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●ジョイス・シアターに登場したリチャード・オルストン・ダンス・カンパニー

5月11日から16日まで、ジョイスシアターにて、ロンドンから来たリチャード・オルストン・ダンス・カンパニーの公演が行なわれました。アメリカ・デビューです。オルストンは、ロンドン・スクール・オブ・コンテンポラリー・ダンスの出身で、72年にはロンドン・コンテンポラリー・ダンス・シアターの振付を行っていました。75年から77年まで、ニューヨークで学び、イギリスに戻って振付家と教師として活動しました。80年にバレエ・ランベールの振付家になり、86年から92年まで芸術監督を務めました。94年11月に彼自身のカンパニーを創り、活動を続けています。

今回は、『ブリスク・シンギング』(1977)、『シンマー』(2004)、『オーバードライブ』(2003)の3つの作品を上演しました。

『ブリスク・シンギング』は、オペラの音楽を使い、静かな曲調でした。男女ペアや男性ペアの踊りが次々に披露され、2人が話し合っているかのような振付でした。7名のダンサー達によるもので、女性はワンピース、男性はノースリーブシャツにひざ下までのズボンでした。
オリエンタルの男性ダンサーが特に上手で目立っていました。全身から陽気さが出ていて、とても楽しそうに踊っていました。ダム・ユィンというアメリカ育ちのベトナム人で、ロスやカリフォルニアなど西海岸でダンスのトレーニングを受けた後、ボストン・コンサバトリー・オブ・ミュージック・アンド・ダンスで学んでいます。

『シンマー』は、去年なくなったキャスター・ライターでオルストンの友人に捧げた作品です。彼が死ぬ前の数ヶ月間は、長い間病気と戦うために毎日何度も何度もラヴェルの曲を聞いていたそうです。この作品もラヴェルのピアノ曲によるもので、ピアノの生演奏つきです。木漏れ日のような照明でした。裸足の7人のダンサーにより、男女ペアで次々に順番に踊りました。もつれ合って、たわむれ合っている、会話のような振付でした。ブルー、白、黒などのピタッとしたアミの衣装です。7名全員で踊った後、最後は男性のソロで終わりました。静かで美しい作品でした。

『オーバードライブ』は、エレクトロニックの音楽によるものでした。早く、軽快な、シャープな踊りでした。踊りは良かったのですが、音楽が良くなかったのでもったいないです。コンピューターの打ち込みの音楽が速いテンポで、最後まで同じ調子で切れ目なしに30分以上も続いていて、私はだんだん気持が悪くなって、終わる頃には胸がムカムカしてしまいました。両隣の人々も、同様のことを言っていました。どうしても、生演奏の音と違って、打ち込みのリズムは全く正確なリズムが続くので、人間の身体には良くない不快な波動を発しているのでしょう。ダンサーとして身体で表現しているくらいですから、身体に心地いい音を客席にも選んで提供していただきたいです。観客は、劇場に閉じ込められて暗い客席から明るい舞台上の作品を一方的に観させられるので、その場を離れない限り、否が応でも作品を観るしかありません。観にくかったら途中で出ればよかったのですが、取材なので最後まで観なければならないという気持で、つい最後まで観てしまいました。今回のことで、ダンス作品といえども、選曲も振付と同じくらい重要であるということを痛感して学びました。