ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.11.10]

神の光りを宿すROSE WINDOWに触発された中村恩恵のダンス

中村恩恵/Dance Saga『ROSE WINDOW』
中村恩恵:振付・出演『ROSE WINDOW』
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中村恩恵の新作『ROSR WINDOW』は青山円形劇場で上演された。この劇場は名前の通り、円形で舞台は半円形で残りの半円形が客席となっている。その半円形の背景には、6つのドアの付いた登退場口がある。
舞台にはチェリストが一人、中村恩恵のソロである。

ROSE WINDOWは、教会のドームの高い位置にある丸い窓。ステンドグラスなどを薔薇の花びらのような模様の中にはめ込んだものが多い。この窓から射し込む光りは神の光りであった。
中村はヨーロッパで第2次世界大戦で破壊された修道院の廃墟に残されたROSE WINDOWを観た。

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神へ敬虔な祈りを捧げる聖なる場所を襲った激しい暴力の痕跡を前にして、人間は一体、何を愛し何を信ずべきなのか。根源的な存在への疑問に動かされるようにして創られたソロ・ダンスである。
照明を落とした舞台で演奏されるmori-shigeのチェロが、弦以外の場所を弓で擦ってだす微妙な音を織り込んで、日常を越えた世界を想起させる。中村はその音の微妙な変化に触発されるように、また語りかけるように踊る。力強く大きく鋭いラインを描く動きが強い印象を残す。
背景の6つのドアをいっせいに開くと、もうひとつのあるいは人間を越えた意識を感じる。
香しい薔薇の香りは人類の叡智なのか、悪魔の誘いなのか。沈黙と静寂の前に佇む一人の舞踊家のしばしの独白に、心を打たれた。
(2009年10月4日 青山円形劇場)

(C) Dance Triennale Tokyo 2009 photo: Yohichi Tukada
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