英国ロイヤル・バレエ団の高田茜と踊った『ジゼル』の最新映像が公開される マシュー・ボール インタビュー
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ワールドレポート/東京
インタビュー=香月 圭
英国ロイヤル・バレエ団2026日本公演で大評判となった『ジゼル』『リーズの結婚』のロイヤル・オペラ・ハウス収録の最新映像作品が、WOWOWで8月1日に独占放送・配信される。もちろん日本初公開である。
『ジゼル』では、確かなテクニックによる繊細な表現力で、村娘と精霊ウィリを見事に演じ分ける高田茜と、ノーブルな踊りと的確なサポート、そして陰影のある演技で洗練された貴公子のたたずまいを感じさせるマシュー・ボールによる、息の合ったパートナーシップに注目したい。
番組では、マシュー・ボールの単独インタビューとALEXANDRE STUDIO AND LABの井上ユミコによるフォトシューティングの模様も見ることができる。英国ロイヤル・バレエ団日本公演のために来日し、WOWOWの番組のプロモーション撮影のためにスタジオを訪れたマシュー・ボールに近況をきいた。



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――スタジオでは井上ユミコさんによる撮影が行われましたが、いかがでしたか。
ボール 撮影はうまくいったと思います。作業の合間に彼女のノートパソコンの画面を少し覗いてみたんですが、仕上がりはとても良さそうでしたし、現場の雰囲気も素敵でした。ただ、撮影中に写真を見すぎると、どうしても自分の姿を意識しすぎてしまうので、なるべく見ないようにしています。でも、きっと良い結果になるのではないかと期待しています。
――モデル業の分野でも意欲的に活躍されています。このお仕事でどんな部分に価値を見出していますか。
ボール モデルの仕事はバレエからの自然な流れです。バレエと同じく、身体性や見た目が重要だからです。自分の体をさまざまな動きやポーズに適応させることには慣れっこです。実は、ただ何気なく立っているような場面の方が、僕には難しく感じられます。動いたり踊ったりして、体で何らかの形を作り出す方が、自分にとっては自然に感じられるんです。モデルの仕事は頻繁にやるわけではありません。もし、しょっちゅうやっていたら、飽きてしまうかもしれません。年に4、5回程度なら楽しく取り組めますが、それ以上となると......どうでしょうね。
――英国ロイヤル・バレエ団2026年日本公演で7月4日夜『リーズの結婚』でパートナーのマヤラ・マグリさんとご出演されました。お二人でこの作品を踊るのは今回が初めてだったそうですが、舞台はいかがでしたか。
ボール マヤラと一緒に踊れて本当に良かったです。ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスの公演では、僕は前田紗江さんと、マヤラはレオ・ディクソンと踊りました。お互いにそのバレエ作品を熟知し、直近まで踊っていたので、多くのリハーサルを必要としませんでした。僕たちはカップルであるがゆえに、一緒にリハーサルをするのが難しいこともあります。普段のパートナーと踊る時よりも、お互いに対して率直になりすぎて、感情をむき出しにしてしまうことがあるからです。それでも、二人で共有する舞台上のそうした瞬間は、普段以上にかけがえのないものだと感じます。彼女と一緒に踊る時はいつも、その記憶をしっかりと心に刻み込もうと心がけています。
――『リーズの結婚』では、出演者の方々の笑顔が素敵で、観客も自然と笑顔になれる楽しい作品だと思います。ご自身はコーラスと似ている部分がありますか。もしくは、共感する点はありますか。
ボール 農夫コーラスの生活は、僕自身が実際に経験してきたライフスタイルとは違います。こうした役柄の場合、必ずしも写実的な演技アプローチが求められるわけではないと思うので、農場へ行って実際の生活を体験してみるといったことは特にしていません。ただ、その役が持つポジティブなエネルギーには共感します。こうしたバレエ作品で舞台に初めて登場するときには、田舎の風景の中に足を踏み入れた時の感覚を思い描くようにしています。太陽の温かい光が顔に当たり、農場特有の匂いが漂う......そうした感覚を意識することで、役柄やその場の雰囲気に自然と自分を馴染ませることができるんです。このバレエは観客にとって明るく楽しい作品ですから、僕自身もその楽しさを心から感じることが大切だと思います。そうすることで、観客の皆さんにも僕の演技をありのままに受け止めていただけると思っています。この作品では、冗談を言ったりして、楽しんで演じています。この役はとても人間味のある人物で、王子様のように威厳に満ちた振る舞いをする必要はないので、あまりに芝居がかったりしないように、自然体でいることを心がけています。
――『リーズの結婚』をはじめ、フレデリック・アシュトンの作品を踊るうえで大切にしていることは何ですか。
ボール アシュトンの作品を踊るのは本当に楽しいですね。彼が持ち合わせている資質としてよく語られるのが、その音楽性です。音楽の使い方が巧みなので、踊っていて、楽しいのです。テンポが速い作品も多く、本来、速い動きが得意ではない僕のようなダンサーにとっては、難しい課題でもあります。そうした速さはアシュトンの若々しい性格やエネルギーを反映しているのだと思いながら、あのスピード感に向き合っています。それから、アシュトンには間違いなくユーモアのセンスがありました。彼のバレエ作品には多くのジョークが散りばめられていて、観客に向けたものもあれば、ダンサーに向けたものもあります。おかげで、時にはおどけてみたりしながら、舞台上で共演者や会場の皆様と一緒に楽しむことができます。決して堅苦しいだけのバレエではありません。ダンサーたちはニワトリに扮して走り回ったり、棒を持って走り回ったり、ワイヤーに吊られて空を飛んだり、あるいは嵐に見立てた強い風が巻き起こったりと、現実離れした場面がたくさんあります。僕もそうした雰囲気を大切に演じるようにしています。
――日本に滞在中、オフのときにはどのように過ごしていますか。

