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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.08.10]

登場人物の把握に優れたダンサーたちによる楽しい舞台だった『真夏の夜の夢』

東京シティ・バレエ団
中島伸欣 台本・演出、中島伸欣、石井清子 振付『真夏の夜の夢』

東京シティ・バレエ団の『真夏の夜の夢』は、2003年に提携したティラこうとうで初めて上演した全幕バレエだが、とても楽しい舞台に仕上がっている。
特に第2幕の構成は、無駄がなく密度があってかつ物語の展開自体が活き活きとしていて、心楽しく見られるバレエだった。

tokyo1208f01.jpg 撮影/鹿摩隆司

パックの気まぐれから魔法で頭をロバに変えられてしまったボトムと、惚れ薬を垂らされたティターニアが添い寝しているのを妖精たちが発見して騒ぎ出すシーン。そこから、オベロンがパックにもう惚れ薬の魔法を解いてやるように命じるまでは、一気に踊りがスムーズに流れて破綻がない。妖精たち、パックとその手下たちの動きもバランスが良い。無事、元の莢に収まった二組の恋人たちの喜びの踊りは、何事もなかったかのようにこだわりなく愛し合っていて気持ち良かった。
そしてラストのグランド・フィナーレともいうべき仲直りしたオベロンとティターニアの踊りも、コール・ド・バレエのフォーメーションと主役の動きが上手く構成されていて、神々の踊りらしく荘厳な気分も現れていた。
パックを踊った岸本亜生(玉浦誠とWキャスト)は、ロシアのワガノワ舞踊アカデミー留学のキャリアを生かして好演だった。カーテンコールでみたらオベロンの黄凱より背が高くみえたが、パックを踊っている時は俊敏に動いていたからか、もっと小柄に感じていた。表現力もあるし手下たちとも気が合って悪戯を楽しんでいる余裕もみられた。もう一人、ボトムを踊った佐藤雄基が良かった。若生加代子が踊ったティターニアに誘われて恐る恐る洞穴のベッドに向かいながら、ちらりと「ついてる!」とほくそ笑むあたりと、目覚めたティターニアに、突然、邪険につきとばされた後も、思い出してニタリとするあたりに感じがでていた。この舞台にニュアンスを与えていたのはまちがいない。

tokyo1208f05.jpg 撮影/鹿摩隆司

志賀育恵のハーミア(橘るみとW)、小林洋壱のライサンダー(春野雅彦とW)、大石恵子のヘレナ(五十嵐妙子とW)、チョ・ミンヨンのディミトリウス(キム・セジョンとW)のこんがらがる2組のカップルも闊達に踊ったし、ほかの出演者もそれぞれに役の特徴をしっかりと把握して踊っていたので、メンデルスゾーンのお馴染みのメロディとともに良質のユーモアを楽しむことができた舞台だった。惜しむらくは振付家も指摘しているように、ティアラこうとうの舞台が少々手狭で、セットもあったので群舞がスペース的に窮屈に感じられたこと。機会があれば、新国立劇場の中劇場あたりで、スケールアップして上演するとさらにマジカルな気分が盛り上がるかも知れない。やはり、作品と舞台のスケールはそれに見合ったものが望ましいのである。
(2012年7月7日 ティアラこうとう大ホール)

tokyo1208f02.jpg 撮影/鹿摩隆司 tokyo1208f03.jpg 撮影/鹿摩隆司
tokyo1208f04.jpg 撮影/鹿摩隆司 tokyo1208f06.jpg 撮影/鹿摩隆司
tokyo1208f07.jpg 撮影/鹿摩隆司 tokyo1208f08.jpg 撮影/鹿摩隆司