パリ・オペラ座バレエ団コール・ド・バレエ昇級コンクール詳報

ワールドレポート/パリ

大村 真理子(在パリ・フリーエディター) Text by Mariko OMURA

パリ・オペラ座バレエ団コール・ド・バレエの昇級コンクールが11月6日(女性)、8日(男性)にオペラ・ガルニエで開催された。今年は苗字のアルファベット J からのスタート。コンクールの昇級決定者は、2020年1月1日に新しい階級に上がる。以下に各クラスの6位までの席次と昇級者、および自由曲を紹介しよう。

女性カドリーユ(コリフェ空席3/ 参加者14名)
課題曲 『Variations』(セルジュ・リファール)、第一ヴァリエーション
1.ホーユン・カング(昇級)
自由曲『ドン・キホーテ』(ルドルフ・ヌレエフ)、第二幕よりドルシネア/キトリのヴァリエーション
2.セリア・ドゥルーイ(昇級)
自由曲『ドン・キホーテ』(ルドルフ・ヌレエフ)、第二幕よりドルシネア/キトリのヴァリエーション
3.クレマンス・グロス(昇級)
自由曲『Dogs Sleep』(マルコ・ゲッケ)
4.ルナ・ペニェ
5.ウージェニー・ドゥリオン
6.ニンヌ・セロピアン

1. カングKANG DSC_8586b.jpeg

ホーユン・カング
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

1.ドゥルーイ.jpg

セリア・ドゥルーイ
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

1. グロスGROSS_D4D_1927bis.jpg

クレマンス・グロス
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

課題曲に選ばれたセリジュ・リファールの『Variations』は、シーズン2019/20開幕ガラで踊られた作品である。ヌレエフやラコットの超技巧を求める振付だと、各自のテクニックのレヴェルが露呈されがちだが、今回の課題曲では目立ったしくじりはなく全員がそつなくこなしていた。1位で昇級したホーユンは、素晴らしいテクニシャン。前回彼女の初のコンクールでは、その面を強調しすぎた味のない踊りを見せるにとどまった感がある。今回の課題曲では舞台登場と同時に瑞々しさと愛らしさを感じさせ、踊りは滑らかで安定感があった。2位のセリアは全身を舞台空間で満たすパフォーマンスを見せ、長い腕の優美さを印象に残した。3位のクレマンスは2013年の入団で、コンテンポラリー作品に配されることが多いダンサーだ。今回の昇級は、自身のキャラクターを審査員にアピールできる自由曲を選んだ彼女の戦略の勝利だろう。カドリーユのサミュエル・ミュレーズが主催するグループ3e étageの公演によく参加する彼女。このグループの常連ダンサーたちが、最近のオペラ座のコンテンポラリー作品で良い配役を得ている昨今。クレマンスもそういった一人として重用されるようになるだろう。
学校時代のデモンストレーションで精彩を放っていたニンヌは、今回が初コンクール。課題曲、自由曲ともに舞台度胸の良さを見せ、6位である。自由曲の『エチュード』では、テクニシャンぶりを発揮しつつ、フレンチ・エレガンスの持ち主であることを証明。目に強い意志をたたえ、どこかドロテ・ジルベールを思わせ、今後が楽しみなダンサーである。前回はコリフェの空きが2席だったため 、3位のブルーアン・バティストーニは見応えのあるパフォーマンスを見せたもののあいにくと昇級できなかった。今回、課題曲では流れるようなダンスの中にメリハリをつけ、自由曲の『ロメオとジュリエット』では、幼さの残るフレッシュなジュリエットを溌剌と踊ったのだが・・次回に期待しよう。

