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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2013.02.12]

ソリストの充実ぶりを感じさせる華やかな『くるみ割り人形《お伽の国》』

貞松・浜田バレエ団
『くるみ割り人形』貞松融/浜田蓉子:演出、貞松正一郎/長尾良子:振付

平成24年の新国立劇場地域招聘公演は、貞松・浜田バレエ団のAプロ『くるみ割り人形』とBプロはキリアン『6DANCES』、森優貴『Memoryhouse』、ナハリン『DANCE』だった。

tokyo1302i_0770.jpg 撮影:正路隆文(テス大阪)

『くるみ割り人形』は、貞松・浜田バレエ団では二つのヴァージョンをレパートリーとしている。今回公演では《お伽の国》が踊られた。この演目は昨年クリスマス・シーズンに神戸でも上演され、大阪のすずなさんがレポートしているが、新国立劇場でも上演されたの機に、東京人に関西のバレエがどのように見えるかといった興味も含めてレポートさせていただく。
まず、幕前で貞松融代表自らが登壇して作品解説。バレエのマイムについて、実際の手話の表現を見せながらバレエと比較して説明した。手話の表現は言葉を使わないダンスと通底するところもあり、しばしばコンテンポラリー・ダンスにアレンジされて登場することがある。開幕前の解説は、最近、どこのカンパニーでもやっていることだが、手話を比較して見せることでいっそう分かり易くなった。関西の人たちはこうしたことがなかなか上手い。軽く笑いをとりながら『くるみ割り人形』で使われているマイムをほとんど説明し、しかも手話と一緒に通して演じてみせるという念の入れようだ。ただマイムは本来、音楽とともに演じられるもので、意味だけに偏らず音楽との関わりを忘れないようにしたい。
ドロッセルマイヤーに貞松正一郎、グラン・パ・ド・ドゥには瀬島五月とアンドリュー・エルフィンストン、クララに上村未香、くるみ割り人形に水城卓哉、雪の女王に山口益加、雪の王に武藤天華。他にも恵谷彰、佐々木優希、竹中優花など関東でもよく名の知られたダンサーが出演している。カンパニーのソリストの充実ぶりはたいしたものだ。特に最近、関西から良いダンサー(特に男性)を輩出していることが、このキャスティングをみただけでもわかる。
第一幕から目に華やかな衣裳とセット。登場するダンサーの人数も多いから舞台に活気がある。セット、衣装など可能なものはすべて、もちろん踊りも音楽も、華やかに観客の目を奪うものに仕上げられている。
このヴァージョンは、従来のワイノーネン版とイワノフ版の良いところが組み合わされて構成されている振付だ。クララやフィリップは大人のダンサーが子供を演じ、グラン・パ・ド・ドゥはお伽の国の王と女王が踊った。
とりわけ雪の国の踊りが素晴らしかった。ここでも雪の王と女王が踊ってソリストの豊富さを印象づけた。クララと王子が乗る橇は、サンタクロースが御者を務め、可愛いトナカイ二頭で曳いている。のどかでいかにもお伽の国へ向かうのに相応しい雰囲気が醸されたいた。
ダンサーが揃っている上にカンパニー全体の観客へのサービス精神が旺盛だから、踊りだけでなく様々な楽しみが用意されている舞台だった。
(2013年1月12日 新国立劇場 中劇場)

tokyo1302i_1605.jpg 撮影/岡村昌夫(テス大阪) tokyo1302i_0730.jpg 撮影/岡村昌夫(テス大阪)