ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2007.05.10]

東京バレエ団『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』

 東京バレエ団が、『白鳥の湖』(ゴールスキー版)と『ドン・キホーテ』(ワシーリエフ版)という 人気の演目を相次いで上演した。特に前者は、昨年の「世界バレエフェスティバル」で絶妙な演技を披露したペア、ポリーナ・ セミオノワとフリーデマン・フォーゲルによる日本で初の全幕共演とあって、注目度は高かった。ボリショイ・バレエ学校出身の セミオノワは、ベルリン国立バレエ団で活躍する”マラーホフの秘蔵っ子。”一方のフォーゲルはジョン・クランコ・バレエ学校出身で、 シュツットガルト・バレエ団のスター。異なるバックグラウンドの、異なる持ち味の二人だが、そんな個性が意外としっくり溶け合って、 期待に違わぬ舞台となった。
 颯爽と登場したジークフリート王子のフォーゲルは凛々しくも、演技は総じて控え目に思えた。第2幕では、 悲哀を滲ませて典雅に舞うオデット役のセミオノワと、真摯に彼女に向き合うフォーゲルが詩情豊かなデュオを構成。第3幕でセミオノワは 妖艶なオディールに鮮やかに変身を遂げたが、決して毒々しくはなく、気品を失うこともなかった。だから、フォーゲルが疑いを抱いたものの、 すぐにオディールに魅せられていったのも自然な流れと納得させた。見せ場の黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥでは、二人は高度な技を披露しながら、 それぞれの思いを燃え立たせていった。中でも、セミオノワによる、ダブルを連発させても揺るがぬグラン・フェッテや、フォーゲルの片足 をピンと真横に伸ばしたグランド・ピルエットが目を奪った。第4幕で、王子が倒れたオデットを見て意を決し、悪魔ロットバルトに戦いを 挑む場面では、フォーゲルが迫真の演技で臨み、オデットや白鳥たちが呪いから解かれるハッピーエンドを際立たせた。
 バレエ団のダンサーでは、ロットバルトと共に現れる井脇幸江、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲によるダイナミックな スペインの踊りが、悪魔の魔力まで誇示するようで見応えがあった。道化役の古川和則は達者な回転技で楽しませ、ロットバルト役の木村和夫 は終幕冒頭、力強いジャンプで企みの成就を伝えていた。2幕の白鳥たちの群舞や、4幕の白鳥たちのフォーメーションも幻想的な 美しさをたたえていた。

小出領子、後藤晴雄
(4月 11 日、東京文化会館)