新国立劇場バレエ団が2024/25新シーズン・ライナップと来年7月、英国ロイヤル・オペラハウスで『ジゼル』を上演することを発表した

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

2月28日、オペラパレスのホワイエで新国立劇場バレエ団の2024/25シーズン舞踊ラインアップ説明会が行われた。コロナ禍を経てようやく平常を取り戻し、未来への期待を実現する時節となって行われる説明会だ。吉田都芸術監督が一人で登壇し、すべてにわたって説明を行った。

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吉田都芸術監督 © Chacott Web Magazine

まず、新スタジオが開設され、ダンサーたちが冷たい廊下でストレッチせざるを得ないと言った現状が改善されたことを喜んだ。また、医療的なケアも改善されているとのこと。ダンサーの踊る環境については、吉田監督の努力が少しずつ実を結びつつあるようで大変に喜ばしい。
ラインナップでは、古典全幕バレエの上演は、『眠れる森の美女』(10月~11月、12回公演)『くるみ割り人形』(12月~25年1月、18回公演)『ジゼル』(25年4月、9回公演)『不思議の国のアリス』(25年6月、11回公演)の4演目。その他は「DANCE to the Future」(11月~12月、4回公演)、「バレエ・コフレ」(『エチュード』新制作、『精確さによる目眩くスリル』新制作、『火の鳥』25年3月、4回公演)、『オバケッタ』(25年3月、4回公演)、「Young NBJ GALA 2025、(2回公演)、こどものためのバレエ劇場 2024『人魚姫~ある少女の物語~』(7月世界初演、8回公演)となっている。
全幕物では、『くるみ割り人形』『不思議の国のアリス』に主演の機会をあたえられることが期待できる。ダンサーの育成は本当に時間のかかることだから、と改めて実感を強調していた。
また新制作は『エチュード』『精確さによる目眩くスリル』貝川鐵夫による新作『人魚姫』と比較的小規模の公演に絞られているが、それでも全部で14公演ある。チャレンジの気概も育てていきたいという意欲も感じられる。ただ、それだけできるのであれば、概ね無難とも思える選択ではなく、もう少し新国立劇場バレエ団ならではという方向性を強く打ち出した作品の新制作も欲しい、という気もしないでもないが・・・・。

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吉田都芸術監督 © Chacott Web Magazine

もう一つのトピックは、来年7月、英国ロイヤル・オペラハウスで吉田都自らが演出し22年に初演した『ジゼル』(吉田都:演出、アラスター・マリオット:改定振付)を新国立劇場バレエ団が上演することが決定した、ということであろう。(7月24日~27日まで5公演) これは過去に新国立劇場バレエ団が行ってきた海外からの招待公演ではなく、入場料収入によって自主公演を行うと言う試みである。木下グループによる協賛があるとはいえ、なかなかチャレンジングな試みと言えるだろう。そこには、いくら語り尽くしても、やはり、実際にその舞台に立って呼吸してみなくては、世界のバレエを知ることはできない、と言う強い想いが吉田監督の胸中には常に去来していると言う。また、世界に誇れることができるコール・ド・バレエを擁する新国立劇場バレエ団を、もっともっと世界に知らしめたいとも語っていた。
そして「サー・ピーター・ライトの『ジゼル』を踊って育てられた」吉田監督自身には、現在もライト版『ジゼル』をレパートリーとしてしばしば上演しているロイヤル・バレエの本拠地に乗り込んでの上演であり、ディレクターとして、指導者としての真価を問われる大いなる挑戦となるだろう。私もかなり長きに渡ってバレエ公演を観続けてきたが、まさか、このような形で英国ロイヤル・バレエと日本の国立バレエ団が向き合う日が来ようとは想像だにしていなかった。芸術監督のケビン・オヘアも協力を惜しまなかったそうだ。つまり、それだけ全ての面で日本のバレエの力量はあがっており、英国のバレエ界もそれを認めている、と言うことであるのだから、ぜひとも、出藍の誉と評されることを心から期待している。

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