ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.05.10]

「声」と音と身体が共鳴したオハッド・ナハリンの『MAX』

Batsheva Dance Company
Ohad Naharin "MAX"
バットシェバ舞踊団
オハッド・ナハリン振付『MAX』
tokyo1005d01.jpg

イスラエルを代表するコンテンポラリー・ダンス・カンパニー、バットシェバ舞踊団は、オハッド・ナハリン芸術監督が活発に活動して良く知られているため彼自身が設立したかのように思われているかも知れない。実際、イスラエルのダンスが世界的に有名になったのは、ナハリン振付の『アナフェイズ』が大ヒットしたことが契機だった。そして現在、ナハリンの作品はネイザーランド・ダンスシアター、リヨン・オペラ・バレエ団、クルベリー・バレエ団、ランベール・ダンス・カンパニー他の錚々たるコンテンポラリー・ダンスのカンパニーのレパートリーに採りいれられている。
しかし実際には、バットシェバ舞踊団は1964年にマーサ・グラハムにより設立されたカンパニーであり、ナハリン自身もニュ−ヨークのグラハム・スクールやジュリアード音楽院で学んでいる。後にベジャールの20世紀バレエ団に1シーズンだけ参加しているが、やはり、ナハリンのダンスの原点はアメリカのモダンダンスなのではないだろうか。
ナハリンはロックミュージシャンとしても活動しているが、彼のダンスには、音に対する独特の鋭敏な反応があり、その動きにはイスラエルの民族的色彩が感じらる。そし作品の構成には、アメリカのモダンダンス的な展開が見られ、そうしたものがバランス良くミックスされて、それが彼のダンスの大きな魅力となっている。

今回上演されたナハリン振付の『MAX』は2007年初演された作品。6人の男性ダンサーと4人の女性ダンサーが踊った。
身体全体あるいは身体の一部のパーツだけを使った素速い動きと、瞬間的な静止を様々なパターンで組み合わせながら、言葉と音響を構成した音楽とともに展開するダンスだった。様々な実際に使われている言語や空想上の言葉をコラージュして、強弱のアクセントを付けて繰り返す声(ナハリン自身の声)が、動きのリズムと共鳴してとてもおもしろい効果をあげる。見えない身体の存在を感じさせながら、なにかの表現をしているかもしれない「声」が、独特のニュアンスを加えたダンスを創った。
一時、個人的な悲劇に見舞われてバットシェバ舞踊団の芸術監督を退いていた時期もあったが、振付家として新たな展開を試みようとしている、と思わせる舞台だった。
(2010年4月15日 彩の国さいたま芸術劇場大ホール)

tokyo1005d02.jpg tokyo1005d03.jpg
tokyo1005d04.jpg tokyo1005d05.jpg

Photo:(C)池上直哉
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。