1.カングHohyun Kang - Photo Svetlana Loboff-009- ONP.jpeg

ホーユン・カング
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

1. ドゥルーイCélia Drouy - Photo Svetlana Loboff-072-ONP.jpeg

セリア・ドゥルーイ
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

1. グロスClémence Gross - Photo Svetlana Loboff-079-ONP.jpeg

クレマンス・グロス
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

女性コリフェ(スジェ空席3/参加者10名)
課題曲 『Variations』(セルジュ・リファール)、第三ヴァリエーション
1.レティツィア・ガロニ(昇級)
自由曲『ディアーヌ・エ・アクテオン』(アグリッピナ・ワガノヴァ)
2.キャロリーヌ・オスモン(昇級)
自由曲『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』(ジェローム・ロビンズ)、グリーン・ガール
3.ナイス・デュボスク(昇級)
自由曲『ドン・キホーテ』(ルドルフ・ヌレエフ)、第二幕よりドルシネア/キトリのヴァリエーション
4.カミーユ・ボン
5.ジュリエット・イレール
6.カトリーヌ・ヒギンズ

2. ガロニGALLONI_D4D_6840.jpeg

レティツィア・ガロニ
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

2. オスモンOSMONT_D4D_7073.jpg

キャロリーヌ・オスモン
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

2.デュボスクDUBOSCQ BIS - DSC_6923.jpeg

ナイス・デュボスク
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

前回のコリフェからスジェへのコンクールは空席が1つという激戦だったが、今回は3席もあったので参加ダンサーのモティヴェーションも高かったに違いない。課題曲はヴァリエーションこそ異なるものの、コリフェのクラスもリファールの『Variations』からだ。年数に違いはあっても舞台経験のあるコリフェのダンサーたちなので、6名の間でこの課題曲における技術面で大きな差は見られなかった。日頃の仕事ぶり、そして課題曲が審査結果を左右したのではないだろうか。一位のレティツィアは力強いダンサーだ。しなやかな白いドレスで踊る課題曲より、自由曲でディアーヌを踊ることで自身の可能性をより発揮。スジェに上がるのに的確な自由曲のセレクションをした。2位のキャロリーヌは、テクニック的に優れていることは過去に証明済みである。エクマン創作『プレイ』以来、彼女の強みとなっているアクティングの面もこめられる自由曲を選んだ選択は賢い。3位のナイスは日頃の舞台で放つ輝きを今一つ発揮しきれなかったようだが、フレンチ・エレガンスを体現する美しい踊りを見せた。
4位のカミーユ・ボンは課題曲、自由曲(『白鳥の湖』第二幕より白鳥のヴァリエーション)ともに優美さが印象的だった。5位のジュリエット・イレールはコンテンポラリー作品での活躍が目立つダンサーである。今回、自由曲の『ラ・バヤデール』第二幕よりニキヤのヴァリエーション)によって優れた音楽性とともにフェミニティを示すパフォーマンスは、年末の『ル・パルク』で踊るヒロイン役への期待を高めるものだった。6位のカトリーヌ・ヒギンズは オペラ座ダンサーの枠にはまらない体型ゆえか、怪我をしていたのか、ここのところ舞台であまり見かけなかったが、文句のつけどころのないテクニックを課題曲、自由曲で披露した。前回、素晴らしい舞台を見えたジェニファー・ヴィゾッキの不参加が惜しまれる。

2.ガロニLetizia Galloni - Photo Svetlana Loboff-140-ONP.jpeg

レティツィア・ガロニ
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

2. デュボスクNaîs Duboscq - Photo Svetlana Loboff-133- ONP.jpeg

ナイス・デュボスク
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

2. オスモンCaroline Osmont - Photo Svetlana Loboff-100-ONP.jpeg

キャロリーヌ・オスモン photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

女性スジェ(プルミエール空席1/ 参加者8名)
課題曲『白鳥の湖』(ルドルフ・ヌレエフ)、第二幕白鳥のヴァリエーション
1.シルヴィア・サン=マルタン(昇級)
自由曲『アザー・ダンシーズ』(ジェローム・ロビンズ)、第一ヴァリエーション
2.ロクサーヌ・ストヤノフ
3.イダ・ヴィイキンコスキー
4.エレオノール・ゲリノー
5.ビアンカ・スクダモール
6.マリーヌ・ガニオ

