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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2016.02.10]

ソボレワのオデットとサファーノフのジークフリートの純粋な心を響かせ合った踊り

ミハイロフスキー劇場バレエ(〜旧レニングラード国立バレエ〜)
『白鳥の湖』A・ゴルスキー:振付/A・メッセレル:改訂演出/M・メッセレル再演出

『白鳥の湖』でオデット/オディールを演じたアナスタシア・ソボレワは、手脚が長く舞台映えがするダンサーである。脚は高く上がるし、長い腕を羽のように動かしもしたが、オデットとしての儚げな雰囲気はあまり感じられなかった。抒情的な役は得意でないのかも知れない。実際、オディールのほうが合っているらしく、芯の強さが演技に活きていた。だが“黒鳥のパ・ド・ドゥ”では32回転をゆっくりめのシングルで通すなど、大技を控えたようなのが惜しまれた。他の演目ではもっと強靭で凄みのある踊りをみせていただけに、燃焼不足の感がしたのである。これには、会場が巨大だったせいもあるかもしれない。ジークフリート王子を演じたサラファーノフからも、踊りの面では同様な印象を受けたからである。

tokyo1602d_3451.jpg ソボレワ、サラファーノフ
撮影/瀬戸秀美(すべて)

サラファーノフの振る舞いは、エレガントな王子様そのもので、友人たちには気さくに接し、王妃には恭しくふるまい、オデットとは純粋な心で響かせ合うなど、細やかに感情を表していた。けれど“黒鳥のパ・ド・ドゥ”などでは、踊りのスケールが会場の広さに飲み込まれてしまったようにみえたし、悪魔ロットバルトと戦って倒すシーンも、本来ならもっと迫力があったろうにと感じたのである。

ロットバルトのミハイル・ヴェンシコフや道化のデニス・トルマチョフ、小さい白鳥や大きい白鳥、各国の民族舞踊など、それぞれ遜色なく踊っていた。様々な群舞も見どころで、かつてはその群舞の精緻さには定評があったが、今回は手の向きや脚のポーズがわずかながら揃っていないシーンも見受けられた。2007年に現在の歴史的名称に改め、改革を進めてきたバレエ団だが、今また転換期にあるのかも知れない。というのも、2011年に芸術監督に就任した偉才ナチョ・ドゥアトは新風を吹き込んだものの、2013年にベルリン国立バレエの芸術監督に迎えられたため、現在、バレエ団は首席バレエ・マスターのミハイル・メッセレルの指導下にある。
ダンサーに目を向ければ、2011年に移籍してきたワシリーエフやサラファーノフらスターに続き、ソリスト・クラスのダンサーの移籍も相次いだようだ。メンバーが活性化しているのは喜ばしいが、あとは彼らをどのようにまとめあげ、バレエ団としてどのように飛躍を遂げるかだろう。今後の展開を見守りたい。
(2016年1月9日 東京国際フォーラム ホールA)

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撮影/瀬戸秀美(すべて)