てっきり、そこで終わったと思っていたら、まだ完全には照明が消えずに、音楽も消えた状態のなか、ダンサー9人全員が、階段の上に頭だけを後ろ向きに出しました。そして、ゆっくりと頭だけでなく全身を再び階段に乗せてきて、仰向けになって頭を下にして、階段の上から少しずつ、頭からずるずると下に降りてきました。ゆっくりゆっくり、「ズルッ、ズルズルッ」と人間がイモムシのようになって無表情で階段を滑って降りてくるので、音楽なしでその引きずる音だけが劇場に鳴り響いていて、かなり不気味でした。そして、スーッと照明がすべて消えました。私は、この「終わったと思ったら蒸し返す」終わり方がとても面白いと思いました。このシーンが、とても印象に残っています。

『マップ』は、音楽は映画の効果音のような音で、舞台背景は、後ろに黒板に色々なチョークで座標軸か何かを書いたような大きな布でした。衣装は、グレーっぽい上下のシャツとズボンで、全員の衣装の形が微妙に違いました。この作品は、生でピュアな、アブストラクト・ダンスを作り上げるために、テクニックを発展させたものだそうです。 7つのセクションに分かれた振付です。全体に、顔は無表情です。全員同じ振りが続くもの、2つや3つのグループに分かれて、舞台上で一度にそれぞれのグループで別々の振付で踊るもの、手や脇をぶらぶらさせて人形のような振りのもの、肩や足の関節を動かし続ける舞踏のようなものなどです。手と足、上半身の動きがなめらかに、すべて連動しているようなものが多かったです。