3. サンマルタンSAINT-MARTIN_D4D_1563bis.jpg

シルヴィア・サン=マルタン
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

プルミエール・ダンスーズの1席の行方は、下馬評ではビアンカ・スクダモールという声が圧倒的だった。というのも、2017年秋に開催されるはずのコンクールが2018年の3月にずれたことで、2017年の入団者も参加資格ができ、彼女はカドリーユからコリフェに上がったのだ。さらに同年11月のコンクールでスジェに上がって、という快進撃を彼女が遂げたからである。 課題曲ではトレードマークの笑顔を封印し、白鳥の悲しみを感じさせるしっとりとした踊りで、自由曲(『白の組曲』フリュートのヴァリエーション)では笑顔を取り戻し、確固たる技術でしなやかに踊った。しかし、今回のコンクール参加スジェたちは、ビアンカ以外、日頃から配役に恵まれ、舞台経験豊かなダンサーばかり。入団2年の彼女は『椿姫』でオランピア役を踊った他は、まだ演技を見せる役をさほど経験していない。プルミエールに上がるには、もう少し経験を積んで、ということなのだろう。
昇進を決めたシルヴィアは2008年に入団し、2012年にスジェにあがったものの、怪我で3年間、舞台から遠ざかっていた。復帰後、失われた時間をとりもどすかのようにオペラ座は彼女をさまざまなタイプの作品に配役し、昨年末はフランソワ・アリュと共に『シンデレラ』の主役を任せている。優れた技術を持ち、演技面も問題なく、エトワールにもっとも近いプルミエール・ダンスーズのポストにふさわしいダンサーといえる。
参加8名のうち順位入りした6名について、みな課題曲は素晴らしい出来だった。ロクサーヌは自由曲がシルヴィアと同じだったのが、不運だったかもしれない。6位のマリーヌの自由曲(『クラヴィゴ』マリーのヴァリエーション)は、短いながらミニ・ドラマをみせる演劇性豊かなパフォーマンスだった。

3.サンマルタンSilvia Saint Martin - Photo S. Loboff-174-ONP.jpeg

シルヴィア・サン=マルタン
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris


男性カドリーユ(コリフェ空席2 / 参加者13名)
課題曲『ナポリ』(オーギュスト・ブルノンヴィル)、パ・ド・ドゥの第一ヴァリエーション
1 .アントニオ・コンフォルティ(昇級)
自由曲『カルメン』(ローラン・プティ)、ドン・ホセのヴァリエーション
2. ニコラウス・チュドラン(昇級)
自由曲『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』(ジェローム・ロビンズ)、ブラウン・ボーイの第一ヴァリエーション
3.ギヨーム・ディオップ
4.シュン・ウィン・ラム
5.オーレリアン・ゲイ
6.アレクサンドル・ボカラ

4.コンフォルティCONFORTI_D4D_9095bis.jpg

アントニオ・コンフォルティ
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

4. チュドランTUDORIN DSC_8675b.jpeg

ニコラウス・チュドラン
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

4.コンフォルティAntonio Conforti - Photo Svetlana Loboff-291-ONP.jpeg

アントニオ・コンフォルティ
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

一位で上がったアントニオは2012年の入団以来、コール・ド・バレエとして常に舞台に配役され、またドキュメンタリービデオ『未来のエトワールたち パリ・オペラ座バレエ学校の一年間』が追いかけた生徒の一人であることから、バレエ・ファンの間ではカドリーユながら知られる顔である。これまでのコンクールでは力を発揮しそこなっていて、今回の昇級は''やっと'' という感がある。課題曲は安定した美しい踊りを最後まで乱れることなく踊り、''今年こそ上がる''という感触があった。さらに自由曲のドン・ホセでダンサーとしての成長もみせ、昇級を確信させた。2位のニコラウス・チュドランは外部入団のダンサー。前回の初のコンクールでは、課題曲、自由曲ともに優れたパフォーマンスをみせながら、なぜか6名にも入れず。今回、課題曲では高く跳ぶことよりフォームの美しさを大切にし、余裕を感じさせた。自由曲では観客席に背を向けての登場から、見る者を引き込む魅力があった。
3位のギヨーム・ディップは課題曲では高いソーが印象的で、また自由曲(『パキータ』、ルシアン・デルヴィリーのヴァリエーション)で軽快さが目に快適な踊りをみせた。参加した13名のカドリーユ中、このギヨーム、ルー・マルコー=ドゥルアール、ナタン・ブリソンが初参加。細っそりとしたプリンス体型の美少年たちで、テクニック的にも優れた3名である。彼らが本領を発揮できる作品が、今後のオペラ座のプログラムにあることを祈りたい。

