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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2016.09.12]

自在で多彩な表現を駆使した、井関佐和子、山田勇気、小尻健太、奥野晃士、金森穣によるNoism 0 の洒脱な舞台

Noism 0
『愛と精霊の家』金森穣:演出振付

Noismは、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館の専属舞踊団として、金森穣を芸術監督に2004年に立ち上げられた。その後、プロフェッショナル・カンパニーのNoism1と研修生のカンパニー Noism2へと発展し活動を続けてきた。さらに2015年には新潟市の「水と土の芸術祭 2015」への参加を機に、「舞踊に限らず、演劇、音楽、美術などで活動している芸術家が集って不定期に公演を行う」Noism 0が作られた。そして今回、Noism 0による『愛と精霊の家』が、BeSeTo芸術祭 新潟のプレ企画として彩の国さいたま芸術劇場で上演されることになった。

tokyo1609c_0027.jpg 撮影:篠山紀信

『愛と精霊の家』は、2012年に高知県立美術館で上演された『シアンの家』を原案として作られている。『シアンの家』は金森穣と井関佐和子がプライヴェートユニットを組んで、自分たちの個人史をモティーフにした舞台から始まったように記憶している。
今回の『愛と精霊の家』は、演出振付は金森穣。一人の俳優と女性の舞踊家と3人の男性舞踊家により演じられる。それは井関佐和子、山田勇気、小尻健太、金森穣と俳優の奥野晃士である。

天井に金色のキャンドルのように輝く小さな電球を規則正しく並べ、それだけで「精霊の家」を感じさせる巧みな装置で、これが時に応じて下の降りてくるのも不思議な雰囲気を漂わせて効果的だった。舞台には、椅子と衣装を着けていないトルソ、下手手前に古い意匠を施した寝台のような家具が置かれている。
男(俳優)の独白とともに女の精霊のダンス。女は3人の男(舞踊家)と様々な局面でそれぞれデュエットを踊る。井関の良く伸びる手と脚、小顔と見事なプロポーションが、愛を踊る精霊の機微を表して美しかった。

tokyo1609c_0256.jpg 撮影:篠山紀信

鏡面にだけ映る男とのデュエット(山田勇気)、妊娠の喜びとそれを失った悲しみのデュエット(小尻健太)、生活の情景をコミカルに影絵で表し、やがて消えていく男とのデュエット(金森穣)が繰り広げられる。存在の感覚、劇的感情、日常の感覚の不可思議などが、舞踊と演劇的な技法が組み合わされて、洒脱に表現されていた。ラストシーンでは、豪華なテーブルと二脚の椅子を様々に巡りながら、井関が踊る。すると四方から男たちの幻影がしばし現れ、やがて消える。
全体にコミカルなシーンも交えながら構成されているが、舞踊とテキストが融合して整然とした仕上がりに見えた。舞踊とセリフと演技の流れも自然に感じられ、無駄な表現はない。こうした舞踊と舞踊以外のジャンルとの表現のスタイルが、Noism 0 の目指すところなのだろうか
フランス不条理演劇の劇作家と言われるウージェーヌ・イオネスコの『椅子』をテキストとして使用している。そういえばベジャールが振付け、マリシア・ハイデとジョン・ノイマイヤーが踊った『椅子』。幻影を背負った老夫婦の魂の深部を垣間見たような不思議ダンスだったことが、記憶の底から微かに蘇ってきた。
(2016年8月21日 彩の国さいたま芸術劇場)

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tokyo1609c_0881.jpg tokyo1609c_1739.jpg
tokyo1609c_1292.jpg 撮影:篠山紀信(すべて)