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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.03.10]

小森敏と伊藤道郎が振付けたアルベニスの『タンゴ』

小森敏 振付『タンゴ』/藤井利子、ダンス/松元日奈子
伊藤道郎 振付『タンゴ』/井村恭子、ダンス/武石光嗣
アルベニスのタンゴを踊る
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埼玉県舞踊協会主催の「Dance Session 2010」で、イサク・アルベニス没後100年を記して「アルベニスのタンゴを踊る」という企画が行われた。日本のダンス界の草分けの二人、小森敏と伊藤道郎が振付けたアルベニス曲の『タンゴ』を復元しようという試みである。
小森敏(1887~1951)は三浦環に師事し帝劇歌劇部を卒業し、ニュ-ヨークに渡る。ここで小森は、伊藤道郎、山田耕筰と3人で共同生活した。後にパリに渡りパリ・オペラ座や映画に出演するなど舞踊家として評価された。帰国後はスタジオを開き、舞踊公演や後進の指導に当たっている。
伊藤道郎(1893~1961)は、やはり三浦環に師事し帝劇歌劇部に入った後、ドイツに渡りさらにロンドンに行ってイエーツの新作『鷹の井戸』に出演。一躍、名を上げる。後にニュ-ヨーク、ロスアンジェルスで活躍した。戦後帰国し米軍が接収したアーニー・パイル劇場の顧問となる

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まず小森敏が振付けた『タンゴ』を松元日奈子が踊った。手を腰に添えちょっと怒らせた肩でリズムをとり、腰をくねらせてメロディを表す。侍が袴を着けて摺り足で進むポーズを連想させ、古風だがクラシカルな雰囲気の中にタンゴの妙を表現している。このダンスを振付けていた頃の小森は、故国を離れて何を想いどんな課題を背負って生きていたのか、思わず空想を走らせた一時だった。
続いて、伊藤道郎による『タンゴ』。こちらは以前に、チャコットでミチオイトウ展を開催した時に踊っていただいたことがある。黒いハットにブーツ。ステップを強調して、大きく足を鳴らしてアクセントを付ける。古き良きダンディズムが息づいていて、振付家の気概を秘めたダンスだ。かつて海を渡って、日本の文化を、今風にいえば発信した人たちの大きな気持ちを垣間見たかのような一夜だった。
(2010年2月13日 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール)