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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.07.10]

悲劇的人間模様を踊ったNBAバレエ団『エスメラルダ』全幕復元

ヴァレンチン・エリザリエフ再振付『エスメラルダ』全幕
NBAバレエ団
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『エスメラルダ』は1844年にロンドンで初演された。原作はヴィクトル・ユーゴーの大長編小説『ノートルダム・ド・パリ』。ジュール・ペロー振付、チェザーレ・プーニ音楽によるロマンティック・バレエの傑作とされるが、全幕としては1889年にマリインスキー劇場のバレリーナ、マティルダ・クシェシンスカヤのためにプティパが振付けたヴァージョンが、ロシアで踊り継がれてきた。しかし、近年はパ・ド・ドゥやヴァリエーションがコンサートの演し物として上演されることは多いが、全幕はほとんど上演されなくなっていた。
2004年、NBAバレエ団がヴァレンチン・エリザリエフの再振付によって全幕上演を果たし、舞踊批評家協会賞を受賞している。

物語は15世紀末のパリ。飢餓と疫病が蔓延し、人々の心が荒み切った時代のノートルダム寺院の広場を背景に、美しい踊り子エスメラルダとフェビュス士官の恋、それに嫉妬するフロロ司祭、エスメラルダに儚い想いを抱く醜い鐘つき男カジモドが、宿命的に絡み合う悲劇的人間模様を描いている。
エスメラルダが、愛する人フュビュスの婚約者の目前で踊るシーンや、純粋な愛を象徴し魂と魂を結ぶものとして純白のスカーフが使われていることは、『ラ・バヤデール』(1877年初演)を彷彿させる。けれどエスメラルダは、ニキヤのように毅然とした女性ではなく、宿命に翻弄されることに耐え忍んでいるように見えた。
こうした人物像をマイムや演技だけではなく、ダンスそのものの表情で表現することは、なかなか難しいと思われる。

エスメラルダは原嶋里会が踊ったが、うまく観客のシンパシイを掴んでいたと思う。ヤロスラフ・サレンコはフュビュスを落ち着いて踊った。ウクライナ仕込みの端正な踊りだがさらに変化をつけてもいいのではないか、とも思った。ディアナとアクティオンのパ・ド・ドゥを踊った米津舞と秋元康臣の愛らしい踊りが客席を大いに沸かせていた。

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 (2009年6月20日 メルパルク・ホール/写真 (C) 鹿摩隆司)