ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2007.06.10]

じゅんじゅんSCIENCE『サイエンス・フィクション』

じゅんじゅんSCIENCE『サイエンス・フィクション』

 マイムとダンスと芝居をミックスした絶妙なパフォーマンスで人気を得た「水と油」は、現在、グループとしての活動を休止しており、4人のメンバーはそれぞれの関心事を追求している。じゅんじゅんは、「マイム的な身体の可能性の探求」のため、ソロプロジェクト<じゅんじゅんSCIENCE>を立ち上げた。その第一弾として、"アナログ"的な手法による、まさに手作りの新作『サイエンス・フィクション』を上演した。
 左手前にはコーヒーカップとソーサーが紐で宙に固定され、右手には本とコーヒーカップをのせた四角いテーブルとイスが置かれている。普段着姿のじゅんじゅんが、薄暗い空間を左右に歩いたり、ゴロンと寝ころんでは立ち上がったり、勢いよく走り込んで倒れたり......。それを、フィルムのコマ送りの速度を切り換えるように、急速の動きからスローモーションまで自在にコントロールして見せた。傑作だったのは、手に持った本をリレー式に次の人に送る様を、渡す役と受け取る役を交互に演じて、一人でやってのけたこと。本を投げようとする所もあり、じゅんじゅんは孤軍奮闘、大忙しだった。

また、本を読み、コーヒーを注いで飲むなどの日常の風景や、イスに座ろうとして弾き返される不可解な状況を、ジェスチャーを交えて演じもすれば、壁を駆け上り、床を転がり、ジャンプするなど、鍛えた身体性を発揮する場面もあった。最後に、セットしたスクリーンの背後に回り、ピンホールカメラを通して自身の顔をスクリーンに投影した。天地が逆になるのを計算して、顔の表情やカメラとの距離を様々に変え、独特のゆらめく映像で楽しませた。こうして、虚構と仮想と現実をまぜこぜにした、約1時間にわたるユニークなパフォーマンスは終わった。基本的には「水と油」の路線に沿った作品ではあったが、"一人で出来ること"がこれほど豊かだったのは、じゅんじゅんの創意と身体能力がそれだけ優れているからだろう。
(5月18日、こまばアゴラ劇場)