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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.10.11]

3人の女流振付家が競作した、谷桃子バレエ団の創作バレエ公演

高部尚子 振付『Fura Wara フラ*ワラ』日原永美子 振付『オディールの涙』木佐貫邦子 振付『T - s c a b』
谷桃子バレエ団 創作バレエ・13

今回の谷桃子バレエ団の創作バレエ公演は、女流振付家3人の作品を上演した。ゲスト振付家に木佐貫邦子を招いて、谷桃子バレエ団の高部尚子と日原永美子が創作バレエを競作した。
高部尚子の新作の『Fura Wara フラ*ワラ』というタイトルは、花々が咲き誇っているイメージを表した彼女の造語だという。べッリーニの『Night Shadow』を使って振付けたシンフォニック・バレエだった。
女性は大輪の花を付けたブルーのチュチュ、男性も花をあしらったコスチュームを着け、プリンシパルダンサーの永橋あゆみと斎藤拓を中心にソリストとコール・ドが加わり、計26名のダンサーが舞台空間いっぱいを踊った。10シーンで構成されていたが、前半はフォーメーションが変化に富んでいて、ちょっとユーモラスでかわいらしいポーズをアクセントにしてみせて魅力的だったし、プリンシパルのデュオも素敵だ。後半の速い展開が大きな広がりを感じさせ、全体で高度なバランスを保持した作品に仕上がっていて感心した。

tokyo1110b01.jpg 「Fura Wara フラ*ワラ」撮影:スタッフ・テス 飯田耕治 tokyo1110b02.jpg 「Fura Wara フラ*ワラ」撮影:スタッフ・テス 飯田耕治
tokyo1110b05.jpg 「オディールの涙」
撮影:スタッフ・テス 飯田耕治

日原永美子『オディールの涙』は、タイトル通りオディールを主人公にして『白鳥の湖』を描いたもの。2005年に創った『Go with the flow』をチャイコフスキーの音楽によって発展させた舞台だ。
悪魔ロットバルトがオディールを王子にけし掛けるパ・ド・ドゥから始まり、<流れを創る者>に導かれて、オデットと王子、オディールと王子、ロットバルトと王子、ロットバルトとオデットなどのパ・ド・ドゥがそれぞれ踊られる。オデットはロットバルトの魔法により盲目にされ、光りを失ってしまう。王子を深く愛したオディールは、王子を倒そうとする悪魔ロットバルトを倒して殺してしまう。しかし、王子には拒否される。「湖」はオデットの母の涙ではなくて、オディールの心から止めどなくにじみ出た涙だという。
登場人物の心を見通す神のような存在の<流れを創るもの>と、悪魔ロットバルトが対立する世界。そこは善と悪、光と影が葛藤する世界でもある。名作『白鳥の湖』の登場人物、オデット、王子、オディールが繰り広げる愛のドラマを再構成した作品だ。

tokyo1110b03.jpg 「オディールの涙」撮影:スタッフ・テス 飯田耕治 tokyo1110b04.jpg 「オディールの涙」撮影:スタッフ・テス 飯田耕治

ゲスト振付家の木佐貫邦子は『T scab』。スタジオのような素の舞台、四方に照明のスタンドが立って光を放っている。背後に瑠璃色のワンピースを着た女性の集団がざわめいている。一人のダンサーがヒールをフロアに置いて踊り、集団から個人が際立つ動きが始まる。
音楽はスカンクできれのいい、エッジの効いたサウンドを創っていた。リズムにのったジャンプを繰り返す動きやフロアを這いずり回ったり闇雲に上半身を振り回す動き、そして終盤は祭りのような解放感のある群舞となる。
やがて全員が冒頭に提示されたヒールを履いて三方の壁に並び、内側に現れた光りのベルトに恐る恐るヒールを入れたり引っ込めたりする。やがてヒールは一ヵ所に山盛りにまとめられ、そこに赤い花が一輪、花開いた。
靴は「ここから一歩だけ踏み出す」行動を表現しているが、同時に女性的なるものの存在を象徴している。
木佐貫邦子が初めて振付ける谷桃子バレエ団のダンサーたちとの出会いをそのまま題材として、彼女たちの身体性の変化を振付によって構成しダンスとしてみせる、というなかなか洒落た試みだった。ダンサーたちが木佐貫の創る動きと初めて出会い、新しい喜びを感じて踊っているのが伝わってきた。なかなかヴィヴィッドな印象を残す舞台だった。
(2011年9月22日 新国立劇場中劇場)

tokyo1110b06.jpg 「T-scab」撮影:スタッフ・テス 飯田耕治 tokyo1110b07.jpg 「T-scab」撮影:スタッフ・テス 飯田耕治