ダンスカンパニーDAZZLE が30周年記念公演『花ト囮 - 露 -』を上演 長谷川達也&飯塚浩一郎インタビュー

ワールドレポート/東京

インタビュー=小野寺悦子

1996年に結成し、今年30周年を迎えるダンスカンパニーDAZZLEが、「『花ト囮 - 露 -』HANA to OTORI - arawa ‒」を上演。2009年初演の代表作『花ト囮』をブラッシュアップし、結成30周年の節目を飾る。上演を前に、DAZZLE主宰の長谷川達也と、クリエイティブディレクターの飯塚浩一郎にインタビュー。本作への想いを聞いた。

――結成30周年の節目に、この夏『花ト囮』を再演されます。

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長谷川達也 撮影:清水 隆行

長谷川 30年という大きな節目に何を表現しようか悩み、浮かんだのが『花ト囮』でした。これまでたくさんの場所で上演してきて、ずっとDAZZLEの活動と共にあった作品です。今ならこの作品をもっともっと進化させられるのではないかと思い、挑もうと考えました。DAZZLEは30年やってきたけれど、ようやくここに辿り着いたというより、ずっと道半ばのまま今に至っている感覚が強くあって。でもありがたいことに応援してくださるファンの方たちがいて、自分たちは今こういう表現ができている。我々の原点である舞台作品をお見せしたいという想いがあります。

飯塚 僕は2006年に加入したので、DAZZLEとしては20年が経ったことになります。DAZZLEじゃないと体験できないことを経験できた20年でした。僕が入るのとほぼ同時期に舞台公演をするようになって、『花ト囮』は舞台活動としては3作品目の作品でした。

長谷川 DAZZLEはダンスの世界でずっとトップが取れずにいました。ストリートダンスシーンの中でコンテンポラリーのような表現をしたり、コンテンポラリーダンスのシーンでストリートダンスのニュアンスを持ちこんだりと、独自性を追求してきたので、価値観の違いのようなものがあったのでしょう。だけど舞台という自由な空間の中で、自分たちが思うような作品を作ったとき、評価された。それがこの『花ト囮』でした。演劇祭でグランプリを獲得したり、海外公演で賞を受賞したりもした。『花ト囮』はDAZZLEの代表作と呼ばれているし、自分たちもそう思っています。

飯塚 お客さんが評価してくれた、という部分が一番大きかったと思います。ダンスの世界は、ともすればお客さん以外の人の評価軸が強い面がありますよね。だけどそれは必ずしも一般のお客さんの満足には繋がらない。アートは集客が全てではないと思いますが、観客がお金を払って観たいと思う作品になっているかどうかは、僕らにとって重要です。そういう意味で言うと、この作品はいろいろな意味でバランスが良かった。アート性もありつつ、ダンスを知らない人にも感動してもらえる。ルーマニアやイランでもスタンディングオベーションが起こり、それらを体験していく中で、自分たちの可能性が海外も含めてもっとあるかもしれないと思わせてくれた作品でした。

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――『花ト囮』は2009年に初演を迎えています。作品の着想はどこからきたのでしょう。

長谷川 『花ト囮』の着想の原点になったのが、黒澤明監督の映画『夢』でした。劇中に狐の嫁入りを見るシーンがあって、それが頭の中にこびりついていて。DAZZLEだったら狐の嫁入りをどう表現できるだろうと、話を膨らませていった感じです。それまでずっとストリートダンスという海外発のダンスをしてきたけれど、日本人として生まれたからには日本らしい作品を作らなければ、という使命感をすごく感じた年でもありました。
『花ト囮』は物語性を追求した作品で、創作にあたり、まず台本を書いています。ストリートダンスから派生したグループの中で、物語のあるダンスを舞台で表現する人たちが当時はいませんでした。でも僕の中ではそれは必然だった。僕自身、映画や漫画、ゲームなど、いろいろなカルチャーの中で物語を幼い頃から体験してきたので、より多くの人に楽しんでもらいたい、感動してもらいたいと思ったとき、物語は絶対に必要だと思ったんです。
ただ、踊りで伝えられることには限界がある。そもそも物語を表現するのにダンスが適しているとは思っていなくて。だからこそ挑戦しがいがありますね。作中は言葉や映像を使い、物語の面白さとダンスのエネルギーを共存させています。

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 飯塚浩一郎 撮影:清水 隆行

飯塚 例えば、ダンスがとてつもなく上手い人が、ソロで1時間踊るとする。クオリティはものすごく高くても、大半の人は飽きてしまう。そうさせないためには何が必要なのか。お客さんが観てどう感じるか、その印象の逆算で作っている部分もあります。自分たちが表現したいものが本当はこうだけれど、お客さんにはどう受け止められるだろうか。そのバランスをものすごく緻密に、押したり引いたりしながらここまでやってきた感じです。

