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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.01.10]

ウクライナから、キエフ・バレエ団の『ライモンダ』

 シェフチェンコ記念ウクライナ国立キエフ・バレエ団が3年ぶりに来日した。
旧ソ連時代は、キエフ・バレエというと寒さの厳しいロシアの中でも、南方の解放的な雰囲気を感じさせる唯一のカンパニー、と想っていたと記憶する。しか し今日では、かつてのリファールやニジンスカにも匹敵するザハロワやラトマンスキーといった、現代ロシア・バレエの中心で活躍する舞踊家を輩出する地、と して注目を集めている。

今回の来日公演では『くるみ割り人形』『白鳥の湖』とともに、このカンパニーの主要ダンサーとして日本の観客にも良く知られるヴィクトル・ヤレメンコ が、台本に関わり演出・振付けた『ライモンダ』が上演された。十字軍で遠征中のジャン・ド・ブリエンヌの婚約者、ライモンダにサラセンの騎士、アブデラフ マンが情熱的に愛を語り、やがて遠征から戻ったジャンと対決するという物語。あるいは、このシンプルな愛の物語が『ライモンダ』の人気の秘密のひとつなの かもしれない。

 ライモンダをエレーナ・フィリピエワ、ジャン・ド・ブリエンヌをセルギイ・シドルスキー、アブデラフマンをマリインスキー・バレエのプリンシパル、イーゴリ・コルプ、白い貴婦人を田北志のぶが踊った。
フィリピエワは、美貌のプリマとして日本の観客に人気がある。作品全体に配慮の行き届いた丁寧な踊りでソツのない舞台。ゲストダンサーとして、アブデラ フマンに扮したコルプは、キャラクタ-を活かした渾身の踊りで、ライモンダに力強い愛を捧げる。さすがにマリインスキー・バレエのプリンシパルらしい明快 な表現で、舞台の流れを大いに盛り上げた。
シドルスキーは、コルプに遠慮したのかやや控え目な感じだったが、長身で気品のある騎士の印象を残した。ただ、キャスティングのバランスからか、ライモンダがアブデラフマンを愛してしまったのではないか心配になり、なかなかスリリングだった。

そしてやはり、フィリピエワの演じるライモンダの愛の心理の微妙な変化が、グラズノフの色彩豊かなシンフォニックな曲と共鳴して、どのように舞台空間を 染めるか、それがこのバレエの見所。装置も作品の生命線ともいえる舞台空間の彩りを大切にした作りで、コール・ドにも若さが感じられ、成功を収めた舞台 だった。
(12月4日、Bunkamura オーチャードホール)