ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2010.09.10]

完成された身体のフォルムを印象づけたニコラ・ル・リッシュの『ボレロ』

〈Bejart Gala〉 The Tokyo Ballet
〈ベジャール・ガラ〉東京バレエ団
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東京バレエ団は、6月から7月にかけてベルリンやミラノなど11都市を回る第24次海外公演を行い、ミラノ・スカラ座での『ザ・カブキ』で海外公演通算700回を達成した。
〈ベジャール・ガラ〉は、輝かしい記録を打ち立てた海外ツアーの“帰朝報告”として催されたもので、向こうで上演してきたベジャール作品のうち、『ギリシャの踊り』、『ドン・ジョヴァンニ』、『ボレロ』を取り上げた。話題は、パリ・オペラ座バレエ団のエトワール、ニコラ・ル・リッシュが日本では初めて“メロディ”を踊る『ボレロ』だった。

幕開けは『ギリシャの踊り』。ブルーの背景に波の音、波動するような群舞が海を喚起するが、主要なダンスは黒い幕が青の背景を隠すように下りた後で踊られる。テオドラキスの郷愁を誘うような民族音楽にのせ、様々なソロやデュエット、群舞が展開された。ソロを踊った後藤晴雄のリズミカルなピルエットや長瀬直義と宮本祐宜の親和するようなパ・ド・ドゥ、裸足で端整にニュアンス豊かに踊った小出領子と平野玲のペア、クラシカルな動きを際立たせた上野水香と高岸直樹のペアなど、皆踊り込んでいるだけにこなれていた。
『ドン・ジョヴァンニ』は、モーツァルトの主題によるショパンの音楽を用い、実際には現れない想像上のドン・ジョヴァンニの関心を引こうと、バレリーナたちがライバル意識を発揮して踊り競う様を描いた軽いタッチの作品。ダンサーたちは様々なテクニックが盛り込まれたヴァリエーションを手堅く踊った。

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公演を締めくくったのは、赤い円卓の上で、躍動する逞しい筋肉も露わに踊ったル・リッシュの『ボレロ』。小太鼓が刻むビートに合わせて膝を屈伸し、身体をバウンドさせるが、その振幅の大きさが目に付いた。肩から上腕にかけて見事に鍛えられた筋肉に加え、呼吸する度に伸縮を繰り返す胸郭が、完成された身体のフォルムを印象づける。音楽の高揚と共に動きもダイナミックになり、柔らかく身をしなわせ、鋭く跳び、崩れ落ちるクライマックスへと一気に突き進んだ。
野性的とは異なるが、このように男性的な“メロディ”は久し振りに堪能した気がする。これで、観る人を引きずり込むような気迫がもっと顕著だったら、さらに感動が深まったと思う。一方、“リズム”を担った男性陣には、ある種の慣れが見てとれた。踊りに加わったダンサーたちは良かったのだが、イスに座って前屈みのポーズで控えている時でも、緊張感を保っていることを全身で示して欲しかった。そうすれば、よりパワフルで濃密なステージが現前したと思う。
(2010年8月13日、ゆうぽうとホール)

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撮影:Kiyonori Hasegawa
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