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ボール 初めて歌舞伎を観に行きましたが、本当に楽しかったです。これまでに経験したことのない、全く新しいタイプの劇場体験で、とても魅力的でしたね。演目の名前を正確には思い出せないのですが......「め組」という言葉が入っていたような気がします(『め組の喧嘩』)。それから、鏡と獅子の舞に関する演目でした(『春興鏡獅子』)。ある演者が最初は娘の姿で舞い、やがて獅子へと変身するのですが、その場面は実に素晴らしいものでした。歌舞伎とバレエというスタイルの違いも興味深かったです。温泉巡りも大好きですが、今回の日本滞在では、普段はあまりしないショッピングも楽しみました。
――今年はどんな夏を予定していますか。
ボール 友人のマルセリーノ(・サンベ)と一緒にポルトガルでガラ公演に出演し、その後はロイヤル・オペラ・ハウスでマリアネラ(・ヌニェス)のショー『Marianela-Timeless』に出演します。それから、マヤラと彼女の家族と一緒に、ブラジルで休暇を過ごす予定です。
――6月にソル・レオンとポール・ライトフット振付の『Shoot the Moon』にご出演されました。彼らの作品を踊った感想をお聞かせください。
ボール ロイヤル・バレエ・スクールの学生の頃、ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)のサマー・スクールに参加して、契約のオファーをいただいたことがあります。彼らの作品は本当に美しく、力強く、そして現代的だと感じ、アーティストとして、現代的な作品に取り組むことは重要だと思っていたので、NDTに入団することを真剣に検討しました。もちろん、英国ロイヤル・バレエ団も歴史的な作品を数多く上演しており、それらのレパートリーにも関心を持っていましたが、当時はNDTの作品ほど強く惹きつけられるものを感じなかったのです。ただ、英国ロイヤル・バレエ団では伝統的なレパートリーだけでなく現代作品も上演されており、その両方に取り組めるというのは恵まれたことではないかと考えました。
ソル(・レオン)とポール(・ライトフット)の作品は本当に素晴らしいものです。スタジオでのソルとポールは全く異なるエネルギーを持っていますが、互いに興味深い形で補完し合い、ダンスの異なる魅力を引き出しているように感じます。その結果、作品は驚くほど豊かで多層的なものになっています。彼らの作品を踊る機会を待ち望んでいた僕が、実際に踊ることができたことは本当に嬉しく、情熱を注げる体験でした。今後もアーティストとしての彼らから、多くのことを学びたいと思います。
――ビートルズやサッカーが有名なリヴァプールのご出身です。バレエに惹かれたきっかけ、そして、バレエダンサーを志した理由を教えてください。
ボール 実は、母がロイヤル・バレエ・スクールの出身で、セカンダリー・スクール(中学校)やハイ・スクール(高校)でダンスを教えていました。ですから、僕をダンス教室に連れて行ってくれたのは母でした。父もまた演劇畑の出身でした。僕は幼い頃から演劇に強く惹かれていました。男の子がそうしたことをするのは少し珍しいことだったかもしれませんが、学校で他の子供たちにいじめられるようなことは一度もなく、周囲から応援してもらっていました。誰かに何か心ないことを言われたことが一、二度あったかもしれませんが、あまり気にしないようにしていました。8~10歳になる頃には、すでにバレエに夢中になっていました。正直なところ、周りがどう思おうと、これが自分の進む道だと確信していました。リヴァプールという街には、強い文化的アイデンティティがあり、人々は、勇敢で互いを支え合う心を持っています。ですから、この街の出身であることをとても誇りに思っていますし、地元に帰ると、皆、僕のことを誇りに思っていると感じます。
――ご自分でも振付や映像作品など幅広く創作をされていらっしゃいますが、インスピレーションはどんなものから浮かびますか。
ボール ひらめきの源は一つだけではなく、人生そのものがインスピレーションを与えてくれるものだと思います。でも、常に何かに刺激を受けているわけではなく、発想力が枯渇しているときもあります。常にダンスに囲まれている環境にいるからこそ、そこから大きな刺激を受けていますが、映画や美術館、あるいは読書といったものからもアイディアを得ています。彫刻も非常に興味深い芸術分野の一つで、実際に彫刻家の方々と一緒に仕事をしたこともあります。ただ、自分の好みについてはよく理解しているつもりです。そのため、自分が楽しめないことにあまり時間を費やさないようにし、好きなことに集中するようにしています。そのうち、ふとした瞬間に、それまでとは違うものに魅力を感じ始めたことに気づくことがあります。そうなった時こそ、別の新しい何かについて学ぶタイミングなのだと思います。
――英国ロイヤル・バレエ団の新シーズンに出演する予定の作品を教えてください。

