ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2015.04.10]

品が良く可愛らしい志賀のスワニルダと闊達で楽しい橋本のフランツ、バレエ協会『コッペリア』

日本バレエ協会
『コッペリア』アルトゥール・サン=レオン:原振付、マリウス・プティパ:改訂振付(1884年)、セルゲイ・ヴィハレフ:プティパ版復元改訂振付

2015都民芸術フェスティバルのひとつとして日本バレエ協会による『コッペリア』が上演された。これはキーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)のプリンシパルとして踊り、その後ノヴォシビリスク・オペラ・バレエでバレエ・マスターを務めたセルゲイ・ヴィハレフがマリウス・プティパ版を復元振付したもの。ヴィハレフはそのほかにも『ショピニアーナ』『カルナヴァル』『シェヘラザード』『ペトルーシュカ』『ラ・バヤデール』『フローラの目覚め』などを復元振付けている。復元はアメリカのハーバート大学に保存されているステパノフ式の舞踊譜に基づいてほぼ忠実に行われ、初演時に上演時間の都合でカットされた部分も復元しているという。

tokyo1504d-01.jpg 志賀育恵、アレクサンドル・ミシューチン
撮影:根本浩太郎氏(スタッフ・テス)

キャストは志賀育恵のスワニルダ、橋本直樹のフランツだった。
開幕からまず、コッペリウスを登場させて笑いを誘い、観客の関心を喚起するなどディテールに配慮が行き届いた演出で、とにかく楽しい舞台だった。
ダンスはスワニルダとフランツの麦の穂の踊りなども良かったが、民族舞踊、マズルカ、チャルダッシュなどは何度みても色彩が鮮やかで心が自然とウキウキしてくる。また、第3幕の一連の時の踊りは、今日から見ればなんだか浮き世離れしたように感じられかねない意味や象徴が託されているのだが、眺めているだけでもとても癒される気持ちになった。
志賀のスワニルダは可愛いし、品の良い丁寧な踊りで受けを狙ったところがなく、気持ち良く観ることができた。ただ表現が曖昧に見えてしまうところが少しだけ見受けられたので、はっきりとした明解さもやっぱり必要だろう。有無を言わさず理解させてしまうようなエネルギーが少し不足しているかにも見えた。橋本直樹のフランツは、最後のグラン・パ・ド・ドゥで弾むようなヴアリエーションを踊って喝采を浴び、面目を保った。コッペリウスはアレクサンドル・ミシューチンだったが、意外に当たり前の演技に感じられて少々サービス不足の印象を残した。
作品全体では、古典作品の良さが感じられて、印象が収まるところにきちんと収まる安定感があって良かった。逆に言うと最近はそう言った作品に出合うことが少ないのかも知れない。
(2015年3月8日 東京文化会館)