ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.08.11]

世界で日本で、踊る喜びにあふれて活躍する日本人ダンサーたち

「バレエ・アステラス☆2014〜海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて〜」
牧阿佐美:公演監督

今年で第5回を迎えた「バレエ・アステラス☆2014〜海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて〜」が開催された。外国のバレエ団で踊る日本人ダンサーが増えていることもあり、毎年、大きな注目を集める公演となっている。今回は新国立劇場バレエ研修所研修生に、国内のバレエ団所属のダンサー4組を加えた公演となった。指揮はデヴィッド・ガルフォース、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。

tokyo1408d_0043.jpg 「タリスマン」撮影/瀬戸秀美

オープニングは牧阿佐美振付、C.グノー曲の『ワルツ』。新国立劇場バレエ研修所の第10-11期研修生、予科生14人が踊った。見事なプロポーションの女性ダンサーたちの群舞、さらに男性ダンサー二人が加わったパ・ド・シスが主体の華やかな振付だった。
第一部は『タリスマン』のパ・ド・ドゥ(プティパ振付、ドリコ曲)で始まった。ワガノワ・バレエ・アカデミーに留学した経験を持つ、サンクトペテルブルク・バレエ・シアターの直塚美穂。そしてAMステューテンツやスターダンサーズ・バレエのスクールで学び、やはりワガノワに留学し、ポーランド国立ウッチ・バレエ団に入団した高谷遼が踊った。高谷の落ち着いた安定感のある踊りと直塚の伸びやかな動きが目を引いた。
『エスメラルダ』パ・ド・ドゥ(ベン・スティーブンソン振付、プーニ曲)は、牧阿佐美バレヱ団のペア、織山万梨子と中家正博が踊った。織山の堂々とした豪華な踊りが目を引いた。とくにエスメラルダというキャラクターを表す振りを良く理解して踊っていることがわかった。
『グラン・パ・クラシック』は、ロゼラ・ハイタワーのバレエ学校でモニク・ルディエールに薫陶を受けた、ボルドー・オペラ座バレエ団の米山実加とオランダ国立バレエ団で研修を受けたのちボルドーのバレエ団に加わった奥田丈智が踊った。二人ともしっかり正確に踊った。少し線が細く感じさせてしまうところがあったが、躍動感がうちに秘められているのだ。
ユース・アメリカ・グランブリでスカラシップを得て、オーストラリア・バレエ団に入団した近藤亜香と同じカンパニーのチェンウ・グオは『ラ・シルフィード』第二幕のパ・ド・ドゥ(A.ブルノンヴィル/E.ブルーン振付、レーヴェンショルド曲)。近藤は明るさの中に儚さを時折感じさせるシルフをうまく演じた。チェンウ・グオは喜びあふれるジェームスを弾むように踊って喝采をもらった。
ともにルディエールに学んだ経験をもつ、橋本清香と木本全優のウィーン国立バレエ団のソリストのコンビは『海賊』パ・ド・ドゥ(プティパ振付、ドリゴ曲)を踊った。橋本ははきりと明快な踊りで、木本は安定感のあるダンスだった。

tokyo1408d_0078.jpg 「エスメラルダ」撮影/瀬戸秀美 tokyo1408d_0146.jpg 「グラン・パ・クラシック」撮影/瀬戸秀美
tokyo1408d_0192.jpg 「ラ・シルフィード」撮影/瀬戸秀美 tokyo1408d_0245.jpg 「海賊」撮影/瀬戸秀美
tokyo1408d_0024.jpg 「ワルツ」撮影/瀬戸秀美

第二部は、東京シティ・バレエ団の『ロミオとジュリエット』バルコニーのパ・ド・ドゥ(中島伸欣振付、プロコフィエフ曲)。志賀育恵とキム・セジョンが踊った。この『ロミオとジュリエット』のバルコニーのパ・ド・ドゥは良い振付だと思う。初めて恋の当事者になったジュリエットが、まだ何が何だかわからないまま、ロミオにかき抱かれる。素朴な少女のピュアな気持ちを良く表わして、この後、彼女に襲いかかる過酷な運命と鮮やかなコントラストをなしている。
クルベリ・バレエ団の二人、パトリシア・バスケスと根本しゅん平は『SIDE』(根本しゅん平振付)を踊った。舞台中央で2本の光のラインが交わり、無音の中で男性と女性が踊る。動きそのものによって二人が離れ反発し、やがて同調していく。動き自体にフォーカスしたダンスだった。
ボストン・バレエ団の市河里恵と、同じカンパニー所属で牧阿佐美バレヱ団に何回かゲスト出演したことのあるアルタンフヤグ・ドゥガラーは『Rhyme』(プロトコフ振付、ショパン音楽)を踊った。初まりは無音でストップモーションを組み込んだ動き、やがて音楽とともに動き余韻を感じて同調する雰囲気のあるダンスだった。
小林紀子バレエ・シアターの島添亮子と冨川直樹は『シンデレラ』第二幕のパ・ド・ドゥ(ロドリゲス振付、小林紀子指導、プロコフィエフ音楽)。島添のまさに輝くようなシンデレラが素晴らしかった。彼女の踊りは繊細さと豪華さが見事に調和していて美しい。
今年の8月にともにABTから、ヒューストン・バレエ団への移籍が決まっている加治屋百合子とジャレッド・マシューズは『ジゼル』第二幕のパ・ド・ドゥ(コラーリ、ペロー、プティパ振付、アダン音楽)を踊った。加治屋の得意な曲だけあって、丁寧な踊り。冥界から愛する人を守り、やがて去って行くウィリを正確な動きで表現した。
そして新国立劇場プリンシパル・ダンサーのペア、米沢 唯と菅野英男は、『白鳥の湖』黒鳥のパ・ド・ドゥ。米沢 は少しほっそりした感じ。スケールの大きさを感じさせ、未知の可能性を感じさせる、見事な舞台だった。
フィナーレは『バレエの情景』グラズノフのOp.52第8曲より「ポロネース」を出演者全員が軽やかに踊って幕が下りた。1日だけの公演では、惜しまれる舞台である。
(2014年7月20日新国立劇場 オペラパレス)

tokyo1408d_0303.jpg「ロミオとジュリエット」撮影/瀬戸秀美tokyo1408d_0340.jpg「SIDE」撮影/瀬戸秀美
tokyo1408d_0382.jpg「Rhyme」撮影/瀬戸秀美tokyo1408d_0394.jpg「シンデレラ」撮影/瀬戸秀美
tokyo1408d_0438.jpg「ジゼル」撮影/瀬戸秀美tokyo1408d_0538.jpg「白鳥の湖」撮影/瀬戸秀美
tokyo1408d_0577.jpgフィナーレ 撮影/瀬戸秀美