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ボール 来シーズンの演目のうち、配役が公表されているのは『マノン』だけです。僕はローレン・カスバートソンやメリッサ・ハミルトンと共演することになっています。それ以外には、『くるみ割り人形』や『白鳥の湖』といった定番の作品や、過去に踊ったことのある作品が上演される予定で、間違いなく出演することになるでしょう。来シーズンは新作があまり多くありませんが、今後のスケジュールは未定で、他のダンサーたちも具体的にどの作品を踊るのかはまだ完全には把握していません。来年『マノン』を踊ることはとても楽しみにしています。
――『マノン』のデ・グリュー役は難しいですか。
ボール そうですね、難しい役ではありますが、ケネス・マクミランの3幕バレエの中では、それほど難易度が高い方ではないと思います。男性ダンサーにとっては踊る量が多い役柄ですが、『ロミオとジュリエット』や『マイヤリング -うたかたの恋-』に比べれば、激しいジャンプやアクロバティックなパートナーリングは少し抑えられていると言えるかもしれません。デ・グリューは非常にロマンチックで理想主義的な魂の持ち主ですから、詩的な表現が重要になります。男性ダンサーが、繊細さや脆さといった感情的な側面を探求するのはとても興味深いことで、そうした機会を楽しんでいます。
――英国ロイヤル・バレエ団で14年目のシーズンを迎えます。今後、どのようなキャリアを築いていかれるのか、展望の一端をお聞かせください。
ボール 今の自分は「ダンスが仕事」という感覚が強いです。そのおかげで、お金のことを心配せずに新しいことを楽しんで学んでいます。今後数年間は、特に振付のスキルを磨き続けていきたいと考えています。ただ、現時点では、専業の振付家になりたいとは必ずしも思っていません。振付家という仕事は非常に過酷で、生活のすべてを捧げるようなものになりかねないと思うからです。バレエ団の芸術監督も考えられますが、非常に要求の厳しい仕事です。この職務に多くの時間を捧げる覚悟はありますが、今は一つの方向だけでなく、様々な方向に成長し続けたいという思いもあります。マスタークラスなどで自分の知見を共有することも好きなので、その活動も続けていくつもりですし、ある程度はキャリアの柱にしていくかもしれません。また、ダンスだけでなく、演劇や映画の世界にも関わり、多様な人々と様々なプロジェクトに取り組んでいけることも楽しみにしています。振付や映像制作、マスタークラスなどは、ダンサーを引退するまでも、そして引退した後も続けていきたいと思っています。ただ、それらの活動の形態や比重がどうなるかは、まだ分かりません。幼い頃からダンスという道を選んで歩んできたわけですから、これからの人生では、もう少し活動の幅を広げていけたらと願っています。
撮影:井上ユミコ(ALEXANDRE STUDIO AND LAB)
スタイリスト:DAN
HM:石田弥仙
【番組情報】WOWOW「英国ロイヤル・バレエ団の世界」

『ジゼル』高田茜、マシュー・ボール
©Andrei Uspensky 2026
◆8月1日(土)午後7:00
英国ロイヤル・バレエ団『ジゼル』高田茜×マシュー・ボール
収録日:2026年2月25日、3月3日
収録場所:イギリス・ロンドン ロイヤル・オペラ・ハウス
振付:マリウス・プティパ(ジャン・コラーリ、ジュール・ペローによる)
音楽:アドルフ・アダン
編曲:ラース・ペイン
台本:テオフィル・ゴーティエ(ハインリッヒ・ハイネによる)
演出・追加振付:ピーター・ライト
美術・衣裳:ジョン・マクファーレン
照明:ジェニファー・ティプトン
照明再デザイン:デヴィッド・フィン
出演:高田茜(ジゼル)、マシュー・ボール(アルブレヒト)
◆8月1日(土)午後9:00
英国ロイヤル・バレエ団「リーズの結婚」フランチェスカ・ヘイワード×マルセリーノ・サンベ
収録日:2025年10月29日、11月5日
収録場所:イギリス・ロンドン ロイヤル・オペラ・ハウス
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フェルディナン・エロール
編曲:ジョン・ランチベリー
台本:ジャン・ドーベルヴァル
美術・衣裳:オズバート・ランカスター
照明:ジョン・B・リード
出演:フランチェスカ・ヘイワード(リーズ)、マルセリーノ・サンベ(コーラス)、ジェームズ・ヘイ(母親シモーヌ)

『リーズの結婚』フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ
©2025 Alice Pennefather
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