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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.09.10]

国際的な舞台で活躍する若いダンサーたちのエネルギー溢れるローザンヌ・ガラ2013

Lausanne Gala 2013 ローザンヌ・ガラ 2013
島崎徹 芸術監督 こどもの城 青山劇場

青山劇場がオープンしたのは1985年。その翌年に青山バレエフェスティバルが開催されたのだが、それ以前のこの地には都電の車庫があったことを知る人はもう少ないかもしれない。その後、1989年にローザンヌ国際バレエコンクールが東京で開催された。そして2004年からはローザンヌ・ガラが開催され、今回で4回目を迎えた。多くの海外で活躍する日本人バレエダンサーが出演して、活気のあるフェスティバルであったが、2015年には青山劇場の閉館が決まっており、今後の方向は未だ定まっていない。
今回のローザンヌ・ガラは3部構成のプログラムが組まれていた。

tokyo1309c_0023.jpg 河野舞依、ルカス・スラヴィツキー
撮影/瀬戸秀美

まずPART 1 の開幕は、ミュンヘン・バレエのソリスト、河野舞依。ローザンヌではスカラシップとオーディエンス賞を受賞している。やはりプリンシパルのルカス・スラヴィツキーと、アシュトン振付の『春の声』を花弁を蒔きながら、シュトラウスの曲とともに踊った。若草が染められた衣裳も爽やかで春の音を聴いた、と思った。今年のローザンヌ国際バレエコンクールに入賞してスカラシップを得た山本雅也は『ラ・バヤデール』のヴァリエーションを踊った。そして映画『ファースト・ポジション』に出演して世界的に知られるようになった、みこ・フォガティー。スイス国籍で参加したローザンヌでベストスイス賞を受賞した。みこは『パキータ』のヴァリエーションを踊った。当然といえば当然だが、すっかりプロのダンサーとして踊っていて、いわれもなく安心させられた。丁寧にきめ細やかな踊りだった。
ローザンヌでエスポワール賞を受賞し、英国ロイヤル・バレエ・スクールからバーミンガム・ロイヤル・バレエ団に入団、一時はアンヘル・コレーラのバルセロナ・バレエ団で踊ったが、昨年バーミンガムに復帰し、プリンシパルに昇格した平田桃子。やはりバーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、ジョゼフ・ケリーと『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥ。安定感のあるペアだった。
来年の2月に来日するABTのソリスト加治屋百合子はスカラシップを得て、カナダ国立バレエ学校に学んだ。やはりABTのスタジオカンパニー出身のソリスト、ジャレッド・マシューズと『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥを踊った。加治屋の心のこもった丁寧な踊りが印象に残る。

tokyo1309c_0025.jpg 山本雅也 撮影/瀬戸秀美 tokyo1309c_0047.jpg みこ・フォガティー 撮影/瀬戸秀美 tokyo1309c_0076.jpg 平田桃子、ジョセフ・ケリー 撮影/瀬戸秀美
tokyo1309c_0295.jpg 小㞍健太、島地保武 撮影/瀬戸秀美

PART 2 はネザーランド・ダンス・シアターで踊った小㞍健太とザ・フォーサイス・カンパニーで踊る島地保武は、共同で振付けた『Shaft』(音楽はヴィヴァルディ『四季』を編曲)。二人ともじつによく動ける。一体になったり離れたり様々な表情を活き活きと見せた。
ローザンヌでプロフェッショナル賞とコンテンポラリー賞を受賞して英国ロイヤル・バレエ団に入団、ファースト・ソリストとして『ラ・バヤデール』のニキヤや『不思議の国のアリス』アリスなどを主演している崔由姫と、やはりプロフェッショナル賞を受賞して英国ロイヤル・バレエ団に入団、ファーストソリストとしてマクミラン版『パゴダの王子』やライト版『くるみ割り人形』に主演している平野亮一。このロイヤル・バレエ団のペアは、新進気鋭の振付家リアム・スカーレットの『アスフォデルの花畑』第2楽章を踊った。アスフォデルの花とはユリ科の花で、黄泉の国に咲くとも天国に咲くとも、不死の花などさまざまに謂われる花。この曲でも、もうひとつの世界を表わすかのような美しいシルエットのシーンから始まり、黄昏の時の中で、繊細な動きが流麗に展開した。崔由姫と平野亮一のダンサーとしての感受性が伝わってくる印象深い舞台だった。
続いてローザンヌのスカラシップ賞により英国ロイヤル・バレエ・スクールに留学し、現在は新国立劇場のプリンシパルを退き、オノラブル・ダンサーとして踊る川村真樹と、新国立劇場バレエ団で活躍した後、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団に復帰した厚地康雄が『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥを踊り喝采を浴びた。さらにローザンヌでスカラシップ賞を受賞の後、シュツットガツト・バレエ団に入団、現在はベルリン国立バレエ団とK バレエ カンパニーのプリンシパルを務めるSHOKOと、やはりベルリン国立バレエ団のプリンシパル、ヴィスラウ・デュデックが、『白鳥の湖』第2幕グラン・アダージオを、PART2のとりとして堂々と余裕をもって踊った。

tokyo1309c_0926.jpg 「ラフマニノフ ピアノコンチェルト 第3番」
撮影/瀬戸秀美

そしてPART3はウヴェ・ショルツ振付の『ラフマニノフ ピアノコンチェルト 第3番』。2011年のスタジオアーキタンツの10周年記念公演として日本初演され、評判になった作品だ。基本的には世界的に知られたゲバントハウス管弦楽団の拠点であるライプツィッヒの文化的背景に基づいて創られた、オーケストラとコラボレーションンする作品である。
冒頭、暗いステージに立つ一人にピンスポットを当て、舞台全体の光が満ちると数十名のコール・ド・バレエがポーズとって並んでいる、というインパクトの強いオープニング。しかし、これは他の例えば『ベートーヴェン交響曲第7番』とも同工異曲の手法である。
衣裳デザインもウヴェ自身が手掛けており、レオタードには抽象的な模様を描き、ブラウン、ダークグリーン、淡い黄色と使い分けて、目に鮮やかな印象を組み立てている。ノイマイヤーもそうだが、こうした全体のヴィジュアルの構想はセンスもよく優れている。しかしだからといって「音楽が見える」などと大騒ぎするにはあたらない。
動きも激しく変幻するピアノ曲の音を細かく拾って構成しているのには感心したが、やはり一部には組体操的に見えなくもない部分もあった。
ダンサーは酒井はな、西田佑子、奥村康祐、藤野暢央、八幡顕光、江上悠ほか。酒井と奥村、西田と藤野のカップルがリードする。ダンサーはウヴェの速い動きの展開をまったく滞ることなく、見事に共振して鮮烈な舞台を創った。
(2013年8月17日 青山劇場)

tokyo1309c_0534.jpg 加治屋百合子、ジャレッド・マシューズ
撮影/瀬戸秀美
tokyo1309c_0343.jpg 崔由姫、平野亮一
撮影/瀬戸秀美
tokyo1309c_0874.jpg 酒井はな、奥村康祐
撮影/瀬戸秀美
tokyo1309c_0409.jpg 川村真樹、厚地康雄 撮影/瀬戸秀美 tokyo1309c_0377.jpg 崔由姫、平野亮一 撮影/瀬戸秀美