長谷川 踊る技術を高めることと、伝えるための技術は全く別物だと思う。伝えるためにはどういう表現をしていけばいいのかずっと考えていて、そこがいわゆる普通のダンサーとは違うベクトルで作品を作ってきたところかもしれません。ダンスだけで完結するのではなく、総合芸術として物語がなされる。文学的であるだとか、映像がどうであるとか、音楽がどうであるとか、いろいろな要素を組み合わせた時に、そこで感動できるものができればいい。ダンス中心だけど、踊らなくていいなら踊らなくていい。そういう価値観でものを作っているところがあります。

――非常に冷静ですね。常に観客目線、第三者目線を持っているように感じます。

飯塚 客観性もあるし、あと何回か絶望しているのだと思います。キャリアが長いぶん、ダンスだけでは伝わらないんだ、という経験もしてきているので。そこはいわゆるアート系のダンスの方とはちょっと違って、ストリートダンスの考え方かもしれません。ストリートダンスは、お客さんを沸かせられないといけない。だから、お客さんが「なんだかよくわからなかったね」と帰るのは、僕ら的には失敗という感覚があるんです。世の中にはたくさんの表現があるけれど、僕たちにしかできない表現を探していて、結果こうした作品ができたという感覚はありますね。

長谷川 物語自体もそう。誰かが何かを成し遂げて幸福になるのが物語のオーソドックスな作り方かもしれないけれど、僕が物語を考えるとき、いわゆるサクセスストーリーにすることは1度もなく、何かしらネガティブな感情が入ってくる。
振り返れば、日本の昔の物語って、欲に駆られた人が罰を受けるような話がたくさん読み聞かせられてきましたよね。美しいし、儚いけれど、残酷さがある。そこに日本人らしさ、日本らしさがあって、その部分を表現したいという想いがあります。例えば、ずっと美しいものを見ていると、その美しさが当たり前になってしまったりもする。だけど、醜いものを見たとき、当たり前だと思っていた自分の環境が、実はすごく美しい場所だったんだと思い直せたりもする。
暗闇を見つめる場面を作ることによって、日常が輝いたり、そこに気づくきっかけが、作品を通じて生み出せるかもしれない。それがある種芸術の価値なのかもしれない。それを日常で味わうのは嫌だけれど、芸術として疑似的に味わうことができるのが芸術の魅力だと思っていて。『花ト囮』にしても、ダークだと言う方は多いけど、それによって得られるものは違った感動として残るものになると思っています。

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――今回の再演は改訂版となるそうですね。

長谷川 『花ト囮』をもう1度見直したとき、もっとできるよねってすごく感じたんです。それは成長だと思います。『花ト囮』を最後に上演したのが12年前で、その間にたくさんの作品を作り、イマーシブシアターにも取り組み、いろいろ積み重ねてきました。あと、当時とは時間の流れが圧倒的に変わっていて、人の価値観、感覚も含めて、あの時の時間軸でパフォーマンスするのは違うと思った。削ぎ落としたり、詰め込んだり、再構築しています。だから今回は今までの再演の中で1番大きく変わっていますね。でも実際それは大変でした。壊すことの怖さもあったし。

飯塚 でも自分たちの中で違和感を残したままやるのは良くないし、その時その時でベストを尽くしたいという気持ちがある。自分たちが現代に生きているという事実からは逃れられないのだから。表現者が追い求めるものは人それぞれで、なかには100年後に評価されたいという人もいるでしょう。でも僕らは、目の前のお客さんがちゃんと感動できるかを大事にしたいと思っているんです。

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 長谷川達也、飯塚浩一郎 撮影:清水 隆行

――実際の振付作業はどのように行っているのでしょう。

飯塚 基本的にシーンごとに作るメンバーが決まっていて、それを長谷川が統括していきます。

長谷川 僕は演出として全体を見ているので、その中でここはどういう流れにするべきだというところも含めて、修正することもあります。同時に、振付けをするメンバーの意見を尊重して、君がこれでいいと思うならそれでいこうか、ということもあって。かつては意見が割れたこともありましたが、長いことやっているので、みんな信頼してくれていますね。

飯塚 僕自身は、観る人がどう思うか、どういう形なら届けたいものが届けられるかを中心に考えています。観る人、対象になる人を考えることは、とても大事。僕が思うに、それはダンスとは違う能力だと思います。自己表現としてのアートとしていいとは思いますが、観客との幸福な関係がなければ持続性に関わってきますし、持続しているからこそレベルが上げられると思っているので。

――DAZZLEを象徴する活動の一つに、イマーシブシアター(体験型公演)があります。2021年には日本初の常設型イマーシブシアターをお台場に設けるなど(お台場ヴィーナスフォートの閉館に伴い閉業)、各地でイマーシブシアターを展開し、ダンス公演の継続性を高めてきました。

