ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.08.10]

ルジマトフのすべて2007

今年も「ルジマトフのすべて」が開催された。
今回は、ボリショイ・バレエ団のソリスト、岩田守弘が振付けた『阿修羅』と、リカルド・カストロ・ロメロが振付けた『ボレロ』のルジマトフ主演の新作二 本が初演された。また、イーゴリ・コルプが踊ったソロ『マラキ』も世界初演である。
第1部は、エレーナ・エフセーエワとミハイル・シヴァコフのレニングラード国立バレエ団のペアによる『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥで開幕。 続いて、ルジマトフとマリインスキー・バレエのプリマ、ユリア・マハリナがフォーキン振付の『シェヘラザード』を踊った。リムスキー・コルサコフの鮮やか な色彩で塗り込められた官能的メロディに乗せて、妖しい愛と仮借ない死の世界が描かれる。
マリインスキー・バレエのプリンシパル、イーゴリ・コルプはソロ作品の『マラキ』をこの公演のために持ってきた。タイトルの『マラキ』はヘブライ語で<神の使者>の意だという。
再びレニングラード国立バレエ団のペア、アリョーナ・ヴィジェニナとアルチョム・プハチョフによる『白鳥の湖』の黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥが踊られ る。ルジマトフとマハリナによって「ニジンスキーの肖像」から、ルジマトフが改訂振付・演出した『牧神の午後』。黒いスーツのルジマトフとシースルーのド レスを纏ったマハリナが、牧神とニンフの絡み合いを現代の官能へと移し替えた。
『阿修羅』『ボレロ』
 第2部は、マハリナのソロ『道』で始まった。レニングラード国立バレエ団の若手ダンサー、メドヴェージェフがマハリナのために振付けた作品。彼女の半生を振り返り、未来に拓ける道を示している。
コルプがレニングラード国立バレエ団のプリマ、イリーナ・ペレンと『海賊』のパ・ド・ドゥを踊り、バネの利いた跳躍を見せた。
新作の『阿修羅』は、興福寺の阿修羅像から発想された闘いの神の踊りで、今年2月にサンクトペテルブルクで行われたルジマトフ・ガラで初演された。阿修 羅に秘められた凄絶な闘いの力感と、娘を奪われた悲しみの相克をルジマトフの完璧な身体が鮮やかに浮かび上がらせた舞台だった。音楽は藤舎名生の「玄武」 で、笛、小鼓、大鼓、声が響く中に、阿修羅の情念がたゆたう。

第3部ではロメロ姉弟による『ブレリア』。そして新作の『ボレロ』が披露された。
ロサリオとリカルドの姉弟は、「ルジマトフのすべて2005」でルジマトフとともに『ススピロ・デ・エスパーニャ~スペインのため息~』を上演してい る。今回は、M.ラヴェルの名曲『ボレロ』を使って、ミノタウロスの神話を素材としてダンスを創った。ラ・ルナに魅了された牛の頭を付けたミノタウロスの 愛のエレジーを、ルジマトフの端正な踊りとロサリオの官能的姿体が美しく描いた。
今年の「ルジマトフのすべて」は、スペインの愛の情熱と日本の愛の魂が共鳴した舞台だった。
(6月30日、新国立劇場 中劇場)

写真提供:光藍社