ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.03.10]

多彩なダンスと演奏が一体となった「ザッツ スーパーコラボレーション!」

「ザッツ スーパーコラボレーション!〜華麗なるアーティストたちの饗宴〜」
江東区文化コミュニティ財団 江東文化センター
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バレエダンサー、振付家のみならず他ジャンルとの活動も多い西島千博と、オーストリアのグラーツ音楽大学出身で演劇・映画などでも活躍するクラリネット奏者の稲本渡が中心になって企画された「ザッツ スーパーコラボレーション!〜華麗なるアーティストたちの饗宴〜」はじつに楽しい夕べだった。

オープニングは7人のダンサーたちが観客席のあちこちの出入口から、それぞれのスタイルで手拍子とともに登場。会場は一気に盛り上がり、そのダンサーたちを舞台上のクラリネットの稲本、ヒューマンビートボックスのMal、ファゴットの桑原正春、ピアノの革島れいなの華やかな演奏が迎えた。
マイクを手にした西島と稲本が、「稲本さんのお兄さんはピアニストの稲本響さん、ご兄弟で<ひびき わたる>ですね」といったトークを交えて二人の出会いやこのコンサートのコンセプトを伝える。西島がひけると稲本がそれぞれのミュージシャンたちを客席に紹介する、という洒落た流れのショー・スタイルで開幕した。ミュージシャンの中で興味深かったのはヒューマンビートボックスのMal。軽く物真似を披露して観客の気持ちを掴み、マイクを使う声であらゆるパーカッションの音を作りビートを刻む。一人というか一口でドラマーさながらに活達にリズムをひっぱり、演奏に独特のテイストを加えるユニークなアーティストだ。ちなみに今年4月にニューヨークから来日するTAKAHIROのグループにも「ヴォイスパーカッショニスト」が参加していたが、器楽とはまた異なった声の「演奏」は、ダンスのステージにも独特のライヴ感覚を際立たせる「音の魔力」なのだろう。

「ザッツ スーパーコラボレーション」のコンセプトは「喜怒哀楽」ということ。四つの感情のピークを織り込んで、ダンサーは舞台狭しと熱く踊った。まずはスタンダードナンバー『Sing sing sing』をタップも加わったダンサー全員で。
続いて春・夏・秋・冬をモティーフに、春は『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』『カノン』、夏は『ボレロ』、秋は『リベルタンゴ』そして冬は『アメージンググレース〜スマイル』『カヴァレリア・ルスティカーナ』を使い、コンセプトとした喜怒哀楽を盛り込んだ情景をスケッチするダンス。
バレエ、ジャズ、コンテンポラリー、タップのダンサーを上手く組み合わせて配し、カップルの愛の一コマを次々と洒脱に構成している。natsuoのタップと元Leni-Bassoにいた穴井豪のブレイクダンスを織り込んだコンテンポラリー・ダンスが際立った。しかしこうした情景描写には適したダンスは、バレエと舞台上で対比されると有利だからややおいしかったかもしれない。つまりは、こうしたジャンル横断的なダンスを配列して、一連の表現を構成することは一見簡単そうに見えて、やはり難しいことなのだ。この公演には、振付や演出というクレジットはない。それだけダンサーたちがミュージッシャンたちとともに無心で協力し合って、初めて出来上がった舞台ということになるだろう。そこに、リーダーとして率先して行動したと思われる西島と稲本の意図が感じられた。

休憩が開けて『ラプソディ・イン・ブルー』『熊蜂の飛行』『剣の舞』が華やかに、コンセプトを盛り込むことでアクセントを付けて、ダンサー全員で踊られた。
そしてメドレーは、輪廻から始まり破壊、再生などを経て進化から大我(悟りを得た境地のこと)に至る八つのテーマを掲げ、それぞれのダンサーがソロを踊った。バレエの長澤風海は「悲愴」をクラリネット、ファゴット、ピアノで、やはりバレエの竹田純は「白鳥」をクラリネットとピアノで、natsuoはヒューマンビートボックスで「◯△□」を、穴井豪はクラリネット、ファゴット、ピアノで「エトピリカ」を、ジャズダンスの野村涼子はクラリネット、ピアノで「ヴォカリーズ」を、バレエの上山千奈はクラリネット、ピアノで「チャルダッシュ」を、そして西島がクラリネットで「無伴奏チェロ組曲」とクラリネット、ファゴット、ピアノで「大切な人」を踊って全体をしめ括った。
スーパーコラボレーションと銘打っただけあって、多彩なダンスと素敵な演奏が一体となった心が浮き浮きするような楽しさのあふれる舞台だった。
(2011年2月25日 江東区文化センター)

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撮影:鹿摩隆司
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