ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関 口 紘一 text by Mieko Sasaki 
[2007.05.10]

黒田育世の新作『ペンダントイブ』

 

 ロンドンのダンス・フェスティバル、ダンス・アンブレラに参加したり、ジョセフ・ナジ振付『遊* ASOBU 』 への出演などの海外活動が多かった、黒田育世が率いる BATIK の久しぶりの新作『ペンダントイブ』。黒田ファンにとっては待望の舞台だった。
 
 甘いメロディの口笛とともに、天から宙吊りの少女がゆっくりと回りながら降りてくる。静かな幕開けだが、西部劇の決闘の始まる前のような 爆発寸前の抑制された緊張感が、舞台に張りつめる。観客も何か期待しているのかもしれない。  やがて、少女は何かに取り憑かれたように泣き叫び、のたうち回る。”いくちゃん”という声がどこか遠くから、 時折、聞こえてくる。
 少女の母親か姉か、おばさんか親戚か、少女の絶叫が感染し、集団はパニックに陥り、泣きわめき、 叫び、突っ走り、のたうちまわり、爆発は際限なく続いていくかのようである。少女の持つ底知れぬエネルギーが、留まるところなく奔放に放出される。  狂乱のパニックが演じられているが、舞台では女性の存在を表す不思議な気の流れが集団を支配していた。
終盤には、小さい緑の葉が大量に舞い散る中、背後の暗幕が落ちて強烈な逆光が観客席を照射した。 じつに衝撃的な舞台だったが、絶叫して走り回っては倒れ、静かになるとまた狂乱が始まる、といったことの繰り返しがやや 単調に感じられる面がないわけではない。
しかし黒田が持つ、女性の、あるいは少女のと言ったほうがいいのだろうか、存在の深部に迫る才能は 端倪すべからざるものがある。演出や動きといった細部よりも、ダンサーたちの女性のエネルギーをここまで集結する能力には驚嘆させられた。


( 3月 29 日、世田ヶ谷パブリックシアター)