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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.09.10]

海外で活躍する日本人ダンサーが踊った新国立劇場「バレエ・アステラス2009」

バレエ・アステラス2009〜海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて〜
新国立劇場
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海外で踊っているバレエダンサー7名を迎えて、文化庁の新進芸術家育成としての公演が新国立劇場で行われた。ダンサーは公募により、谷桃子を委員長とする選考委員会が選んだ。
プログラムはPart 1のオープニングは、牧阿佐美振付の『シンフォニエッタ』を新国立劇場のバレエ研修所修了生11名が踊り、続いて5組のパ・ド・ドゥが披露された。Part 2では4組のペアが踊った後に、間奏曲『ルイス・アロンソの結婚式』が演奏され、フィナーレでは小島章司振付の『カプリチョ・エスパニョール』が研修修了生と現役の研修生によって踊られた。そしてさらに牧阿佐美振付のグラン・フィナーレを全員が踊る、というなかなか豪華な海外のダンサーを日本の舞台に迎える祝典風の公演となっていた。

2006年にワシントンのケネディ・センターで初演された『シンフォニエッタ』は、ビゼーの師、シャルル・グノーの交響曲第1番ニ長調の第1と第4楽章を福田一雄が編曲したものに振付けられている。これはバランシンが1947年に『水晶宮』(後の『シンフォニー・イン・C』)と題して振付けたビゼーの交響曲の手本となった音楽である。(ビゼーはグノーの曲との類似を指摘されるのを恐れて発表しなかったという)そしてバランシンは1958年に『グノー・シンフォニー』としてビゼーの師の交響曲にも振付けている。つまりグノーのこの交響曲には、シンフォニック・バレエの傑作『シンフォニー・イン・C』を生んだ曲想が脈打っているのかもしれない。
牧阿佐美の振付は、11名のダンサーを大きく展開するクラシカルな振付に、随所に小気味のいいアクセントを施し、全体をリズミカルに構成した、洒脱な美しいものだった。見事な女性らしい華やかさに彩られた味わいのある振付である。
小野絢子、寺田亜沙子、八幡顕光の新国立劇場バレエ団と牧阿佐美バレエ団の篠宮佑一ほかが踊った。

パ・ド・ドゥ集では、あまり馴染みのないカンパニーで活躍するダンサーの踊りも見ることができた。
ニュ−ヨークのシーダーレイク・コンテンポラリーバレエ団に所属する大阪出身の寺山春美は、同じカンパニーのジュールバル・バティスティと『サンデイ・アゲイン』(ジョー・ストレムグレン振付、バッハ曲)を踊った。バトミントンの羽根を奪い合ったりじらし合ったりしながら、白いスポーツウエア風の衣裳で踊る、コミカルなダンス。現実音とバッハの曲をデフォルメした音楽を使った3分の短いダンスシーンだったが、リラックスした身体のある一コマをスケッチしたダンスだった。
サンフランシスコ・バレエ団出身で、現在はディアポロ・バレエ団で踊る菅野真代はオランダ国立バレエ団のケーシー・ハードと『海賊』のパ・ド・ドゥ。ジョフリー・バレエ団出身でオーランド・バレエ団で踊る安川千晶は、同じカンパニーのエディ・トバーと『ロミオとジュリエット』(アラン・ジョーンズ振付)のバルコニーのパ・ド・ドゥを踊った。
Part 1の最後は、ボリショイ・バレエ団の唯一の日本人ソリスト、岩田守弘と岩田バレエ団の岩田唯起子の『サタネラ』(プティパ振付、プーニ音楽)のパ・ド・ドゥ。岩田守弘の跳躍は、観ているだけで心が弾むようなエネルギーに満ちている。プティパ振付の見せ場をよく心得た素晴らしい踊りだった。
ドレスデン国立歌劇場バレエ団の浅見紘子は、同じバレエ団のオレグ・クリミュクとフォーサイスの『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』を踊った。
ベルリン国立歌劇場バレエ団の針山愛美は同じカンパニーのヴィエスラウ・デュデクと『白鳥の湖』第2幕のアダージォを踊った。国際舞台の経験が豊富な針山愛美らしい落ち着いた、細やかな表現力のある舞台だった。
沖縄出身の長崎真湖はワシントン・バレエ団で踊り、現在は中国遼寧バレエ団のプリマ。やはり遼寧バレエ団のプリンシパル呂萌をパートナーに『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥを若さ溢れる踊り。コンクールで優秀な成績を修めているペアらしく、溌剌とした見せ場のある踊りだった。
パ・ド・ドゥ集ではそのほかに、本島美和とラグワスレン・オトゴンニャムの『ラ・シルフィード』、伊藤友季子、京當侑一籠の『眠れる森の美女』が踊られた。

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フィナーレの小島章司振付の『カプリチョ・エスパニョール』は、リムスキー=コルサコフの『スペイン奇想曲』に想をえたもの。スペインの伝統音楽を使って、アンダルシア地方のフィエスタを描いた、という。新国立劇場バレエ研修所の第3期から第6期の研修生が日頃のスペイン舞踊の成果を披露した。
海外のバレエ団には、たくさんの日本人バレエダンサーが踊っているが、なかなか故郷の舞台で踊る機会は多くない。こうした企画は、今回の上演形式がいいかどうかは検討の余地があるかもしれないが、どんどん活発に行ってもらいたい。国内で踊っているダンサーにとっても刺激となり、参考になることも多いと思われる。
(2009年8月9日 新国立劇場 中劇場/撮影:瀬戸秀美/写真提供:新国立劇場運営財団)