ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.01.13]

新宿コマ劇場の最後のミュージカルとなった『愛と青春の宝塚』

『愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~』は、戦争という厳しい運命と向き合う、タカラジェンヌたちの健気な生き方を描いた感動的なミュージカルである。原作、脚本は大石静、演出は鈴木裕美、作曲は三木たかし。
1956年に開場し間もなく閉鎖されることが決まった新宿コマ劇場の最後のミュージカルとして上演された。

  物語は、第2次世界大戦が始まった1939年の宝塚大劇場が舞台。雪組の男役トップスター、リュータンこと嶺野白雪の人生の紆余曲折と、その年に入団した 天涯孤独のタッチー、一刻も早くスターになることを目指すトモ、リュータンに純粋な憧れを抱いているベニの3人の新人が、戦争が激しくなる中でタカラジェ ンヌとして成長して行く過程を描いている。そしてそこに、演出家、影山航と海軍中尉、速水悠介、タッチー、リュウタンたちの恋模様が絡んでいく。また、手 塚治虫を彷彿させる漫画を描きつづける少年も登場する。
「清く正しく美しく」をモットーとした彼女たちのエピソードは、どれも胸を打つ。中でも戦況が悪化し、過酷な状況の中でも健気に生きるタカラジェンヌの懸 命の努力も虚しく、ついに宝塚大劇場が閉鎖されるあたりのエピソードは涙を誘う。劇場が閉鎖された後、彼女たちは満州の軍隊に慰問に向かう。そこで、明日 前線に送られて死ぬことが決まっている兵士と、先天的に不治の病を負っているトモが、満天の星の下、狼の吠え声を聞きながら交流するシーンは、今、思い出 しただけでも涙があふれてくる。じつに素晴らしい感動的なシーンだった。
日本人の女性の気質を、じつに的確に捉えた、得難いミュージカルだった。
(2008年12月2日 新宿コマ劇場)