4.チュドランNikolaus Tudorin -Photo Svetlana Loboff-262-ONP.jpeg

ニコラウス・チュドラン photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

男性コリフェ(スジェ空席3/ 参加者6名)
課題曲『ドン・キホーテ』(ルドルフ・ヌレエフ)、第三幕よりバジリオのヴァリアション
1.フロラン・メラック(昇級)
自由曲『白鳥の湖』(ルドルフ・ヌレエフ)、第一幕ジークフリートのスロー・ヴァリーション
2.シモン・ル・ボルニュ(昇級)
自由曲『イン・ザ・ミドル、サムホワット・エレヴェーティッド』(ウイリアム・フォーサイス)
3.トマ・ドキール(昇級)
自由曲『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』(ジェローム・ロビンズ)、ブラウン・ボーイの第一ヴァリエーション
4.アンドレア・サーリ
5.マチュー・コンタ
6.ユーゴ・ヴィリオッティ

5. メラックMELAC_D4D_3058.jpg

フロラン・メラック
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

5. ル・ボルニュLE BORGNE_D4D_6491bis.jpg

シモン・ル・ボルニュ
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

5. ドキールDOCQUIR_DSC_3055.jpeg

トマ・ドキール
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

5. メラックFlorent Melac - Photo Svetlana Loboff-330-ONP.jpeg

フロラン・メラック
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

1位のフロラン・メラックも2位のシモン・ル・ボルニュも日頃からコンテンポラリー作品に配されることが多いダンサーである。それだけにフロランが自由曲にヌレエフの『白鳥の湖』を選んだのは意外に思えたが、エモーションを感じさせる一位で上がるにふさわしいパフォーマンスだった。2010年に入団し、2015年にコリフェにあがった彼。これからスジェとしてどういった配役をされるのか、楽しみである。2位のシモンは課題曲で苦戦したものの、彼がコンテンポラリー・ダンサーとしてオペラ座ですでに確立している位置を再確認させる自由曲を選択し、コンクールという枠を上回るパフォーマンスで審査員を納得させたようだ。3位のトマ・ドキールはコリフェながら昨春の『白鳥の湖』ではロットバルト役に配役されていることから、上層部の期待を担っているダンサーの一人といえる。課題曲は参加ダンサーの6名の誰もが大成功というわけではなく、トマも一瞬バランスを崩したのだが素早く立て直し、きれいに締めくくった。課題曲では憂いをこめた腕の動きが素晴らしかった。
4席の空きがあったのなら、と健闘した4位のアンドレア・サーリの不運を思わずにはいられない。これがコンクールの過酷なところである。

5.ル・ボルニュSimon Le Borgne - Photo Svetlana Loboff-324- ONP.jpeg

シモン・ル・ボルニュ
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

5. ドキールThomas Docquir - Photo Svetlana Loboff-357-ONP.jpeg

トマ・ドキール
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

男性スジェ(プルミエ空席2/ 参加者5名)
課題曲『くるみ割り人形』(ルドルフ・ヌレエフ)、第二幕よりドロッセルマイヤーのル・グラン・パ・ド・ドゥのヴァリエーション  
1.フランチェスコ・ムーラ(昇級)
自由曲『ラ・バヤデール』(ルドルフ・ヌレエフ)、第二幕よりソロールのヴァリエーション
2.パブロ・レガサ(昇級)
自由曲『ダンシーズ・アット・ア・ギャザリング』(ジェローム・ロビンズ)、ブラウン・ボーイの第一ヴァリエーション
3.アクセル・マリアーノ
4.ジェレミー=ルー・ケール
5.アントワーヌ・キルシェール

