ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.04.10]

日本のコンテンポラリー・ダンスに可能性を感じさせてくるダンス

新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2013」
『The Well-Tempered』中村恩恵:振付『O Solitude』『Who is "Us"?』中村恩恵:演出・振付、『solo for 2』金森穣:振付

中村恩恵は2007年にヨーロッパから日本に活動の拠点を移し、多くの振付作品を発表している。さすがにキリアンなど優れてアーティステイックな舞踊家とともに仕事をしてきたからだろうか、彼女の踊りに現れる身体の動きはたいへん美しい。それはチャイコフスキーなどの19世紀の音楽ばかりではなく、ライヒなどのコンテンポラリーな音楽ともコラボレーションを重ねて研かれ、精錬されて創られた動きである。そしてその動きを編成して,表現を創るテクニックもまた具象的ななものであれ抽象的なものであれ、輝いて見える。

tokyo1304h_0170.jpg 『The Well-Tempered』撮影:鹿摩隆司

今回の「DANCE to the Future 2013」では、中村の作品を一つの新作を含む3作品上演した。最初に上演されたのは『The Well-Tempered』。これは何度か再演され、手を加えられた作品だ。第1部(音楽、アルボ・ペルト)と第3部(音楽、バッハ)を踊るカップル(湯川麻美子、山本隆之)とそのほかの関係が描かれる。第2部(音楽、スティーブ・ライヒ)では群舞が踊られ、カップル自身の関係が動きの中に展開する。第3部になると、カップルが絡み合い、デュエットと群舞が踊られる。カップルと集団、個と全体のハーモニーを求めたダンスと思われる。
『O Solitude』はヘンリー・パーセルの音楽に振付けられたソロ。宝満直也が中村の動きの特徴がよく捉えて踊った。
『Who is "Us"?』は今回初演された新作だ。チャールズ・アィヴズ、アンリ・デュティユー、フランツ・リスト、マックス・リヒターという4人の音楽家の曲を使い、4人のダンサーが踊った。福岡雄大が二つのやや長めのソロを踊り存在することの神秘を表わす。八幡顕光、長田佳世、江本拓がデュオをくり返し踊る。福岡のソロが力強く、見応えがあったのだが、照明が暗くさらに衣裳も黒かったので、動きの輪郭が少々、捉えにくかった。

tokyo1304h_1361.jpg 『solo for 2』撮影:鹿摩隆司

金森穣が振付けた『solo for 2』は、<バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ>に振付けたもの。このダンスも何度が再演を重ねて好評だと聞く。
オープニングの微妙な幕のあげ方から、歪んだ椅子とダンサーの配置、その椅子からダンサーが立ち上がるタイミング、さらにはエンディングの幕の下ろし方まで、演出はほぼ完璧とも思われた。スピーディな動きやアクセントを付ける動きも見る目にも美しい動きで、緻密に構成されていた。動き自体は金森がいうように「アカデミック」でオーソドックスなもの。常に金森の下でそのメソッドを修得しているダンサーが踊る場合と、今回のように通常はクラシック・バレエをベースにして踊っているダンサーが踊る場合は、やはり印象は異なった。そこにまた、この作品のおもしろさを感じることができる。
米沢唯がスケールの大きな動きで目を惹いた。ただ、私はやはり、小野絢子の柔らかい身体が創る動きに、魅力を感じた。クラシック・バレエの要素とコンテンポラリー・ダンスの要素が、バランス良く感じられたからだ。
4曲を観て、中村が創る動きと金森が創る動きの特徴が、それぞれに美しく感じられ、日本のコンテンポラリー・ダンスの "Future" に新しい可能性が開花する日がくるのではないか、といささかの興奮を覚えた。
(2013年3月26日 新国立劇場 中劇場)

tokyo1304h_0217.jpg 『O Solitude』撮影:鹿摩隆司 tokyo1304h_0283.jpg 『Who is “US”?』撮影:鹿摩隆司