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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.10.10]

ステップの1音1音に込められた情感が大きな命のリズムを刻んだ、熊谷和徳のソロ公演

KAZUNORI KUMAGSI 「HEAR MY SOLE」
「HEAR MY SOLE」熊谷和徳:構成・演出・振付

熊谷和徳が「HEAR MY SOLE」公演を今年の1月に続いて行った。1月公演は「DANCE TO THE ONE」。ニューヨークで活躍する女性タップダンサー&コレオグラファーのミシェル・ドーランスをゲストに招いてのコラボレーションだった。今回はソロ公演。
今回はシンプルに「大きくて真っ暗な会場にただひたすら自分の生命を一瞬でも思いっきり強く輝かせたい」と思ったからだという。サブタイトルには、リズムと言葉と空間が創り出すストーリー、とあるように「HEAR MY SOLE」では、タップを刻む音---つまりタップダンサーの「声」と空間にこだわった。空間は、国際的に活躍する建築家、田根剛に、音はテクニカル・ディレクターの遠藤豊、音楽制作のダイスケタナベとスタッフを充実させた。そしてさらにパーカッションにはラティール・シーを迎えて、アフリカンドラムの響きを加えた。

tokyo1410d_01.jpg photo/Makoto Ebi

子供たちが遊びに熱中しているような声が響いてきたな、と思ったら熊谷和徳が白いトップと黒いパンツで登場。ケレン味のない磊落な感じでタップダンスのステップが鳴り始めた。四方に短い柱が立つ。下手奥には砂がな悠久の時を示すように落ち続けている。古代の神殿を思わせるのような、深い奥行きがあり、大きな階段のあるセット。
様々な国の人々の映像が沙幕に映され、タップを踏む現実の熊谷と背景のセットと交わって不思議な空間的感覚を感じる。熊谷のタップダンスはやや控え目に始まって次第に鋭いリズムを刻む。ステップのスピードは速いが、1音1音に足先から迸る情感が色合いを創っている。カラー画が細かい濃淡の点の集合によって色彩を形作るように、タップのステップも1音ごとのニュアンスによって、世界を表現しているのだ。
階段の上からラティール・シーが姿を現し、アフリカンドラムを響かせると、また、音の世界が一変。タップの細やかなステップから構成される音とドラムのおおらかなリズムが、繊細に共鳴する。じつに素晴らしいリズム音の響宴が顕現した。

熊谷は、この公演を準備している時、タップダンスのアカデミー賞とも言われるフローバート賞を受賞した。この賞はタップダンスの先達はほとんど----グレゴリー・ハインズ、セヴィアン・グローバー、ジーン・ケリー、ニコラス・ブラザーズなどなど----が受賞している。日本人の受賞者は、もちろん、熊谷和徳が初めての授賞者である。これもまた、アーティスト熊谷にとってはひとつのプロセスとして、さらに豊かな実りをもたらす舞台へ進んで行ってもらいたいと思う。
(2014年9月12日 Bunkamura オーチャードホール)

tokyo1410d_02.jpg photo/Makoto Ebi tokyo1410d_03.jpg photo/Makoto Ebi