6. ムーラMURA_DSC_2966.jpg

フランチェスコ・ムーラ
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

6.レガサLEGASA_D4D_6986bis.jpg

パブロ・レガサ
photo Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

女性はプルミエールの1席の空きに対してスジェ21名中の8名がコンクールに参加したが、男性はスジェ19名中の5名しか参加しなかった。 前回は1席しか空きがないところ、7名が参加していることを思うと不思議な現象である。 今回たとえ2席空きがあっても、下馬評高い5名には敵わない、という思いからだろうか。この5名は2011年から2015年までの入団者。今回は不参加を決めたのは、彼らの先輩スジェたちだ。誰があがってもおかしくないという5名によるコンクールはダンサー仲間にも見逃せないようで、それまで空席がめだった会場にこのクラスの時は大勢のダンサーが集まった。

6. ムーラFrancesco Mura - Photo Svetlana Loboff-383-ONP.jpeg

フランチェスコ・ムーラ
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

1位を得た2015年入団のフランチェスコは優れたテクニックの持ち主であることを、公演ごとに証明している。小柄であることを武器にどこまでも高いソー、スピンの効いた回転で観客の目を楽しませる彼。前回のコンクールでは昇級したマルク・モローに次ぎ第二位だった。今回も前回同様、自由曲で彼のパフォーマンスには会場で感嘆のため息が漏れ聞こえた。2位のパブロはフランチェスコより2年前に入団し、ステージ経験数も多く、またドゥミ・ソリストとしての活躍も披露済みだ。今シーズン開幕公演の『Blake Works 1』ではテクニックも存在感も文句無しのパフォーマンスで会場をわかせた。パワフルで活きの良さが定評のパブロは、これまでステージで表現する機会があまり得られなかった面を見せられる自由曲を選び、審査員を魅了した。3位のアクセル・マリアーノ(2014年入団)は前々シーズンから頭角を現し、『リーズの結婚』のアラン役、『白鳥の湖』のロットバルトに配役され、この年末の『ラ・バヤデール』ではアブデラム役を踊る、というように、物語の要をにぎる役に配され続けている。次回のコンクール、プルミエ・ダンスールに空席があることを彼のために祈りたい。
男性エトワール数が女性にくらべて圧倒的に少ないことから、次の任命は誰かという話題はこの2〜3年尽きない。年末の『ライモンダ』では2018年3月のコンクールでプルミエにあがったポール・マルク、そして来年からのプルミエであるパブロ・ルガサが共に主役のジャン・ドゥ・ブリエンヌに配されている。オペラ・ガルニエの『ル・パルク』では今年プルミエにあがったマルク・モローが主役を踊る。誰かが任命されそう、と期待させずにはいられない配役だ。しかし、フランソワ・アリュの存在も忘れてはならないのではないか、 彼は『ライモンダ』でアブデラムに配役されている。過去にはエトワールのニコラ・ル・リッシュが踊り、主役並の大役である。『オネーギン』のレンスキー役でマチアス・エイマンが任命されたことを思えば、アブデラム役で任命があってもおかしくないだろう。

6. レガサPablo Legasa - Photo Svetlana Loboff-373-ONP.jpeg

パブロ・レガサ
photo SvetlanaLoboff/ Opéra national de Paris

今回プルミエに昇進決定した3名の過去のインタビューは、以下から読むことができる。
シルヴィア・サン=マルタン
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/paris/detail012205.html
フランチェスコ・ムーラ
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/paris/detail000011.html
パブロ・レガサ
https://www.chacott-jp.com/news/worldreport/paris/detail000004.html

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