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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2014.10.10]

ワシーリエフの指導が完成度を高めた『ドン・キホーテ』、柄本弾のエスパーダが出色だった

東京バレエ団
『ドン・キホーテ』ウラジーミル・ワシーリエフ:新演出・振付

8月の華やかな〈祝祭ガラ〉に続き、東京バレエ団が〈創立50周年記念シリーズ〉の第6弾として、ボリショイ・バレエでかつて名ダンサーとして活躍し、芸術監督も務めたウラジーミル・ワシーリエフの演出・振付による『ドン・キホーテ』を上演した。プティパの原振付、ゴールスキーの改訂振付に基づくワシーリエフ版は、東京バレエ団により2001年に初演された。だが今回の記念公演に際して、ワシーリエフが監修・指導のため13年振りに来日し、さらに手を加えたという。
当初は、初日と3日目にエフゲーニャ・オブラスツォーワとデヴィッド・ホールバーグという人気のカップルが主演する予定だったが、二人とも膝の手術のため降板してしまい、ボリショイ・バレエのソリスト、アナスタシア・スタシュケヴィチとヴャチェスラフ・ロパーティンに代わったのは残念だが、息の合ったアンサンブルが楽しめた。なお、2日目の主役は東京バレエ団の看板ダンサーともいえる上野水香と柄本弾が務めた。

yokto1410c_03.jpg 上野水香、柄本弾  撮影/長谷川清徳

ワシーリエフ版は、ドン・キホーテがバジルに髭を剃らせている時、鏡に映ったキトリをドゥルシネア姫と思い込むシーンを織り込んだ独創的なプロローグで始まる。バルセロナの街角からジプシーがたむろする風車小屋や夢の場を経て、ドン・キホーテが公爵の館に招かれるまでを第1幕にまとめ、第2幕では居酒屋と公爵邸での結婚式の場、ドン・キホーテの旅立ちが描かれる。2幕構成のスピーディーな展開により息づくドラマ、多彩で盛りだくさんなダンス、主役や脇役だけでなく、つどう人々の間で交わされるやりとりなど、ワシーリエフ版の魅力がより濃厚になったのは、振付家自らが指導に当たったからだろう。
ボリショイ・バレエのゲストは東京バレエ団にすんなりと溶け込み、パワフルな踊りでドラマを紡いでいった。スタシュケヴィチは細身で脚が美しく、快活にキトリを演じ、夢の場では対照的に清楚なバレエを披露。きれいなグラン・ジュテや両手を腰に当てたままでグラン・フェッテを続けるなど、躍動感のある安定した演技を見せた。ロパーティンもダイナミックなジャンプや回転技をみせ、スタシュケヴィチを軽々と片手でリフトするなど、パートナリングもこなれていた。ただ、バジルとしてはもう少し弾けてもよかった。いずれにしても、ボリショイ・バレエのソリストの実力を改めて知らされた思いがした。

脇役を固めた東京バレエ団のダンサーたちも見応えがあった。その筆頭はエスパーダ役の柄本弾で、力強くケープを振り回し、豪快なジャンプで圧倒した。闘牛士たちの群舞には少しバラつきがあったが、それをも柄本がカバーした形だ。一方、ジプシーたちの男性群舞は勇壮かつエネルギッシュで、舞台を引き締めていた。ガマーシュを演じた梅澤紘貴は最初のうち硬かったが、場を追うごとに演技に滑稽さを増していった。ドン・キホーテは木村和夫、サンチョ・パンサは氷室友という布陣だった。女性では、メルセデスの奈良春夏が小粋な魅惑を放ち、若いジプシーの娘の高木綾が妖しい色香を漂わせて踊った。ドリアードの女王の渡辺理恵の端正な踊りや、キューピッドの松倉真玲の的確で愛らしい演技が華を添えた。夢の場の女性陣の群舞は綺麗にそろい、抒情性を紡いでいた。総じて、緻密に展開された完成度の高い舞台で、記念シリーズを飾るにふさわしい内容だった。
(2014年9月19日 ゆうぽうとホール)

yokto1410c_01.jpg スタシュケヴィチ、ロパーティン 撮影/長谷川清徳 yokto1410c_02.jpg カーテンコール  撮影/長谷川清徳