長谷川 ダンスって短い公演が多いじゃないですか。作り手としてはもっとたくさん上演したいし、もっとたくさん演じたいってみんな思っている。でも劇場公演で難しかったことが、イマーシブシアターでできた。それがすごくうれしかった。形は違えど、一つのカンパニーが常設で公演できるとは夢にも思わなかったから。

飯塚 シビウ国際演劇祭でルーマニアに行ったとき、『花ト囮』を観た演出家に、「君たちが国内で劇場を持ってないなんて」と驚かれたことがありました。「これくらいの作品が作れるなら劇場を持ってて当たり前だよね」というのがヨーロッパの感覚。「でも日本はそうではないんです」と話をした覚えがあります。
日本は芸術に割かれる国の予算が少なく、特にダンスは日本では重視されていない。世の中から必要とされていない時代があって、そこと僕らは闘い続けてきた。そんななか、お客さんの支持を得たことによって、今まで続けてこれたんだと思っています。

長谷川 ダンスの世界には自分たちの表現で生きていきたいという人がたくさんいるけれど、できなくてくすぶっている。彼らをピックアップして、パフォーマンスで生きていける環境を作ることができたのはすごく意義があったと思う。

飯塚 イマーシブシアターでバレエダンサーが出る作品があって、それを観に来たバレエ業界の方が、「常に踊ってお金をもらえる環境があることがすごい」と言っていました。「バレエカンパニーでもできないことをDAZZLEがやっている」と言ってくださった方もいました。

長谷川 DAZZLEの場合、演出や脚本、振付け、出演と、作品ごとにそれぞれに対してギャランティが発生します。ダンサーがパフォーマンスをすることでお金をもらえる。それが当たり前ではあるけれど、できない環境がすごく多いなか、大きな額ではないですが、それが実現できたことは良かったですね。これからも続けていきたいと思っています。それこそがダンサーが表現すべき場所だと思うので。

飯塚 DAZZLEは株式会社としても存在していて、常設のイマーシブシアターは僕ら自身が主催しています。公演はビジネス的な側面も当然存在し、自分たちが責任を負うことで可能になるクリエイティブもあると思います。DAZZLEが今まで不可能だとされていたことを実現していくことで、未来に希望を見出してくれる人もたくさんいると思います。
ダンサーがイマーシブシアターに挑戦する例はまだまだ少ない。けれど、特に舞台を主戦場にしているダンサーにとっても今後大きな可能性があるアートフォームだと思います。原始的に言ったら、舞台ではない場所で踊っていたし、もっといろいろなあり方があるはずで、未来は全然違う世界になっていると思います。
常設しているからこそ、そこに観に来てくれる人がいる。常設公演を行うようになって、そうより強く感じるようになりました。海外でいろいろな演劇祭に行きましたが、誰も日本の作品を知らないんです。本当にびっくりするくらい。僕らは『キャッツ』も『シカゴ』も『オペラ座の怪人』も知っている。けれど日本の作品は知られていない。その1番の理由は、常設の作品がないことだと思う。10年、20年続く作品を常設で上演する。東京に限らず全国各地に、そういう環境を作っていくのが目標です。

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――30年という節目を経て、この先のDAZZLEの未来をどう思い描いているのでしょう。

長谷川 もっともっと舞台公演を続けていきたいし、より洗練されたものを作りたい。究極で言ったら、"普及の名作" を作りたい。常に作るものがベストになるのが理想。それは終わりのない話だけれど、身体が動く限り続けていきたいですね。表現の形としても、もっと違う形で感動を生み出せるものがあるのなら、それをすることに何の抵抗もない。舞台もそうだし、イマーシブシアターでやることも、そういう意味ではたまたまなんです。新しい表現を探していきたいと思うし、いろいろな人たちと一緒にパフォーマンスしたいという気持ちもあります。

飯塚 作りたいものがいっぱいあって、作りたい形もさまざまある。だから常にわくわくしています。時代の流れとともにいろいろなものが進化していく中で、それを取り入れていけば必然的に新しい表現になっていくだろうし、テクノロジーが進化していく限り新しい表現になっていく。だからもっと面白いものができるだろうと思っていて。僕らがAIと一緒に踊るようなこともあり得るだろうし、夢は広がりますよね。

長谷川 だからまだまだ終わらない。きっと生きている限り終わらないでしょうね(笑)。

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DAZZLE結成30周年記念公演「花ト囮 - 露 -」HANA to OTORI - arawa ‒

2026年7月2日(木)~12日(日)全14回公演
会場:あうるすぽっと
https://dazzle-tokyo.com/

ヘアメイク Mashino
スタイリスト 杉山朱美
衣裳 セットアップ DRESSEDUNDRESSED、シャツ SEVEN BY SEVEN

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