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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.02.10]

魔法と現実が幻想世界で交錯する魅力的な『シンデレラ』

望月則彦 再演出、再振付、ロスティラス・ザハーロフ原振付によるスラミフ・メッセレル再振付『シンデレラ』
谷桃子バレエ団

谷桃子バレエ団の『シンデレラ』は、ロスティラス・ザハーロフ版に基づいてすらアサフ・メッセレルが1991年に振付けた。その後、95年、99年と再演されている。今回は初演から20年ぶりの再演となり、芸術監督の望月則彦が再演出、再振付を行う。
全体を通してみて、音楽と動きの表面的な一体感ではなく、曲想と踊りが表現するものが融合することを目指した振付を心がけている、と感じられた。プロコフィエフのような音の変化が激しい音楽には、そのような点に留意して振付けるほうが自然な印象の舞台を創ることができるのではないだろうか。音楽の曲想のコアまで迫ることなく、表面的に戯画化した動きで振付を構成すると、動きが軽すぎてどうしても退屈に感じられてしまう。それがプロコフィエフの、特に『シンデレラ』の曲によって舞踊化する場合の難しいところだろう。

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第1幕でシンデレラがさまざまな空想を巡らすソロヴァリエーションなどは、繊細でロマンチック、じつに素敵な踊りだった。また、音もなく侵入してきた魔法使いの老婆がパンをもらって暖炉から消えるシーンなどは、さりげなく軽いユーモアを感じさせて、じつはなかなか効果的な演出アイディアとなっている。
装置にも演出意図が良く行き届いていて、全体にきらびやかでまさに魔法によって現れた非現実的な世界が作られた。
三木雄馬はすっきりとした爽やかな王子ぶり。身軽でもっともっと踊れそうな余裕綽々にみえる舞台だった。ロシアのバレエ団で踊った経験が生きていたのかもしれない。
シンデレラ役の佐藤麻利香はカナダやアイルランドで踊ったキャリアをもつ。今回が全幕主役デビューだが、落ち着いて見事に踊りきった。少し緊張気味だったのでまだまだ完全に彼女の実力を出しきったとは言えないと思った。さらに踊り込んでいけば、もっと彼女らしい表現が生まれてくる。華があるダンサーだけに大いに期待したい。
そして素晴らしかったのは、伊藤範子と高部尚子が踊った義理の姉妹。とても良いテンポで音楽から出過ぎず離れ過ぎず、義母の樫野隆幸ともども見事にアンサンブルを奏でた。このバレエ団らしいソフィストケイトされた、しかし気持ちのしっかりと入った表現が創られていたと思う。
(2012年1月7日 新国立劇場 中劇場)

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