ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2014.03.10]
去る2月28日、パリ・オペラ座のエトワール、イザベル・シアラヴォラがガルニエ宮で『オネーギン』のタチアナを踊り、アデュー公演を行った。5年間、エトワールを務めたシアラヴォラは、満員の観衆の喝采に包まれ。カーテンコールは果てることがないかのように続いた、という。パリの大村真理子さんが、エトワール引退公演を終えた後のシアラヴォラにインタビューして、アデュー公演の演目の選択や舞台上での心境、今後のことについてじっくりと語ってもらっている。
そしてこの『オネーギン』公演の当初、エルヴェ・モローの怪我のためそのシアラヴォラのパートナーを務めたのがエヴァン・マッキーだ。今月からエヴァン・マッキーがDance Cubeの読者の質問に直接お答えする「エヴァン・マッキー一問一答集」が始まった。これはDance Cubeの読者の質問に、現役ダンサーの中で理論派として知られるエヴァン・マッキーが、直接回答するもの。まだまだマッキーへの質問の応募も受け付けているので、ぜひ、ご参加いただきたい。エヴァンの回答は懇切丁寧で、魅力的。ユーモアのセンスも光り、語りかけてくるようだ。
シュツットガルト・バレエ団のバリバリの現役プリンシパル・ダンサーとの会話を心ゆくまでお楽しみいただきたい。

活き活きとしてアイディアと細やかな演出が光ったラトマンスキー版『くるみ割り人形』

American Ballet Theatre アメリカン・バレエ・シアター
" The Nutcracker" by Alexei Ratmansky
『くるみ割り人形』アレクセイ・ラトマンスキー:振付

アレクセイ・ラトマンスキー版『くるみ割り人形』は2010年12月23日にニュ−ヨークのブルクリン・アカデミー・オブ・ミュージックで初演された。今回のアメリカン・バレエ・シアター(ABT)の来日公演で日本初演された。

tokyo1403a_05.jpg セミオノワ、スターンズ(C) Hidemi Seto

幕に描かれた傾斜した可愛らしい家のひとつの部屋に灯りが点る。すると幕が開き、そこはパーティの準備に大忙しのキッチンだ。ソーセージが吊してあり、料理人たちがクリスマスの準備に走り回っている。一瞬、料理人たちが消えると、たちまち子供たちが現れて、無断でケーキのお味見。そして人々がパーティの会場に移ると、小ねずみや大きなねずみたちがパンやチーズに群がって活発に食い荒らす・・・。ドロッセルマイヤーが姿を現し、王子がねずみたちによって奇妙な姿のくるみ割り人形にさせられていることを暗示する。
いよいよクリスマスイブのパーティがはじまる。子供たちが元気いっぱい暴れ回り、それぞれ様々なプレゼントを貰ってさらにはしゃぎ回る。クララにはくるみ割り人形がプレゼントされた。するとドロッセルマイヤーの人形劇が幕を開け、コロンビーヌとハーレクインのパ・ド・ドゥや新兵と従軍商人の踊りを子供たちが囃す。ドロッセルマイヤーはクララにちょっとだけ、くるみ割り人形に変身していない王子を垣間見せてやる。
夜が来るとねずみたちたちが暴れ回り、7つ頭を持つねずみの王様が登場、我が物顔で歩き回る。そしてついに、くるみ割り人形が指揮する人形たちの軍隊とねずみの軍団の激しい戦争が始まる。ここはなかなかの迫力があった。くるみ割り人形とねずみの王様が一騎打ちとなり、わずかな隙を見つけてクララがねずみの王様に靴を投げつけ、やっと勝利。するとくるみ割り人形の魔法のくびきがとれて、凛々しい王子が現れた。
王子とクララが喜びを分かち合っていると、空からは美しい粉雪がキラキラと舞い降りてきて、雪の精たちの踊りがはじまる。王子と出会ったクララの喜びを楽しむように、素敵なダンスが繰り広げられた。やがて吹雪となるが、ドロッセルマイヤーに導かれて二人が金平糖の精の国に着く。そこではなんと乳母が金平糖の精になっていて出迎えてくれた。
花のワルツのソリストは蜜を求める蝶たち。アラビア、スペイン、中国、ロシア、ジンジャーおばさんの踊りもそれぞれに工夫を凝らし、愛らしいユーモアが盛り込まれたものだった。
ラストはクララが大人になった王女に、やはり大人になった王子が求婚して指輪を嵌める・・・すると、クララはベッドで目覚める。一人だった。周囲に王子の姿を求めるが、もちろん、見つけることはできない・・・

tokyo1403a_01.jpg エルマン・コルネホ tokyo1403a_03.jpg セミオノワ、スターンズ tokyo1403a_06.jpg ヴィシニョーワ、ゴメス
(C) Hidemi Seto (すべて)

ラトマンスキーの細やかな行き届いた演出で、人形と人形の精を巧みに入れ替えて、子供の心に映る憧れと幻想をたいへん楽しく表現している。フレッシュな活き活きとしたアィディアが随所に煌めいていて、使い古された表現はすべて見直され、新たに工夫が加えられている。
さすがに2幕は少々、凝りすぎていたように感じた。しかし、『くるみ割り人形』が圧倒的人気を集める国、アメリカではこのくらい変えないと通用しないのかもしれない。
王女になったクララをヴェロニカ・パールトが、王子になったくるみ割り人形をマルセロ・ゴメスが扮し、豪華絢爛に踊った。やはり、夢のクライマックスとなる、『くるみ割り人形』のグラン・パ・ド・ドゥは、音楽も素晴らしいのでクラシック・バレエの最も優れたもののひとつだろう。そう思わせるラトマンスキー版『くるみ割り人形』だった。加治屋百合子がくるみ割り人形の姉たちの役で踊り、小川華歩も雪の精で出演していた。
(2014年2月20日 Bunkamura オーチャードホール)

tokyo1403a_02.jpg 加冶屋、マシューズ tokyo1403a_07.jpg パールト、ゴメス
tokyo1403a_04.jpg パールト、ゴメス
(C) Hidemi Seto (すべて)