ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.11.12]
 いろいろなことがどんどん変わってゆきます。パソコンや携帯電 話だって登場したのは、そんなに古い昔ではないのに、「あっ」と言う間に広まって、今ではなくてはならないどころか、ほとんど手放せない状態になってしま いました。朝、メールをチェックしてからすべてが始まるという人も多いでしょう。携帯もこの世界に入り込んでしまうと、夢中になってしまって時間の経つの を忘れます。 けれども、人のこころや感情は、生活の形に比べてあまり変わっていない、と思うことがしばしばあります。ダンスにもやはり、どんどん新しくなる面と、いつまでも変わらない面があると思います。

新国立劇場開場10周年記念「オペラ・バレエ ガラ」公演

 ほんとうに早いもので、新国立劇場が開場してから10周年を迎えた。関係者にはいろいろと感慨もあると思うけれど、観客の立場から考えて、全幕物を中心 としたクラシック・バレエの公演が定期的に行われてきたことはありがたいことだった。また、日本のバレエ文化を発展させようと試みている中心点ができたと いうことは、やはり、観客の気持ちにも安心感を与え続けた。

10周年を記したガラ公演では、新国立劇場バレエ団がバランシンの『セレナーデ』を上演した。

新国立劇場バレエ団のソリストたちによる、じつによく整えられた舞台だった。
形はシンプルだけれども様々に変わるフォーメーションが、形の変化を織り成しながら決して無機質な印象を与えない。人間的な親しみ易さ、楽しさやユーモ アなどが巧みに配されて、たいへん爽やかに美しく構成されている。バランシンの洗練された天才的バランス感覚には、観るたびに感動、脱帽させられる。
弾けるような新大陸の少女たちの若さを描いた前半から、人生と出会って苦悩を背負い始める後半へと、月の光りが映す白いキャンバスに、たおやかなシーンがつぎつぎと展開されていく。

70年以上も前、この作品を初演したころのバランシンのダンサーたちは、クラシック・バレエの美しさを学びながら、新しい大地に新しいバレエを創ってい こうという清新な意欲に溢れていた。そうした闊達なダンサーたちを見つめるバランシンの眼差しの優しさが、チャイコフスキーの音楽にのせて振付けられた。 そこに『セレナーデ』のコアがある。

彼らの姿が脳裡に浮かぶような活き活きとしたダンスを、新国立劇場バレエ団のダンサーたちはみせた。実際、10周年のセレモニーにふさわしい清潔で清々しい舞台だった。
 むろん、ステージングを担当したパトリシア・二アリーの功は大きいと思われるが、これはやはり、新国立劇場バレエ団の芸術監督とダンサーたちのたゆまぬ努力の賜物に違いない。

(10月1日、新国立劇場 オペラ劇場)