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●フリオ・ボッカの「バレエ・アルヘンティーノ」

 ABTでプリンシパルを務めるフリオ・ボッカが率いる、アルゼンチンのカンパニー、バレエ・アルヘンティーノの、「ボッカタンゴ」の公演が、7月26日から8月14日までジョイスシアターーにて行われました。

フリオ・ボッカは、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれで、4歳からバレエを学び始め、1985年にモスクワの第5回インターナショナル・バレエ・コンペティションで金メダルを受賞しました。その翌年からABTにプリンシパルとして参加し、現在も続けています。その甘いマスクと容貌から、王子様役として大人気で、ファンは多数です。彼の踊りは顔も表情豊かで、喜怒哀楽の表現力があり、ラテン系ならではの明るさを感じさせる楽しいものです。

1990年に彼自身のカンパニーであるバレエ・アルヘンティーノを創立し、瞬く間に世界ツアーを開始していきました。97年にはスタジオをオープンし、翌年にはミュージカル・コメディー・スクールを創立しました。ニューヨークでABTのプリンシパルとしても多忙なはずなのに、彼は空いている時期はいつもブエノスアイレスに戻ってバレエ・アルヘンティーノの活動に力を注いでいます。普通のプロのバレエ・ダンサーの倍以上は働いています。想像するだけで大変そうで、頭が上がりません。ダンサーとしては年配なのに、その精力的な活動のエネルギーは、いったいどこから来るのでしょう?何を食べたらそんなに元気がでてくるのでしょうか?その上、バレエスクールではなく、ミュージカル・コメディー・スクールを主宰しているなんて、人間の幅が広くて面白そうな方です。どんな考え方をしていらっしゃるのか興味津々ですし、ちょうど私は英語よりもスペイン語を話す方が得意なので、機会があればぜひ一度インタビューをさせていただきたいです。彼を皮切りに、ホセ・マヌエル、アンヘル・コレーラなど、スペイン語圏のプリンシパル・ダンサー達のインタビューをシリーズで続けていけたらな、と計画中です。コンタクトを試みてみますので、乞うご期待。


 この公演には、もちろんボッカ自身も出演していました。アルゼンチン・タンゴの豪華な生演奏付き。全部で25曲のタンゴで、この演奏だけでも耳の保養になる素晴らしいものでした。日本でも大人気の、今は亡き伝説のピアソラの曲が半分位使われていました。バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、チェロ、ギター、ベース、サックス、フルート、ヴォーカルという、分厚い音でした。舞台前方に大きな白いスクリーンがあり、そこにアルゼンチンの昔の風景が次々に映し出され、歌手が客席のほうで歌うところから始まりました。「ミ・ブエノスアイレス・ケリード」(私の愛するブエノスアイレス)という歌です。きっとボッカは、アメリカで活躍していても祖国を忘れずにいて愛していて、祖国で後輩を育てて還元していきたいと考えていたのではないでしょうか。

長いイスやハシゴを使ってボッカがソロで踊る個性的な振付もあり、情熱的な男女ペアのタンゴが盛りだくさんでした。ボッカのパートナーを務めたのは、セシリア・フィガレドです。リフトを多用して、タンゴのリズムに乗って遠心力で素早く女性を上でブンブン回す、観ているほうが怖くなる難しい技も使われていました。中盤に差し掛かると、2人は上半身裸で踊ったので、観客は驚いていました。クラシック・バレリーナのタンゴは、踊りの基本がしっかりと出来ているので、かっこよく決まっていました。バレリーナは、どんな踊りでも上手くこなせるのですね。もう一度観たいくらい素晴らしい公演でした。