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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2009.03.10]

追悼シリーズの最後を飾った〈ベジャール・ガラ〉

モーリス・ベジャール追悼公演<ベジャール・ガラ>
プログラムA:『ギリシャの踊り』『中国の不思議な役人』『ボレロ』

 2008年5月に始まった〈モーリス・ベジャール追悼特別公演シリーズ〉の最後を飾ったのは、東京バレエ団による3種の〈ベジャール・ガラ〉。いずれも『ボレロ』を最後に置き、日によりシルヴィ・ギエムや特別団員の首藤康之が出演するとあって、話題性は高かった。
プログラムAは『ギリシャの踊り』(1984年)と『中国の不思議な役人』(1992年)、『ボレロ』(1960年)。どれもベジャールの傑作中の傑作だが、創作年代や趣は異なっている。『ギリシャの踊り』の最初と最後は、波の音が淡いブルーの背景に響く中、ダンサーたちが波を模したような動きを見せるシーンだが、中心は背景が黒い幕で閉じられた後、テオドラキスの魅力的な民族音楽にのせて展開される、爽やかなエネルギーに満ちたダンスの数々。ソロを踊った中島周の、しなやかな身のこなしや律動的なピルエットが印象に残った。シューズなしの吉岡美佳と平野玲のたおやかなパ・ド・ドゥと、トーシューズの奈良春夏と柄本武尊による伝統の格式を誇示するような「ハサピコ」の対比が鮮やかだった。
バルトークの音楽による『中国の不思議な役人』は、娘に男を誘惑させて身ぐるみはがす大都会の無頼漢たちを描いたもの。メインは娘に異常な執着を示し、何度殺されても生き返る中国の役人だが、娘を男に演じさせたことで、物語は異様さを増した。首藤康之がこの娘役を初めて演じた。コートを脱ぎ、肩も露わな黒いドレスになると、いかつい体から艶めかしさが匂い立った。勇ましく闊歩しても、ふとしたポーズに女っぽさをのぞかせる。不死身の役人の狂気にけおされ、その欲望を叶えてやる様を、鋭い目線や荒っぽさを増す立ち振る舞いで生々しく伝えた。中国の役人の木村和夫は、いたぶられても無表情を貫き、角ばった仕草に異常さを漂わせ、娘のかつらの上に身を横たえて果てるまで、テンションを保っていた。無頼漢たちや首領役の後藤晴雄ら、脇役陣も好演していた。
『ボレロ』で“メロディ”を踊ったのは上野水香。しなやかな身体から、音楽の高揚と共に内なるエネルギーを溢れ出させていった。ただ、手の指を反らせすぎたところや、一点に集中させていた心がブレたように感じられた時があった。自分なりの個性を模索しているからだろうか。どう極めていくか、楽しみだ。
(2009年2月10日、ゆうぽうとホール)

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