ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.03.12]

これでいいのだ! 珍しいキノコ舞踊団の最新作『ホントの時間』

伊藤千枝 振付・構成・演出『ホントの時間』
珍しいキノコ舞踊団

珍しいキノコ舞踊団の公演は、2010年『私が踊るとき』以来なのだが、ずいぶん久しぶりのような気がした。やはり知らないうちに「キノコ気分」を味わいたいと感じているからなのだろう。
今回の舞台は『ホントの時間』。まずは振付・構成・演出の伊藤千枝が登場して、幕前のエプロンで『天才バカボン』の歌を口ずさみながら踊る。開幕前の幕前で踊るということが、客席と振付家のコミュニケーションのポイント。開幕前の客席に、熊みたいな謎の生き物を座らせておいたこと、ダンサーが何回も客席で踊ったりすることと同じで、ステージだけで踊って盛り上がっても、それはホントの時間じゃない、とキノコはいつも思っているようだ。

tokyo1203k_7947.jpg 撮影:片岡陽太

幕が開くと大中小の三つの手作りふうのゲートがあるが、それはほとんど意味はなく、次々と女の子的なダンスが展開される。ほとんどの踊りが舞台前面を中心に繰り広げられ、その背後の薄暗い部分には熊みたいな謎の生き物がうずくまっていた。
ダンサーは伊藤千枝の他5人だが、この熊みたいな謎の生き物も時折、参加する。客席の通路も頻繁に使われ、大小5つのミラーボールがフル回転、銀色のヒラヒラのホリゾントと舞台全体を明るく輝かす照明などが様々なヴィジュアルを作りだし、間断なくダンスが続く。「人間も動物だったことを思い出した。これでいいのだ」と赤塚哲学に全面的に共感するダンスである。
特に二部構成にしてあるわけではないが、前半は個人的な気持ちを踊り、後半は全員で踊り、身体を音楽に乗せて解放する楽しさを全開にして一気に踊りぬいた。中でもアカペラで一人対五人でリズムをとり、役割を交代しながら全員が一体となって踊った長いシーケンスは見応えがあった。こうした緊張が必要なムーヴメントのなかにもユーモラスな人間的魅力が、常に盛り込まれているところが、珍しいキノコ舞踊団の舞台が長い人気を得ている秘密だろう。
これからも末長く楽しませていただきたい、と思った。
(2012年2月25日 世田谷パブリックシアター)

tokyo1203k_1118.jpg 撮影:片岡陽太 tokyo1203k_7079.jpg 撮影:片岡陽太
tokyo1203k_2741.jpg 撮影:片岡陽太 tokyo1203k_3343.jpg 撮影:片岡陽太
tokyo1203k_3677.jpg 撮影:片岡陽太 tokyo1203k_4070.jpg 撮影:片岡陽太
tokyo1203k_7692.jpg 撮影:片岡陽太 tokyo1203k_2011.jpg 撮影:片岡陽太