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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.06.10]

古典バレエとコンテンポラリーな作品が楽しめたラフィネ・バレエコンサート

東京シティ・バレエ団
ラフィネ・バレエコンサート 『ラ・バヤデール』より影の王国 安達悦子:再振付、『雨の下の<私たち>』中島伸欣:振付ほか

ラフィネ・バレエコンサート 2013は、東京シティ・バレエ団の創立45周年記念公演シリーズ III として開催された。古典バレエとコンテンポラリーなバレエ作品によるプログラム構成である。
まず、カンパニーの芸術監督、安達悦子がマリウス・プティパの振付に基づいて再振付けした『ラ・バヤデール』より影の王国。東京シティ・バレエ団として初演となる演し物だ。

tokyo1306e02.jpg 『ラ・バヤデール』撮影:鹿摩隆司

『ラ・バヤデール』が全幕で上演される場合は、ソロルが愛するニキヤを見殺しにした罪悪感から逃れるために、阿片を吸引すると、ヒマラヤの山々から舞い下りてくるニキヤの姿が何重にも重なって見える、といった設定になっている。ここではそういった物語的な背景は語らず、バレエ・ブランの独立した作品として振付けられている。
闇の中から緩やかな斜面をつかって白いチュチュをまとったダンサーたちが次々と現れる。夢の時間を表わすかのような独特のリズムが幻想の世界へと誘う。中森理恵のニキヤとキム・セジョンのソロルは白い布を使った踊り。夢の中で二人の魂が繋がっていることを表わしている。大石恵子、清水愛恵、斎藤佳奈子が三つのヴァリエーションを踊った。全体にゆったりとした時間の流れを保ってバランスが良く、安定感のある踊りだった。
続いてバレエコンサートとして3作品が上演された。
最初は東京シティ・バレエ団の中で、積極的に振付活動を行っている大石恵子振付の『Gossip』。シティ・バレエ・サロンで発表した「つながり」をテーマとした作品を発展させた、という。マイケル・ナイマンのピアノを使って、若々しく活発に踊った。シャボン玉を飛ばしたり、頭に袋をかぶせるなどの表現を使って、それぞれの意志や思惑を離れて膨らんだりはじけたりする人間関係の姿を描いた。身近で実感的な素材をとりあげたダンスだった。
『The Secret Room』は、韓国の大学の舞踊学科で学び、ダンサーとして踊りながらいくつかの創作作品を発表し、韓国や日本のコンクールでも受賞しているキャリアを持つソ・ユンソクの振付作品。夢の中の潜在意識に入り込んでアイディアを盗む能力をもつ企業スパイを描いた映画『インセプション』からインスピレーションを得た作品だ。客席の中から登場した女性が男の写真を掲げると、女性の自我が動き始め、夢の中の男との踊る。男を背景に閉じ込め、女性は現実の男とデートする・・・。岡博美、石黒善大が踊った。片面づつ異なった仮面や暗幕の上げ下げを巧みに使って、夢の中の女性の姿と現実の女性を描き分けている。フィリップ・グラス他の音楽を編成して、速いテンポでシーン転換を行うなど工夫を凝らした演出だった。ただ素材はどちらかというと演劇的なものではないか,とも思った。

tokyo1306e06.jpg 『雨の下の<私たち>』撮影:鹿摩隆司

バレエコンサートの3作目は、ベルリン国立バレエ団やクロアチア国立劇場バレエ団ほかに振付を提供し、オペラ座のオーレリー・デュポンにもソロを振付けているレオ・ムジックの新作『crash the lily』が世界初演された。ケイト・ブッシュの「MOVING」(「嘆きの天使」)の詩にインスパイアされたデュット作品。音楽はヴィヴァルディ。佐合萌香と玉浦誠が踊った。背景をキラキラ輝やかせ、速い大きな動きの組み合わせで流動的な抒情性を詠った美しい踊りだった。
最後に上演されたのは,東京シティ・バレエ団を本拠として振付創作活動を展開している中島伸欣の振付・構成による『雨の下の<私たち>』。
すべての人々に降り掛かる雨、いつ晴れるのか。客席からも舞台の上にもカラフルな雨傘をさした人たちが、行き会いながら踊る。その雨の下、様々な人々が繰り広げる情景をスケッチしたダンス。志賀育恵、黄凱ほかが軽やかに踊った。雨傘が感じさせるリズムが活かされた舞台だった。ラストには小鳥のさえずりも聴かれた。
(2013年5月26日 ティアラこうとう 大ホール)

tokyo1306e01.jpg 『ラ・バヤデール』撮影:鹿摩隆司 tokyo1306e03.jpg 『crash the lily』撮影:鹿摩隆司
tokyo1306e04.jpg 『Gossip』撮影:鹿摩隆司 tokyo1306e05.jpg 『The Secret Room』撮影:鹿摩隆司
tokyo1306e07.jpg 『雨の下の<私たち>』撮影:鹿摩隆司 tokyo1306e08.jpg 『雨の下の<私たち>』撮影:鹿摩隆司