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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.04.10]

原典を尊重した優美な振付によるクラシック・バレエ、牧バレヱ『眠れる森の美女』

牧阿佐美バレヱ団
『眠れる森の美女』テリー・ウエストモーランド:演出・振付(M.プティパによる)

牧阿佐美バレヱ団の『眠れる森の美女』はテリー・ウエストモーランド版をレパートリーとしている。このバレエは、フランス ルイ14世時代の宮廷文化を背景に、善と悪、光と闇、生と死の対立を、シャルル・ペローの有名な童話に託して描いている。このウエストモーランド版は、クラシック・バレエの黄金時代にプティパとチャイコフスキーによって創られた原典に最も忠実なヴァージョンである。それは、今回のプログラムの「覚え書き」にも、縷々述べられている。
実際、ウエストモーランド版は少々古風な印象がないわけではないが,がっしりとした基本構造に支えられて、優美に佇む古典建築の寺院のような、揺るぎない美しさがある。特にプロローグはヴォリュームたっぷりのクラシック・バレエだった。リラの精を中心とした妖精たちとカバリエールたち、リラの精のお付き、妖精の小姓、それを取り巻く多くの貴族たちが、アンサンブルもソロも群舞もたっぷりと豊富なダンサーによって踊る。優れた男性ソリストが豊富な牧阿佐美バレヱ団ならではの舞台を見ることができた。

tokyo1304c_01.jpg 撮影/鹿摩隆司

オーロラ姫はアナスタシア・コレゴワが踊った。ワガノワ舞踊アカデミー出身だが、他のカンパニーで踊った後にマリインスキー・バレエ団に入団し、現在はファーストソリストとして踊っている。長身でプロポーションは申し分なく、良くシェイプ・アップされた身体で落ち着いて踊った。ただ日本人のカンパニーで踊っているからだろうか、この物語の設定の16歳よりもやや成熟した女性に見えてしまう。全身で生き生きとした若さを表現しようとしていたが、表情の変化が少し弱かったのでそう見えたのだろうか。初々しい若さが更にいっそう表現されると、一段と魅力をますのではないかと思われた。またゲスト出演だからやむを得ないかも知れないが、コール・ド・バレエとの親和性がやや弱く感じられた。これは豊富なキャリアを重ね、マリインスキー・バレエ団の女王ロパートキナともパートナーを組んで踊るイーゴリ・コルプと比べるとそう見えてくる。フロリモンド王子を踊ったコルプは、動きそのものにもニュアンスをこめて表現も分かり易く、終始舞台全体に気を配って慎重に踊った。恐らく最近ではあまり『眠れる森の美女』の全幕は踊っていないのではないだろうか。しかし、さすがはマリインスキー・バレエ団のプリンシパル・ダンサーである。作品全体の流れをバランス良く完結させるように、舞台をしっかりと導いた。
フロリン王女とブルーバードを踊った青山季可と清瀧千晴が、のびのびとした踊りを見せて観客の喝采を受けた。清瀧は若手男性ソリストの中では、ややリードしているのではないか。近い将来、バリバリ主役を踊り大活躍する日を楽しみにしている。
(2013年3月8日 ゆうぽうとホール)

tokyo1304c_02.jpg 撮影/鹿摩隆司